リーゼントでキメた私立探偵・古谷栄一の元に現れたのは、元カノの今日子。今日子は、急逝した父親の遺品から出てきた古いフィルムに映る、若かりし父親の隣で微笑む見知らぬ女性を探したいという。フィルムの残像を手がかりに、城ヶ島を訪れた二人の、奇妙で短い調査(バカンス)が今、幕を開ける……。
10月7日(金)から新宿K's cinemaで上映される『LONESOME VACATION』(プロデューサー;森岡龍/監督;下社敦郎)には、このような惹句が躍る。
さかたりさは、本作で「若かりし父親の隣で微笑む見知らぬ女性」と、「その娘である美優」の二役を好演している。すでにドラマ「この初恋はフィクションです」「正義の天秤」「恋なんて、本気でやってどうするの?」「TOKYO RAILWAY -東京こじらせ女-」、映画『人の愛を喰らって、その屍を生きてみろ』、舞台・劇団丸組「新山猫最終章」等に出演。堅実かつマルチな活躍で、日一日とファンを増やしている役者だ。
「穏やかながら陰を持った美優は、私に通ずる部分があり、美優に自分を重ねながら一つ一つのセリフに糸を通していきました。そんな美優が栄一さんと今日子さんに出会って、心動かされる姿を見ていただきたいです」と語るさかたりさに、『LONESOME VACATION』の見どころ、およびバイオグラフィを訊ねた。
――さかたさんはひとり二役を演じていて、しかも二人とも物語のカギを握るキャラクターです。
遠山美優に関しては、これまでの境遇でけっこう苦労してきたのに、それをあまり表に出さないところが自分と近いなと思いました。特に意識することなく、ナチュラルに演じてみようという感じでした。ただ、美優のお母さんに関しては、自分とかけ離れすぎていて、色々と考えましたね。
――もう亡くなった昭和生まれの女性で、平成初期に撮影されていたフィルムに登場する……。
ちょっと昔の人ですので、台本の言葉遣いも現代的ではない印象を受けました。下社監督からイメージの動画を見せていただいて、そこからしゃべり方を勉強しました。
――そのお母さんが吸うタバコの銘柄も、物語のキーワードとなっています。
私はタバコを吸ったことがなく、タバコをどう持ってライターをつけるのか、どういう感情で吸っているんだろうとかも勉強しました。お母さんに関しては、堂々としてそこにいるイメージ。優柔不断とはまったく違う感じです。ほかには、コンテンポラリー・ダンスを踊るシーンは、感情を動きで表現するところが、なかなかつかめなくて……。相当トレーニングしましたね。ちょうど、水上さんがコンテンポラリー・ダンスの経験があるということで、アドバイスをいただいて、本番は一発撮りで終えることができました。
――さかたさんの登場場面の撮影は主に城ヶ島で行なわれていますが、現場の雰囲気はどうだったのでしょうか?
とても和気あいあいとした雰囲気の現場でした。特に妹役(遠山かおり役)の櫻井音乃さんは本当に愛されるキャラクターの方です。かわいくて守ってあげたくなるような感じでした。
――かおりは美優とは対照的で、明るくはじけるようなキャラクターです。
キャラクターは全然違いますが、お互いにいい姉妹感が出ているんじゃないかなと思います。信号を渡って歩道を歩くシーンは元々セリフがなかったんですけど、本番は全部アドリブで合わせました。櫻井さん明るく、かわいらしい方なので、事前に打ち合わせをしなくても、打ち解けて撮影することができましたね。
――撮影では、けっこうアドリブが飛び交ったのでしょうか?
そうですね。水上京香さん(ヒロインの工藤今日子役)と私がスカッシュをするシーンも全部アドリブでした。美優はスカッシュが得意ではないという設定でしたけど、私は大学のサークルでスカッシュをやっていて、水上さんはスカッシュ初心者で、パワーバランスが逆転したというか、ちょっと面白いシーンになっているんじゃないかなと思います。
――主役の古谷栄一を演じた藤江琢磨さんについては?
すごく独特な空気感を持っていらっしゃる方です。この作品には藤江さんの魅力がめっちゃめっちゃ詰まっていて、海辺で歌うシーンも魅力的すぎて、撮影の時も目を奪われていました。
――「高円寺に事務所を構える私立探偵でロックンローラーの男が、夜の城ヶ島でラブソングを歌う」というのは、なかなかあり得ないシチュエーションです。
ファンタジーに思えてしまうかもしれませんが、それを感じさせない雰囲気がすごくあるんです。
――先ほどスカッシュの話が出ましたが、さかたさんはスポーツ少女だったそうですね。
はい。小さい頃からけっこうアクティブで、サッカー、シャフトテニス、バドミントン、空手とかを経て、ブラジリアン柔術に行き着いた感じです。
――(ブラジリアン柔術は)今も続けていらっしゃるんですか?
