Bowers& Wilkins(B&W)から、同ブランドの800 Series Signatureの新しいラインナップが発表された。どちらもミッドナイトブルー・メタリックとカリフォルニアバール・グロスの2種類の仕上げが用意されており、本日から日本国内での受注を開始している。
801 D4 Signature ¥7,370,000(ペア、税込)
805 D4 Signature ¥1,760,000(ペア、税込)
B&Wは、1966年のブランド設立以来 “Signature” の名前を冠したスピーカーを7モデル発売してきた。これらはまったく新しい技術を導入するのではなく、既に確立された技術やプロセスを最大限に活用して最適化されたスピーカーという位置づけだという。
さらにSignatureの名を持つモデルは、既存モデルにファインチューイングを加え、特別なコスメティックデザインが与えられている。例えば「Silver Signature 25」(1991)、「Signature 30」(1996)、「Signature 800」(2001)、「Signature 805」(2002)、「Signature Diamond」(2006)などがその代表だ。
今回発売される801 D4 Signatureは、現行トップモデルである「801 D4」をさらに洗練・進化させたモデルだ。3ウェイ3スピーカー構成やフォルムはそのままに、新たな改良が加えられている。
搭載されたユニットは、ダイヤモンドドーム型トゥイーターとContinuumコーンFSTミッドレンジを継承、低域のウーファーのみ再設計された。そのウーファーは、磁気回路内のポールピースのトッププレートおよびミドルプレートの鋼材を改良し、インダクタンスを下げることで電流歪みを低減している。ちなみに801 D4などの従来モデルはこれまで同様に製造・販売されるので、工場のラインでユニットを間違えることがないように、エッジ部分がブラックに塗装されている。
トゥイーターについては上記の通りユニット自体に変更はないが、前面に装着されるグリルメッシュが、ユニットを保護するだけの充分な剛性を保ちつつ、開口率の高いものに交換されたという。実際にこれまでの製品に使われていたグリルと並べて確認させてもらったが、確かに網目の一本一本が細くなっており、これなら音の透過性もかなり改善されるだろうと思った。
さらに、2基のウーファーを収めたキャビネットと、その上側(ミッドレンジやトゥイーターを搭載した部分)との間に設置されているアルミニウム製のトッププレートにも改良が加えられている。
この部分は楕円形の一枚のプレートで、801 D4では固定用のネジ穴が数ヵ所あいているだけだった。しかし801 D4Signature用のプレートにはアルミの共振周波数を抑えるために、切削加工によるスペースが設けられている。
またこのプレートの上側にはカラーと呼ばれる馬蹄形の樹脂製パーツが組み合わせられているが、今回はこのカラーにも改良が加えられ、801 D4の他の部分にも使用されているテックサウンド・ダンピング素材が、緻密な計算に基づいて配置されたという。これにより振動や機械的ノイズが抑えられ、キャビネット上部からの不要な音の放射も大幅に低減された。その結果、さらなる中音域の透明感と開放感が獲得されている。
バスレフポートも、これまで樹脂製だったポートの出口が鋳造アルミニウム製に交換されている。もともと801 D4では本体底面にアルミのベースプレートを配置して強度を高めていたが、新製品ではポートそのものもアルミ製にすることで高い剛性を獲得、より引き締まったレスポンスと、立ち上がりの速い正確な低音を実現したそうだ。
さらに801D4 Signatureは、近年のSignatureモデルと同様の手法でクロスオーバーネットワークにも改良が加えられている。具体的には、バイパスコンデンサーのアップグレードとさらに使用ヵ所をこれまでの2倍(合計4個)に増やすことによって、サウンドの透明感を高めている。
ブックシェルフスピーカーの805 D4 Signatureは、コンパクトで、より部屋にフィットさせやすいモデルとなっている。こちらも改良点として、801 D4 Signatureと同様に、トゥイーターに新しいグリルメッシュを採用、さらに新型バイパスコンデンサーによってアップグレードされたクロスオーバーネットワークを搭載している。
165mmウーファーユニットは、磁気回路の背面にある空気抜きの穴を拡大することで歪みを改善、中域をよりクリーンに、低域をより伸びやかに再生できるようになった。同時にアルミ製トッププレートは固定ヵ所を2点増やし、キャビネット上部から発生する不要なノイズや振動の低減を図っている。
本体仕上げも新しくなった。ミッドナイトブルー・メタリック塗装は、オリジナルNautilusと同じもので、塗料とラッカーを合計11回塗り重ね、機械による研磨を経て、煌びやかで深い光沢を湛える表面仕上げを実現している。801 D4 Signatureのトッププレートには特注の青いLeather by Connollyのトリムが施され、さらに豪華な仕上げになっている。
もうひとつのカリフォルニアバール・グロスは、同名の木材の突板を使用した仕上げで、世界にひとつの木目に、ブラックのLeather by Connollyとダーク・アンスラサイトの金属部品で縁取られた豪華なハイグロス仕上げとなっている。突板は、イタリアの専門メーカーALPIの持続可能な方法で調達された木材を使用し、801 D4 Signatureの仕上げには14回以上のラッカー塗装と複数のサンディング工程が含まれ、合計で24時間以上をかけているとのことだ。
なおこれらのSignatureモデルの改良点は、現行製品に “後付け” することはできず、現行の800 Series Diamond製品にランニングチェンジとして採用されることもないそうだ。
先日開催された新製品説明会で、801 D4 Signatureと805 D4 Signatureの音を確認することができた。再生ソースとして、DSD2.8MHzのピアノ曲や女声ヴォーカル、96kHz/24ビットのデュエット曲などを聴かせてもらった。
最初に聴いた805 D4では、切れがいいピアノや低域の張りがあるドラムや女声、クリアーなデュエットが楽しめる。スピーカーを805 D4 Signatureに交換すると、ピアノの高域の伸びが向上し、低域も豊かでゆとりのある音場に変化した。女声ヴォーカルは低域がいっそう安定し、深さの表現が出てくる。デュエット曲もピアノの再現が自然で、誇張感もない。
上位モデルの比較では、801 D4でもステージが広く、スピードや力感に優れたサウンドが再現されている。低域の力強さ、沈み感も充分で、クリーンな中に余裕を感じる再現だ。デュエット曲も男声と女声の重なりが自然で、でもきちんと分離して聴き取れる。
801 D4 Signatureでは音場に高さが加わり、上下方向の情報までしっかり再現されている。音量も増してきた印象で、音場全体の体積が増えたようだ。女声ヴォーカルは低域の沈みがいっそう深くなり、全体のキレも向上する。デュエット曲ではステージのS/Nがよくなり、男女の声の強弱の描き分けも明瞭になっている。
上記の通りSignatureシリーズは新しい技術を導入するのではなく、確立された技術やプロセスを活用して最適化されたスピーカーだという。しかしそのサウンドは格段の進化を遂げているのは間違いない。同シリーズのユーザーや導入を考えている方は、ぜひ新Signatureの音を体験していただきたい。その変化に驚くはずです。