2023年9月5日に開催されたジョン・ウィリアムズの来日公演に、筆者も運良く参加することができた。ウィリアムズ自身のタクトで演奏される名曲の中にあって、文字通り宙に浮かびそうなほどの高揚感を覚えたのが『スーパーマン』のマーチだった。そういえばUHD BD BOX『スーパーマン 5-Film コレクション メタルケース&スチールブック仕様』を買ったまま開封していなかったぞ…と猛省し、コンサートの余韻覚めやらぬ中で全作を見直すことに。

 スーパーマンが住む「孤独の要塞」をモチーフにした特製メタルケースに、シリーズ4作(加えて『Ⅱ』リチャード・ドナーCUT版)のUHDブルーレイ4枚+ブルーレイ5枚、さらにフォトブックなどの封入特典を5つのスチールブックに収めた愛蔵版仕様。ワクワクしながら1作ずつ開封し、じっくり鑑賞してみた。

『【初回限定生産】スーパーマン 5-Film コレクション メタルケース&スチールブック仕様<4K ULTRA HD & ブルーレイセット>(9枚組/ペーパープレミアム付)』 ¥35,200(税込)

画像: スーパーヒーロー映画史の頂点に燦然と輝く金字塔『スーパーマン』。その魅力を凝縮した『スーパーマン 5-Film コレクション』の見どころを一挙に紹介【フィジカル万歳15】

●発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
●販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
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『スーパーマン』(1978年)

画像: 『スーパーマン』(1978年)

 リチャード・ドナー監督による記念すべき第1作であり、スーパーヒーロー映画史の頂点にいまだ燦然と輝く金字塔。2019年にドルビービジョンの単品版もリリースされているが、音声仕様に違いがある。

 単品版はドルビーアトモス音声と劇場公開時の70mm版の6ch音声をベースにした5.1ch音声を収録。しかしBOX版では劇場公開版音声が2.0chステレオ仕様に変更された。ドルビーアトモス音声は新たなリミックスだけあり、セリフこそナロウだが、効果音も音楽もワイドレンジでひじょうにクリアーだ。

 映像はふわりと光が広がる、黒をやや浮かせたノスタルジックなトーン。オリジナルの印象が変わることなく、HDR化によって光の柔らかさがより印象深くなった。クローズアップではスキントーンも衣装の生地の質感もディテイルも豊かだ。

●見どころ
チャプター(CH)1、タイトルクレジットが飛んでくるジェット音。
CH6、惑星クリプトンの崩壊。音場を崩落音と悲鳴が覆う。
CH7、赤ちゃんスーパーマンの宇宙カプセルが音場を飛び交い、その内部の高くから父ジョー=エルの声が響く。
CH9、列車が通過する轟音。
CH11、早朝の納屋を緑に照らすクリプトナイトの優しい光。
CH12、「孤独の要塞」のクリスタルの透明感。ジョーが見せる『2001年 宇宙の旅』的なビジョンも面白い。
CH19、スーパーマン初陣! ロイス・レーンの救出シーンでは、操縦不能のヘリが音場をぐるぐる回転。スーパーマンが地上から空高く、音場高く舞い上がる。
CH24、名スコアが美しく盛り上げる、スーパーマンとロイスの夜空のデート。キラキラと瞳が輝くロイスの瞳が美しい。
CH35、超高速でスピーカー間を飛翔するスーパーマンと弾道ミサイル。
CH36、重低音が音場を揺るがすダムの決壊は、精緻なミニチュアワークも圧巻。
CH39、凄まじい高速で地球を周回飛行するスーパーマン。彼の頬の涙も4K化で克明に。

『スーパーマンⅡ リチャード・ドナーCUT版』
(劇場公開版 1980年/リチャード・ドナーCUT版 2006年)

画像: 『スーパーマンⅡ リチャード・ドナーCUT版』 (劇場公開版 1980年/リチャード・ドナーCUT版 2006年)

 本BOXにはふたつの『スーパーマンⅡ』を収録。まずはリチャード・レスター監督による劇場公開版『スーパーマンⅡ/冒険篇』。そして製作上の方向性の相違から第1作完成後にプロジェクトを離れたリチャード・ドナー監督が、本来の二部作構想に従って再編集した『リチャード・ドナーCUT』版だ。その経緯は映画WEBマガジン「CINEMORE」のモルモット吉田氏によるコラムに詳しいので、ご興味ある方はぜひご一読を。

 この『ドナーCUT』には、マーロン・ブランドの出演シーンを含む未使用素材がふんだんに使われている。映像トーンは前作を踏襲するが、HDR化で白ピークは前作以上に伸びて、色彩の鮮やかさも向上。解像感も現代の仕上げらしいシャープさだ。サウンドは2006年のリリース当時は5.1ch仕様、今回はこれをドルビーアトモスにリミックスして収録。もう現代の新作と言っていい、クリアーでワイドレンジな仕上がりになった。