続けて4年ぐらいになります。最初はそれほど乗り気ではなかったのに、だんだんと面白さを感じるようになっていって……。ブラジリアン柔術は「マット上のチェス」と言われていて、すごく頭を使う競技なんです。相手がこういう動きをしてきたら、自分はここに足をかけて、ここに体重を乗っけてという感じで、頭を使いながら運動ができて脳トレにもなるので、今も続けています。白青紫茶色黒という帯の段階があって、私は今のところ青帯です。もっと強くなって大会に出てみたいという気持ちはあります。
――ところで、役者を目指したきっかけは何ですか?
ドラマや映画を見ることは小さい頃から好きでしたが、役者を目指した直接的なきっかけは、中学生の頃に見た「イタズラなKiss~Love in TOKYO」というテレビドラマです。キラキラした青春ドラマで、このドラマを見てがんばろうという気持ちになれたんです。人に元気や勇気を与えられる作品は素敵だなと感じて、自分も役者になりたいと思うようになりました。高校1年生からモデルを始めて、17歳の時に熊本から上京しました。東京では普通の高校に通いましたが、熊本では農業高校に通っていました。
――スポーツ、青春ドラマ、農業と、関心の広さがすごいです。
農業高校に進学した理由は、単純に家から一番近い高校だったからです。周りも農業高校に行く人が多くて、通ってみたらすごく楽しいんですよ。農業が楽しくなって家庭菜園を始めたり、実際に自分で作った野菜を食べたり。上京してからもう一度農業がやりたくなって、東京農業大学に進学して、その頃から東京での芸能活動を本格的に始めました。
――この『LONESOME VACATION』に出ることによって、さかたさんの中で変化したことは?
もともとキラキラドラマに憧れて俳優を目指しましたが、今の私のドラマや映画の好みは、日常生活を切り取ったような作品です。私自身、これまでは純粋な女の子の役が多かったのですが、今回初めて違う感じの役に取り組んで、勉強になりましたし、自信がつきました。私が選ばれた理由を監督に尋ねた時に、「はかないのが良かった」と言ってくださったんです。私はたまに「はかない」と言われることがあるので、はかない役や薄幸な役にももっと取り組んでいけたらいいなと思っています。
美優と私には、美優の職業とか、自分に納得がいっていないところとか、近い部分が本当にあります。映画の中の美優は夢をあきらめてしまいますが、私は美優の夢を背負って、これから大きく羽ばたいていきたいと思っています。私と美優を重ねながら、ぜひ観ていただけたら嬉しいです。
映画『LONESOME VACATION』
10月7日(金)より新宿K’s cinemaほか 全国順次公開
<キャスト>
藤江琢磨 水上京香 さかたりさ 櫻井音乃 宮部純子 飯田芳 高木健 都志見久美子 松㟢翔平 森岡龍 諏訪太朗 斉藤陽一郎
<スタッフ>
監督:下社敦郎 プロデューサー:森岡龍 アソシエイト・プロデューサー:市川夕太郎 ラインプロデューサー・録音・編集:磯龍介 脚本:下社敦郎、中野太 撮影:古屋幸一 照明:市川高穂 美術・スチール:上山まい スタイリスト:矢野瞳子 ヘアメイク:征矢杏子 助監督:松?翔平 制作:佐久間作蔵 撮影助手:竹下亘輝 照明助手:小野塚竜矢 照明応援:白石久時 制作助手:寺村海晴 車両応援:高木健、酒川流星 8ミリパート撮影:金碩柱 ダンス振付:MIKI the FLOPPY 英語字幕:西川舜 整音・音響効果:丹雄二、丹愛 グレーディング:山田裕太(レスパスビジョン) 現像:IMAGICA 音楽:下社敦郎、中村太紀 主題歌:すばらしか 企画・製作:マイターン・エンターテイメント 制作:マイターン・エンターテイメント、SONHOUSE 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト 配給協力:ミカタ・エンタテインメント
2023/日本/カラー/68分/DCP/ヨーロピアンビスタ/ステレオ
(C)「LONESOME VACATION」製作委員会
公式SNS
https://twitter.com/LONESOME_FILM
さかた りさ公式SNS
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