まるでシネラマのスクリーンだ!湾曲率800Rのディスプレイに歓喜
「映画を観るのはシネスコ&カーブドモニターが面白い!」。自宅のシアターで長らく愛用していたシネスコ&カーブドスクリーンを使ったプロジェクターシステムから、より湾曲した画面が楽しめるゲーミングモニターの魅力にすっかり夢中になっている。
自室にPC用の34インチのゲーミングモニターを導入してから1年半余り。家庭で映画を観る時でも画面が湾曲していることがなによりも重要だと考えている。その流儀の原点となるのは10代の頃から慣れ親しんだ映画館の記憶。シネラマやD150といった大きく湾曲したスクリーン体験を家庭でも再現したいのだ。シネスコという映画に最適なアスペクト比はもちろん、既存のスクリーンを超える湾曲した画面を持つシネスコ&カーブドモニターが映画の再生の楽しみを倍加してくれる。
そして今回、引っ越しに伴ってシアターを新調するにあたり、これまでずっと気になっていた新しいモデルを導入した。それが国内では3月にリリースされたLGの「45GR95QE-B」である。昨年夏の海外での発表からおよそ一年。念願のリプレイスだ。
有機ELモニター
LG 45GR95QE-B(市場想定価格¥280,000前後)
●画面サイズ:44.5インチ(アスペクト比21:9)
●パネルタイプ:OLED(表面処理アンチグレア)
●パネル解像度:水平3440×垂直1440画素
●画素ピッチ:0.303×0.303mm
●表示色:約10.7億色
●視野角:水平178度/垂直178度(CR≧10)
●輝度:標準値200cd/㎡、ピーク時800cd/㎡
●コントラスト比(標準値):1,500,000対1
●応答速度:0.03ms(GTG)
●色域(標準値):DCI-P3 98.5%
●接続端子:HDMI入力×2、DisplayPort入力×1 (Ver.1.4)、USBアップストリーム×1(USB 3.0)、USBダウンストリーム×2(USB 3.0)、ヘッドホン出力×1(4極 ヘッドホン出力+マイク入力)、光デジタル出力(S/PDIF)×1
●主な機能:HDR10、HDCP2.3、ブルーライト低減モード、Smart Energy Saving、ハードウェアキャリブレーション、PIP/PBP、DTS Headphone:X、VESA DSC、FreeSync Premium テクノロジー、NVIDIA G-SYNC Compatible、DAS(Dynamic Action Sync) モード、他
●消費電力:標準時129W、最大160W
●寸法/質量:W993×H538〜648×D363mm/10.9kg(スタンド付き)、W993×H457×D218mm/8.6kg(スタンドなし)
45GR95QE-Bに魅かれていたポイントは3つ。
(1)「とにかく画面が曲がっている!」
モニターがどれだけ湾曲しているのかを表すのが湾曲率。単位の “R” は半径で、この値が小さければ小さな円となり、カーブも急になる。これまでもっとも湾曲していたモニターの湾曲率は1000R。45GR95QE-Bはさらに曲がった800R。シネスコ画面とも相俟って、映画への没入感と臨場感をさらに感じさせてくれるのは間違いない。
(2)「画面がデカい!」
従来の湾曲モニターのサイズを大きく超える45(44.5)インチ。これまで使用していた34インチモデルを大きく超える。やはり映画鑑賞には“デカい画面は正義”である。
(3)「有機パネルが鮮烈!」
2022年7月号「HiVi」誌の「映画/ネット動画のためのPCモニター」特集記事で視聴した有機EL対応モデルならではの鮮度の高いビビッドで黒の締まったトーンが忘れられない。45GR95QE-Bは画面反射の少ないアンチグレア仕様になっていること、そしてHDR10に対応しているのも映画再生においてはポイントが高い。また液晶式では目につきやすい黒浮きも有機ELパネルなら問題にはならないだろう。シネスコ&カーブドモニター好きにとっては、ゲーミングモニターだからといってゲームに特化した使い方なんてもったいない。いよいよ登場した “極私的本命機” だ。
遂にきた!45GR95QE-B。長らく1000Rの画面を見慣れた眼にも800Rの曲がりっぷりは強烈。モニター左右の手前側へのせり出しがもう尋常ではない。同梱されている専用のTVスタンドではなく、エルゴトロン製のモニターアームに本体を取り付けた。AVボードに固定しているので安定性も充分。これで視聴位置からモニターまでの距離だけでなく高さも自在に変えることが出来る。有機ELモデルらしくモニターは意外なほど薄い。重量もおよそ10kgと軽い。設置もひとりで楽々だ。
TVチューナーやスピーカーは搭載されていないが、放送で番組を見る・録るのはレコーダーを併用すればOK。映画再生用に本機を導入してみようと考える方ならば音にもこだわるはずなので、むしろ最初からAVセンターを介したサラウンドシステムやサウンドバーなど、外部再生機器との連動が想定されているほうが好都合だろう。
新しいシアターの空間は横2m×縦3mとコンパクト。大胆に飛び出したモニター、ソファの視聴位置までの距離は通常は約140cm。映画を観る時の気分や作品の内容によって近づけたり離したり、モニターの位置を変えようというスタイルだ。
Apple TV 4Kやレコーダーなどのソース機器からの映像・音声信号はいったんAVセンターに入力。ここからHDMI端子を介して45GR95QE-Bへとつないでいる。解像度UWQHD(水平3,440×垂直1,440画素)。ゆえに4K(水平3,840×垂直2,160画素)には満たないが、有機ELモニターならではのコントラスト感と圧倒的な湾曲率が本機の持つ唯一無二の魅力。まったく意に介していない。
シネスコ作品をチェックしてみたインプレッションについては後編でリポートしたいが、本機が搭載する「アスペクト比」モード機能については先に触れておかねばなるまい。その名の通り、出画のアスペクト比が変更できるモードで、この機能がなかったために他社製の前使用機ではスケーラー(2Kにダウンコンバートする必要があった)をどうしても経由する必要があった。
しかし「アスペクト比」モードがあれば、UHDブルーレイプレーヤーやApple TV 4Kなどを外部再生機器として使っても、シネスコ画面が正しいアスペクト比のままで全画面に表示される。本機の「シネマ1」モードがすべてを解決してくれた。とりわけ本機ならではの機能として謳われているわけではないが映画ファンには重要なポイントである。
ゲームよりもむしろ映画向きなのだ! と声を大にして力説したい21:9=シネスコのスペクト比や大きく湾曲した画面は、いわゆる一般家庭向きのテレビやプロジェクターを使ったスクリーン上映とはまったく違う独自の世界。最新のハリウッド映画から黄金期の日本映画まで、これまで以上にシネスコ作品をしゃぶり尽くすのだと鼻息を荒くしているところである。(後編へ……つづく)