1月25日、109シネマズプレミアム新宿の「シアター8」でビートインクが主催するThe Smile『Wall Of Eyes』の上映会に出かけた。トム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッド、トム・スキナーの3人からなるこのバンドのセカンド・アルバム・リリースに伴うミュージックビデオのクリップを集めた作品の上映で、2日間の限定公開だった。
オープニングクリップは無声で、35mmフィルムで撮影したシネスコサイズの映像。B&WのNatilus801が映っているところを見ると、ロンドンのアビーロード・スタジオでの収録だと思う。オーディオファンならそんなところにも目が行ってしまいそうだ。その後、音付きになりフロント3chで音楽が再生される。
無声映画時は、シアター8の静寂感が耳に染みた。身じろぎしてもそのノイズが聴こえそうなシビアな環境に観客は固唾をのんでいたが、音楽が再生されるとESF製BWVのスピーカーがトム・ヨークの軽妙なヴォーカルを聴かせる。
ポール・トーマス・アンダーソンの映像はアートの世界に引きずり込まれそうなユニークで面白い作りだ。モチーフは人、ハート、魂か。ここにビルトインされているスピーカーは作りこまれた音を露わにするが、一音一音クリアでだれることのない音と映像がよくリンクしている。
当日の上映プログラム
<TheSmile>
Abbey Road footage ※サイレント
Wall Of Eyes – album play back
Friend Of AFriend, directed by Paul Thomas Anderson – music video [35mm]
Wall Of Eyes, directed by Paul Thomas Anderson – music video [35mm]
<ThomYorke>
ANIMA, directed by PaulThomas Anderson
<Radiohead>
The Numbers: Jonny, Thom& a CR78, directed by Paul Thomas Anderson
PresentTense: Jonny, Thom & a CR78, directed by Paul Thomas Anderson
Daydreaming,directed by Paul Thomas Anderson – music video [35mm]
「What is this then」で、再びフィルムによるタイトルだけの上映になり、音にフォーカスさせる仕掛けがなされている。続いてベースを弾きながら歌うトム・ヨークが登場し、ロンドンの地下鉄でのシーンになってからは、サラウンドサウンドが響き渡る。劇場のスピーカーシステムが本領を発揮した瞬間でもある。
Netflix提供による映像もあり、ファンには至福の時間が過ぎて行ったことだろう。残念ながらこのミュージックビデオは前述したように2日間の限定だったので、見逃して残念な思いをした方も多いと思うが、「Wall Of Eyes」と「Friend of Friend」はYouTubeに上がっているので、CDやLPを聴きながらいい音で楽しんでほしい。
CDで聴く「Wall Of Eyes」はしっかりと作りこまれた浮遊感たっぷりのサウンドが味わえるし、「Friend of Friend」ではトム・ヨークのファルセットのようなヴォーカルと懐かしさを覚えるストリングスの音色に包み込まれる感じだ。
国内盤のCDは解説書と対訳した歌詞が付いた、音質にこだわったUHQ-CD仕様、アナログレコードは通常のブラック・バイナルと数量限定のスカイブルー・バージョンがリリースされている。
CD「Wall of Eyes/The Smile」 ¥2,800(税別、国内盤 XL1394CDJP)