光量を落としたような画面作り、妙にガランとした部屋の風景、きわめて言葉数を抑えているであろうセリフ。観始めの頃は「シンプルだなあ」と、きわめて淡々とした気持ちであったが、物語が進むにつれて、それらがすべて「恐怖」のファクターだった、ということに、少なくとも私には感じられてきた。レス・イズ・モアを実践した、アコースティックでオーガニックなホラー作品という印象である。

 主人公となるのは、かなりふくよかな体形をしている少女・シミー。体重を減らしたい彼女は、料理研究家で栄養士の叔母のもとを訪れる。ひょっとしたら「野菜を多めの規則正しい食生活にして、運動して……」ぐらいのことを言われるのだろうとシミーは考えていたのかもしれないが、与えられたミッションは、いきなりの、イースター(復活祭)までの日々を射程においた「数日間にわたる断食」だった。

 素直なシミーはそれに従ってはいくのだが、叔母の家族がなんとも不気味なヴァイブレーションを放っている。いとこ(叔母の息子)は精神的に安定せず、叔母と新たに結婚した異様に細身な男(シミーにとっては新しい叔父)は謎めいている。シミーは明らかに違和感を覚えながらそこに住み、ダイエットを敢行していくのだが、やがてそこに「黒魔術的」なものが加わり、あとはエンディングまで一直線だ。

画像: こんなに不気味な「食事風景」があっただろうか! ひたひたと恐怖がやってくる話題のホラー作品『ファミリー・ディナー』

 電気すら通っていなそうな土地で、存在感を発揮するのがスマートフォン。「ああ、現代だ」と、霧からさめたような気持になった。監督は、オーストリアの名門「ウィーン・フィルムアカデミー」出身のペーター・ヘングル。

映画『ファミリー・ディナー』

12月8日より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

監督・脚本:ペーター・ヘングル 製作:ローラ・バサラ 撮影監督:ガブリエル・クラヤネック 編集:ゼバスティアン・シュライナー 美術:ピア・ヤロス 衣装:マルレーネ・プレイル 音楽:ペーター・クーティン 配給:クロックワークス 

出演:ピア・ヒアツェッガー、ニーナ・カトライン、ミヒャエル・ピンク、アレクサンダー・スラデック

2022年/オーストリア/ドイツ語/97分/ビスタ/5.1ch/字幕翻訳:吉川美奈子
原題:FAMILY DINNER/レイティング:PG12
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