ビクターから、3年ぶりとなるD-ILAプロジェクターの新製品が発表された。型番と価格は以下の通りで、どちらも6月下旬の発売を予定している。
DLA-V900R ¥2,970,000(税込)
DLA-V800R ¥1,650,000(税込)
型番からもおわかりだろうが、それぞれ「DLA-V90R」「DLA-V80R」の後継機で、ビクタープロジェクターの伝統(?)に則り、外観はまったく変更されていない。
ではどこが進化したか。
その第一がD-ILAパネルで、両モデルとも第三世代の0.69型4Kデバイスが搭載されている。同社では先頃D-ILAパネルの製造を久里浜工場からJSファンダリ新潟工場に移管したが、今回のパネルはそこで作られたもののようだ。
その第三世代パネルは液晶の配向制御性と画素の平坦化の両方を高めており、ネイティブコントラストと画面内の均一性が格段に向上しているとのことだ。
独自のレーザー光源技術「BLU-Escent」も高効率化され、ピーク輝度がDLA-V900Rは3,300ルーメン、DLA-V800Rは2,700ルーメンを実現している。これは前モデルからそれぞれ1割前後のアップを果たしていることになる。でありながら約20,000時間の寿命を獲得しているのも、ホームシアターユーザーには嬉しいポイントだ。
このふたつの改善により、スペック面ではDLA-V900Rで150,000対1、DLA-V800Rでは100,000対1というネイティブコントラストを実現している。DLA-V90Rは100,000対1、DLA-V80Rは80,000対1だったので、こちらも大幅な進化を遂げていることが確認できる(アクティブコントラストは全モデルとも∞対1)。
こうしたデバイス面に加えて、ビクター独自のアップコンバート技術「8K/e-shiftX」も第二世代に進化した。新たにUHDブルーレイや配信などの4K/2K映像を8K相当にアップコンバートする独自の超解像処理を開発し、単純なスケーリングで発生するエッジリンギングなどの弊害を回避している。
さらにこの新D-ILAデバイスのダイナミックレンジを最大限に活かすため、よりリアルな暗部階調再現を可能にする新しいアルゴリズムも追加している。様々なHDR10コンテンツの明るさを解析した結果、最暗部にはほとんど情報がなかったことを踏まえ、最暗部のトーンカーブを意図的に沈めることで見た目のコントラスト感をアップするという。夜景などのコンテンツでは効果的な機能といえるだろう。
もうひとつ、「Frame Adapt HDR」視聴時の新しいメタデータとして「DML」(Max Display Mastering Luminance)も選べるようになっている。従来はMax CLL(コンテンツ最大輝度)を参照してHDRレベルを判断していたが、コンテンツによっては最適ではないレベルが選ばれることもあったという。
これに対し「DML」では、コンテンツ制作時に使われたマスターモニターのピーク輝度情報を参照し、それを閾値としてクリッピングポイントを設定することで適切なピーク輝度レベルの設定を可能にするそうだ。
ダイナミックコントロールの制御にも変更が加えられている。これは映像解析にもとづいて光源の明るさを制御するもので、DLA-V90RやDLA-V80Rでは、緩やかに変化する「モード1」、それよりも強めの制御を行う「モード2」、人間の目の輝度感に近い映像を目指した「モード3」という内容だった。
今回は「モード1」と「モード2」のいいところ取りを目指した「バランス」と「モード3」同等の「強」、光源制御を極力控えて暗いシーンでの黒浮きを抑える「弱」の3種類に変更されている。向上したネイティブコントラストやピーク輝度に合わせて、ダイナミックレンジを最大限に活かすための改善とのことだ。
新たな画質モードとして、SDRコンテンツを色彩感豊かに再現する「Vivid picture mode」も加わった。人間の記憶色に近い感覚で絵作りされており、華やかでインパクトのある映像が楽しめるという。同社の絵作りエンジニアこだわりのモードで、配信のアニメコンテンツなどで効果を発揮するとのことだ。
その他DLA-V900Rでは16群18枚構成(前玉100mm)を、DLA-V800Rは15群17枚構成(前玉65mm)のオールガラスレンズを採用する点は前モデルを継承。8K/60pや4K/120p入力への対応といった点も共通となっている。設置時の投写距離もそれぞれの従来モデルから変更されていない。
DLA-V900RとDLA-V800Rの登場により、近年のホームシアター大画面を牽引してきたビクタープロジェクターがさらに高い次元に入るわけで、これから大画面を手に入れようという方はもちろん、従来モデルのユーザーも要注目なのは間違いない。