先週まで開催されていた「第36回 東京国際映画祭」。その一環として1939年公開の『オズの魔法使』ドルビーシネマ版が特別上映された(有楽町の丸の内ピカデリーにて。現在は上映終了)。ワーナー・ブラザースの創立100周年を記念したもので、ドルビーシネマ版が上映されるのは日本初だったそうだ。

 物語の内容はもはや説明不要だろう。カンザスに住む少女、ドロシーが巨大竜巻に巻き込まれてオズの国にたどり着き、カカシ、ブリキ男、ライオンといった面々と冒険を繰り広げる……その様子がテクニカラーの映像とジュディ・ガーランドを始めとする芸達者な出演者の歌声で綴られていく。

画像1: 『オズの魔法使』を、ドルビーシネマの大スクリーンで体験。84年の時を越えて蘇ったテクニカラーの美しい色と、ドロシーの歌声に魅了された

 今回は、2019年に本作の公開80周年を記念して制作されたドルビーシネマ版が使われているという。こちらについて、堀切日出晴さんがStereoSound ONLINEの連載「世界4K-Hakken伝」でマスター制作について紹介してくれている(関連リンク参照)。

 堀切さんによると2019年のリマスター作業では、オリジナル・ナイトレート・テクニカラーネガ(3ストリップネガ=R/G/B)が使われたという。これはニューヨークのジョージ・イーストマン博物館の保管庫から回収したものというから、本当に貴重な素材だ。そのフィルムを、8K解像度&16ビットカラーでスキャニングを行い、4Kデジタルレストア/HDRグレーシングを施しているそうだ。

 UHDブルーレイ(日本盤も発売中)にもこの8Kスキャニング/4Kレストアのマスターが使われているとのことで、未確認ながら今回のドルビーシネマの映像マスターも同じ素材から制作されたものと考えて間違いないだろう(音声は、UHDブルーレイはDTS-HD MA5.1ch収録。上映時のドルビーアトモスについては、詳細は不明)。

画像2: 『オズの魔法使』を、ドルビーシネマの大スクリーンで体験。84年の時を越えて蘇ったテクニカラーの美しい色と、ドロシーの歌声に魅了された

 今回、映画評論家の飯塚克味さんと編集部も、丸の内ピカデリーのドルビーシネマ版『オズの魔法使』を鑑賞してきた。平日の夕方からの上映にも関わらず半分以上の座席が埋まっている。年齢層は若干高めかもしれないが、ちらほら学生、あるいは子連れのご夫婦も見かけられるのは、名作としてよく知られている本作ならではなのかもしれない。

 スタンダードサイズ(アスペクト比4:3)の見上げるような大画面はかなり久しぶりで、新鮮に感じる。冒頭のセピア調の映像では、思っていた以上に階調感が豊かで、ドロシーの顔のグラデーションもなめらかに再現される。屋外の荒涼とした風景もどことなくしっとり感じられるから不思議だ。

 オズの国に到着してフルカラーになると、テクニカラーの魅力が溢れ出す。ドロシーの肌や衣装も輝かんばかりだし、マンチキンの村のお花畑も、エナメル調の光沢などがいっそうはっきり描かれている。逆にその作り物感が、魔法が当たり前に存在する異世界の植物として、ありかもしれないと思ったほどだ。

画像: 丸の内ピカデリーのドルビーシネマ

丸の内ピカデリーのドルビーシネマ

 音もクリアーで、セリフ、歌声ともひじょうに聞き取りやすいし、控えめながらサラウンド効果も効いている。オズの大王に謁見するシーンでの炎の音は、それなりの低音感があって、迫力も感じさせてくれた。

 84年前の作品をこれだけのクォリティで楽しめるのは、映画ファンとして嬉しい限り。今後も、こういった名作群を若い層に改めて体験してもらう機会が増えていくことを期待したい。(取材・文:泉 哲也)

ドルビーシネマ版『オズの魔法使』の華やかさに、身を乗り出してしまった。
1939年の映画と言っても絶対信じてもらえないだろう  飯塚 克味

 今年の東京国際映画祭でドルビーシネマ版の上映が実現した『オズの魔法使』。実は僕自身は劇場での鑑賞は今回が初めてとなる。「午前10時の映画祭」などで幾度かデジタル上映もされているが、スタンダードサイズの本作がシネスコスクリーンに映写されることは自分的には受け入れられず、足が向かなかったのだ。

 今回、上映された丸の内ピカデリーのドルビーシネマのスクリーンはビスタとシネスコの中間にあたるサイズで、スタンダードサイズを映しても堂々とした大画面で、往年の大劇場のような感覚で作品に接することができた。

 まずは映像面だが、テクニカラーらしい発色の良さで、もし本作の製作年度を知らない若い世代が観たら、1939年の映画と言っても絶対信じてもらえないだろう。冒頭のセピア調からフルカラーに変わる場面は毎回驚かされるが、今回は華やかさが一層感じられ、身を乗り出してしまった。

 マンチキンの村でのミュージカルシーンは大勢の群衆が出てくることもあって、テレビで見るとやや情報過多に感じられるが、やはり映画館の大スクリーンで観ると、それに相応しい迫力を感じさせてくれる。HDRの効果は北の良い魔女、グリンダが光り輝く装飾を身にまとっているのがより顕著に表現され、ドロシーが履くルビーの赤い靴のきらめきは引き画になっても目が行ってしまう。

 ドロシーと旅をするカカシ、ブリキ、ライオンのメイクも細かいところまで気配りされているのがよく分かり、感心せずにはいられない。インパクトが大きいのが西の悪い魔女の緑色にペイントされた顔だ。子どもが見たらトラウマ必至。来年公開を控える『WICKED』では、どのような魔女が見られるのかも楽しみになってきた。

 ドルビーアトモスのサウンドは、基本的にフロント寄りの仕上がり。だが映画に集中するにはちょうどいいレベルに感じた。重低音は必要な分はちゃんと鳴っていたし、セリフも聴きやすかった。

 全体的には4K UHDブルーレイで感じたクォリティを、そのまま劇場サイズにスケールアップした印象だ。クラシック作品をこの品質で鑑賞できるなら、ドルビーシネマでの上映をどんどん増やしてほしい。

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