鮮やかな色合い、比喩に富む言葉遣い、ここぞというところで飛び出す印象的な音楽。第88回アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされた『父を探して』の監督であるブラジルの才人アレ・アブレウの最新作、『ペルリンプスと秘密の森』が12月1日からYEBISU GARDEN CINEMAで公開される。
主人公の名はクラエとプルーオ。敵対する「太陽」と「月」の王国の、それぞれ秘密エージェントだ。これが、いうなればA)。ではB)が何に相当するのかというと、巨人に存在を脅かされている「魔法の森」である。敵対するA)二者に課せられた仕事は、偶然にもB)を救うこと。そのためにはC)「ペルリンプス」を探さなくてはいけない。つまりA)の目的であるC)のためにはB)が必要となり、それを達成するためにはA)が手を結ぶ必要がある。だがA)は彼らの意志で敵対しているわけではない。王国からの指令、しかもエージェントの存在自体は秘密にしておかなければならないのだ。
生身の人間で描いていたら大変にドロドロした物語になったと思われる。だがクラエとプルーオはどこか妖精のようなキャラクターであり、語り口はあくまでもやさしい。先に述べたようにセリフには詩的なレトリックが織り込まれているが、その先にあるのは「争いのない世界」への希求であるとみた。ますます人間が武力に訴えているようにも感じられるこの世の中、この映画が公開される意義は大きい。しかもブラジルは軍事政権だった時期があるのだ。その軍事政権期に検閲を受けたシンガーソングライターのひとり、ミルトン・ナシメントの名曲「Bola de Meia, Bola de Gude」(Our Common Future)が、ミルトン本人の歌唱ではないにしろ、効果的に使用されているのは印象深い。
映画『ペルリンプスと秘密の森』
12月1日(金) YEBISU GARDEN CINEMAほかロードショー
脚本・編集・監督:アレ・アブレウ
音楽:アンドレ・ホソイ/オ・グリーヴォ
2022年 ブラジル /原題:Perlimps/スコープサイズ/80分/日本語字幕 星加久実
後援:駐日ブラジル大使館 配給:チャイルド・フィルム/ニューディアー
(c) Buriti Filmes, 2022