5月30日(木)〜6月2日(日)の4日間、東京・砧のNHK放送技術研究所で開催される「技研公開2024」。今回で77回目を迎えるこのイベントから、編集部が注目したテーマについて詳しく紹介します(数字は技研公開の展示ナンバーです)。

16)自由に変形できるディフォーマブルディスプレー

画像: ミニLEDタイプ ●LEDサイズ:約2mm●画素数:20×20(カラー)●画素ピッチ:5mmm●画面サイズ:100×100mm

ミニLEDタイプ
●LEDサイズ:約2mm●画素数:20×20(カラー)●画素ピッチ:5mmm●画面サイズ:100×100mm

画像: マイクロLEDタイプ ●LEDサイズ:約29um●画素数:32×32(カラー)●画素ピッチ:2mmm●画面サイズ:64×64mm

マイクロLEDタイプ
●LEDサイズ:約29um●画素数:32×32(カラー)●画素ピッチ:2mmm●画面サイズ:64×64mm

画像: 16)自由に変形できるディフォーマブルディスプレー

 ゴムの基板上にLEDと伸縮可能な配線(液体金属)を形成することで、丸めたり、伸ばしたりできるディフォーマブルディスプレーは、昨年の技研公開でも出展されていた。

 昨年は一色(グリーンのみ)だったが、今回はカラーに進化している。ディスプレイとしての基本的な構造は昨年同様とのことだが、カラー表示のためにはRGB 3色のLEDを配置する必要があり、LEDのサイズも、それぞれの配線も昨年に比べて小型化されており、特に伸縮可能な配線については新しい材料を採用しているようだ。

 今回はミニLEDとマイクロLEDの2種類のディフォーマブルディスプレーが展示されていたが、どちらも屋外でも充分使えそうな明るさを備えていた。

17)薄くて曲げられるシリコン撮像デバイス

画像1: 17)薄くて曲げられるシリコン撮像デバイス
画像2: 17)薄くて曲げられるシリコン撮像デバイス

 小型で歪みの少ない広視野角カメラを想定した、湾曲した撮像デバイスの研究も進んでいるそうだ。現在のデジカメやスマホに使われている撮像デバイスは平面で、そこに歪みの少ない像を描くために複雑な構成のレンズが使われているのはご存知だろう。

 これに対し、撮像デバイスが湾曲していればレンズからの光を歪みなく結像させることができ、ひいてはレンズの小型化、軽量化にもつながるという発想だ。

 支持基板に酸化膜を使い、後からエッチング処理で酸化膜を除去するという方法で薄く、フレキシブルな撮像デバイスが製造できるそうだ。展示会場では同じレンズを使って平面デバイスと湾曲デバイスでどのような映像が撮影できるかの比較も行われていたが、周辺の歪みは湾曲デバイスの方が少なく、そのメリットが確認できるものになっていた。

18)自然光でのホログラフィー撮影技術

画像1: 18)自然光でのホログラフィー撮影技術
画像2: 18)自然光でのホログラフィー撮影技術

 近年の技研公開で様々な切り口が提案されているのがホログラフィー撮影だ。2022年の技研公開では3次元の情報を持った映像を、自然光やLED照明で撮影できるインコヒーレントデジタルホログラフィーも展示、今回はそれをさらに進めて、より小型の光学系での撮影を可能にしている。

 新開発された透過型光学系には2枚の液晶デバイスが採用されており、これで入射光をふたつに分け、焦点距離の異なる別々のレンズを通した後に合成することで条件の異なる4枚のホログラム画像が撮影できるという。このデータを元に後処理を加えることで被写界深度の異なる映像として取り出せるといわけだ。

 現在はモノクロ映像だが、技研では2027年までに動画化、カラー化のために必要な要素技術を開発し、2030年頃までにカメラの試作を行いたいとのことだ。

N2)8K×8K正方アスペクト比カメラ

画像: N2)8K×8K正方アスペクト比カメラ

 NHKが開発した技術の一例として、8K×8Kの解像度を備えた撮像デバイスを搭載した小型カメラのデモも行われている。手のひらに収まるほどのサイズのカメラで超高精細の映像が撮影できるので、広視野角撮影や医療分野での応用が期待されているという。

T1)体感! できるかな2030

画像1: T1)体感! できるかな2030
画像2: T1)体感! できるかな2030

 今回の技研公開でチェックしておきたいのが、「できるかな2030」だろう。これは往年の人気番組「できるかな」が2030年に蘇ったらどんな形になるのか、というテーマで制作されたもの。最新のバーチャル技術やインタラクションを可能にする製作技術を盛り込んで、3次元空間で仕上げたコンテンツとなっている。

 会場内には大型スクリーンの前にHMDが並んでおり、HMDを装着すると3D映像として、スクリーンでは2D映像で番組を楽しめる。3D映像ではノッポさんやゴン太くんを自由な角度(リモコンで視点を切り変えられる)から眺めることができるし、ふたりの周りを飛び交うタイトルロゴやオブジェクトも見下ろしたり、見上げたりできる。

 ノッポさんの映像は25台の4Kカメラを使ったボリュメトリックスタジオで撮影され、それをCGと組み合わせて立体映像として仕上げられたという。そのデータはHMDだけでなく、市販の業務用3Dモニターなどでも再生できるそうで、NHKとしては様々なデバイスでも視聴してもらいたいと考えているようだ。

 HMDで見せてもらった3D映像は、表示パネルの画素構造が識別できてしまったため、没入感たっぷりというわけにはいかないが、それでも立体感の演出は楽しむことができた。スクリーン上の2D映像は解像度も充分なので、将来的に3D表示機器のスペックが進んでいけばよりリアルな立体像として楽しめるだろう。

This article is a sponsored article by
''.