ヤマハミュージックジャパンから、同社初となるヘッドホンアンプ「HA-L7A」(¥440,000、税込)が発表された。11月中旬から予約受付を開始し、発売は11月30日を予定している。

 HT-L7Aはヘッドホン祭などで参考出品され、同社の平面磁界型オルソダイナミックドライバーを搭載したヘッドホン「YH-5000SE」との組み合わせでデモされていたもので、今回ついに製品版としてリリースされたことになる。

画像: 「HA-L7A」(左)と「YH-5000SE」(右)

「HA-L7A」(左)と「YH-5000SE」(右)

 近年のヘッドホン、イヤホン市場はTWS(完全ワイヤレス)タイプが主流になってはいるが、一方でヘッドホンでいい音を聴きたいというユーザーも多く、ハイエンドモデルは堅調な推移を続けているそうだ。

 ヤマハには上記のYH-5000SEを発売した頃からこれと組み合わせて使えるヘッドホンアンプが欲しいという声も寄せられていたそうで、HA-L7Aはヘッドホンでの音楽体験を愛する人に向けた、YH-5000SEでヤマハらしい音を楽しめる据置型モデルとして企画されている。

 HA-L7Aで目を引くのはL字型の本体と、円柱状の突起だろう。本体正面左側は電源部で、その上側にあるふたつの円をつないだような突起の中には大容量トロイダルトランスが2基収められている。

 増幅回路はヘッドホン試聴用に最適化したフローティング&バランスアンプを採用。出力段の左右チャンネルそれぞれの電力増幅回路をフローティングし、プッシュプル動作を完全に対称化することでバランス/アンバランス出力でアンプ構成を変えることなく、ヘッドホンを駆動できる。これにより出力端子による音色差も抑えられるという。

画像: 本体正面右側にヘッドホン出力を備える。写真右のダイヤルはボリュウムとSOUND FIELDモードの切り替え用

本体正面右側にヘッドホン出力を備える。写真右のダイヤルはボリュウムとSOUND FIELDモードの切り替え用

 本体正面右側にはDACやDSPなどの電子回路やボリュウム回路等を搭載。DACチップにはESSのES9038PROが使われており、DAC以降の主要ステージをすべてバランス回路&ディスクリート構成にすることで、対応ヘッドホンをつなげば完全バランス駆動も可能になった。

 内部的には電源部と回路部が別けられた構成で、デスクトップ使用時にもスペースを取らないようこのデザインが採用されたという。天面には8mm厚のアルミを、トロイダルトランス部分には2mm厚の鋼板をあてがうなど、本体の合成化にも意が払われている。

 本体前面に4ピンXLR/4.4mmバランスヘッドホン出力と6.3mmヘッドホン出力を備え、YH-5000SEだけでなく様々なヘッドホンとの組み合わせが可能(再生時は1系統のみ有効で、複数のヘッドホンを同時につなぐことはできない)。

 リアパネルにはアナログ入力(RCA)と光/同軸デジタル入力、USB Type-Bの入力端子を各1系統搭載。この他に、XLR/RCAのプリアウトも備えているので、本機をUSB DACとして使ってもいい。

画像: 写真左からアナログ出力(XLR、RCA)、アナログ入力(RCA)、光/同軸デジタル、USB Type-Bが並ぶ

写真左からアナログ出力(XLR、RCA)、アナログ入力(RCA)、光/同軸デジタル、USB Type-Bが並ぶ

 USB DACとしては、最大で384kHz/32ビットのリニアPCMと、DSD 11.2MHzが再生可能。ドライバーソフトにはヤマハ・スタインバーグ製が用意され、伝送にはHA-L7Aのクロックを使用するアシンクロナス転送が使われる。クロックには低位相ノイズの高精度水晶発振器を採用した48kHz系と44.1kHz系を合計2基搭載し、DAC ICには専用の水晶発振器を直近に配置することで、外部クロックからのジッターの影響を受けにくい設計が施された。

 なお近年は、USB入力端子にミュージックサーバーをつないで、外部からのコントロールで音楽を再生しようというケースも想定される。こちらについては、すべての機器との動作確認がとれているわけではないが、そういった再生が可能な組み合わせもあるそうだ。

 サウンド面でユニークなのは、ヤマハ製AVアンプで人気のシネマDSP技術を応用したSOUND FIELDモードを搭載している点だ。これは音楽に限らず、映画、スポーツ、ゲームといった多様なコンテンツを、没入感たっぷりに味わってもらいたいという思いから採用されたという。

 映像コンテンツ向けの「シネマ」「ドラマ」、ミュージックビデオ向けの「コンサートホール」「アウトドアライブ」「ミュージックビデオ」、音楽コンテンツ向けの「BGM」の6種類が準備されており、それぞれに適したパラメーターが設定されている。なおこれらのパラメーターは固定で、ユーザーによる調整等はできない。オリジナルのサウンドを楽しみたい場合は、DSPやA/Dコンバーターなどをバイパスする「ピュアダイレクト」も用意されている。

画像: L字型の本体底面に5箇所に円柱型のメタル製レッグを備える。レッグとボトムカバーの間にダンパーを挟むことで、振動を効果的に低減させている

L字型の本体底面に5箇所に円柱型のメタル製レッグを備える。レッグとボトムカバーの間にダンパーを挟むことで、振動を効果的に低減させている

 HA-L7AとYH-5000SEの組み合わせで、ヴォーカルやクラシックの楽曲を聴かせてもらった。PCに保存した音源をUSBで出力、HA-L7Aでデコードしているが、声がひじょうになめらかで、自然に響いてくる。クラシックでの様々な楽器も生々しく、かつ音像が緻密な印象だ(ピュアダイレクトで試聴)。

 SOUND FIELDモードをオンにすると、「ミュージックビデオ」ではヴォーカル定位を保ちつつ音場空間が広がる印象で、「コンサートホール」ではさらに天井も高くなる方向に変化した。試しに「シネマ」を選んでみると、やや誇張感もでてくるが、メリハリのついたスタージとして楽しめそうだ。

 音楽をじっくり聴きたい場合はピュアダイレクトで、気軽に音に包まれたい場合はSOUND FIELDモードを切り替えるといった使い方も可能なわけで(SOUND FIELDモードを選んでも極端な音質劣化は感じなかった)、この点はとても魅力的だ。HA-L7Aは、ユーザーのわがままにも充分応えてくれる魅力的なヘッドホンアンプに仕上がっている。

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