●見どころ
CH3、エッジの切れ味鋭いオープニングクレジット文字、アトモス音場に高らかに鳴り響くメインタイトル曲。『冒険篇』でのケン・ソーンの楽曲も、多くがウィリアムズ版のスコアに差し替えられている。
CH5、新聞社の窓から身を投げるロイス。慌てるクラークの猛ダッシュで、オフィスに巻き上がる嵐。ちなみに『ドナーCUT』は恋するロイスが超カワイイ。
CH7、ゾッドたち三悪人が月面基地に襲来。HDR化で強まった太陽光と日陰のコントラスト。
CH10、孤独の要塞に現れるジョー=エルのビジョン。『冒険編』ではブランドのギャラの問題から母親が登場したが、このバージョンでめでたく父親が復権。
CH12、ホテルでのクラークとロイスの会話シーンはフォーカスが甘くライティングも平板。カメラテスト映像の素材なのだろう。
CH16、三悪人を軍隊が猛攻撃。
CH17、クリプトンの太陽のような強烈な赤い光線でクラークが「人間」に。
CH18、ホワイトハウスでの銃撃戦。
CH25からは三悪人とスーパーマンのド派手な市街戦。広大なセットと精緻なミニチュアワークの見事な使い分けは4Kならではの大きな見どころ。

『スーパーマンⅢ/電子の要塞』(1983年)

画像: 『スーパーマンⅢ/電子の要塞』(1983年)

 スーパーコンピューターが操る「電子の要塞」とスーパーマンが激突! リチャード・レスター監督の軽妙な作風と、当時のトップコメディアンだったリチャード・プライヤーの存在感が色濃い、異色のアクションコメディに仕上がった。

 そういう視点で再見すると、ツッコミどころ満載の大らかな80年代SFとして思った以上に楽しめてしまった。映像は精細感、コントラスト、発色が前2作より向上するも、合成カットのクォリティは大きく後退。音声はドルビーアトモス収録だが、オリジナルのナロウなドルビーステレオ音声を擬似的に拡張したのみ。ひと昔前の音質という印象が否めない。

●見どころ
CH5、化学工場の火災シーン。ドルビーアトモスは移動感よりも炎や爆発の包囲感で効果的。随所でミニチュア撮影も行われており、UHDブルーレイではそのディテイルが鮮明に。逆にスーパーマンの飛行カットでは、ブルーバック合成のマットラインもはっきり見えてしまった。
CH13、ピクニックではシネスコ画面いっぱいに広がる虹の発色が美しい。雷鳴の轟きも生々しくリアル。
CH16、まさかの「BASIC言語」で気象衛星をハッキング! 竜巻の轟音が頭上から。
CH20、スーパーマン歓迎式典は青空のヌケ感と健康的な陽光。
CH22、ダークスーパーマン爆誕。無精ヒゲとコスチュームの薄汚れも克明に。
CH29、落書きのような設計図から完成した「電子の要塞」による、スーパーマン撃墜作戦。ミサイルの飛行音と撃墜音がサラウンドをにぎやかす。

『スーパーマンⅣ/最強の敵』(1987年)

画像1: 『スーパーマンⅣ/最強の敵』(1987年)

 核廃絶を願う少年に応え、世界中の核兵器を太陽に投げ込んだスーパーマン。しかしレックス・ルーサーの陰謀で、核爆発から最強の敵「ニュークリアマン」が誕生してしまう。

 第1作へのオマージュを盛り込んだ前半部は、実はとても王道のヒーロー展開。しかしニュークリアマンとのバトルになる後半は『アイアン・イーグル』シリーズのシドニー・J・フューリー監督の作風との食い合わせが悪く、荒唐無稽さが際立った印象。とはいえ脚本にはクリストファー・リーヴ自身も参加しており、彼が夢見たヒーロー像が確かにここにある。何より彼がスーパーマンを演じた最後の作品だと考えると、ただの底抜け超大作としてスルーするのが憚られるのも事実なのだ。

  1987年公開作品だけあって、ドラマ部分の画質はさらに向上。白ピークがすっきり伸びて、色彩の透明感と鮮やかさが段違い。しかしそのぶん合成カットの低品質も目立ってしまった。音声はドルビーアトモス収録だが、前作と同様に分離感は今ひとつ。

●見どころ
CH1、高らかに鳴り響くテーマ曲。今作ではジョン・ウィリアムズが数曲の新曲を提供。さらにその他の劇伴はテレビ版『宇宙大作戦/スター・トレック』のアレクサンダー・カレッジが担当している。実は豪華な顔合わせなのだ。
CH3、故郷を訪れるクラーク。35mm映像はグレインもひじょうにきめ細やか。精細感も空気感も素晴らしく、一気に鮮度が向上した感じ。
CH7、デイリープラネット新社長 レイシーのスーツのラメ生地がキラッキラ。ロイスのスーツも赤とピンクも鮮やか。
CH11、スーパーマンとロイスのフライングデート。空撮のバックグラウンドは高精細だが、2人の合成は驚きの粗さ。
CH15、ニュークリアマン爆誕。体から発する赤いスパークの力強さ、発光音の立ち上がりの鋭さ。
CH20〜、スーパーマンvsニュークリアマン、世界を舞台に死闘を展開。万里の長城の破壊や火山の大噴火で、意外なほどに精緻なミニチュアワークが楽しめる。自由の女神で戦うシーンは、女神のサイズ感もめちゃくちゃだけど。

画像2: 『スーパーマンⅣ/最強の敵』(1987年)

 さて最後に。実はこのBOXには、大きな不満がある。Blu-ray BOXにはあった『スーパーマン リターンズ』が収録されていないことだ。もちろん今回のBOXは「リーヴ版」が主眼なのは理解できる。ただリーヴ版へのオマージュにあふれ、物語的にもこれ以上ない「完結編」として仕上がった『リターンズ』は、今回のBOXの完走後にこそ観られるべき1作だと思うのだ。UHDブルーレイ化はもちろん、一部のシーンが3D化されたIMAX 3D版のBlu-ray 3D化にも、筆者は期待し続けたい。『スーパーマン リターンズ』の帰還を、ずっと、ずっと待ってます。

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