第76回カンヌ国際映画祭・批評家週間選出の不条理サバイバル・スリラー『またヴィンセントは襲われる』が5月10日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国公開される。
ヴィンセント(フランス読みではヴァンサン)は、どこにでもいそうな大人の男性。なのだが、ある時から、不意に襲われたり殴られたりするようになった。相手が不快感をむき出しにして、殺意を抱いて襲ってくるのだ。一日に何度も、怪我をして、生命の危険も感じる。そのうち、彼は「自分と目が合った者が襲ってくる」ということに気づいた。生活をしている以上、他者とのコミュニケーションは避けられないので、一時は途方に暮れるのだが、とある人物(彼も目が合った者に襲われてきた)と知り合い、今後のヴィジョンというかサバイブの手法のようなものが見えていく。
以降はネタバレになりそうなので控えるが、スリラー、コメディ、SF、ホラー、ラブストーリー、バディものなど、さまざまな要素が混濁して、どんどん展開が深く、面白くなっていくさまは、まさに圧巻。藤子不二雄のSFマンガに通じるビタースウィートな諧謔に、私はひとりでよがった。主人公ヴィンセントを演じるのは『バック・ノール』のカリム・ルクルー、監督はステファン・カスタン。原案と一部脚本はマチュー・ナールトが手掛けている。監督はマーティン・スコセッシ『アフター・アワーズ』からのインスピレーションを認めているので、併せて鑑賞するのも一興だろう。
映画『またヴィンセントは襲われる』
5月10日(金)より ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館 他で公開
キャスト:カリム・ルクルー ヴィマーラ・ボンズ
監督:ステファン・カスタン
原作:マチュー・ナールト
脚本:マチュー・ナールト ドミニク・ボーマール ステファン・カスタン
宣伝協力:Cinemago 配給:NAKACHIKA PICTURES
原題:Vincent doit mourir(英題:VINCENT MUST DIE)
2023年/フランス/シネスコ/カラー/ステレオ/115分
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