「更生」はどのレベルに達した時に、世間からそう認定されるのだろう。犯罪者の親族は、その犯罪がいかなる理由によって起きたかどうかも考慮されぬまま、いつまで不名誉なレッテルを貼られ続けるのだろう。ひょっとしたらそれは一生どころか、末代まで続くのではなかろうか。そんなジメッとしたいやらしさを、真正面から表現しようという気概が伝わってくる。主人公の片山優に扮する横浜流星をはじめ、幼なじみの美咲役を演じる黒木華にとっても新境地と言える一作なのではないか。
監督・脚本は『新聞記者』や『余命10年』等でも知られる藤井道人。昨年6月に他界した河村光庸プロデューサーにとっては、遺作となってしまった。物語の舞台は、霞門村(かもんむら)という集落。伝統として“能”が継承されている、一見、静かでおだやかそのものの場所だ。しかし村民にも生活がある。経済を活性化させなければ先が見えない。政治の力で、ゴミの最終処理場が建設されることになった。もちろん反対の声、危険視する声もあがったが、そのあたりは政治の力で一掃され、片山優はそこに就職する。とある理由で社内のいじめにあっても、やめるわけにはいかない。母親の背負った莫大な借金を返す必要があるからだ。
ダークネスに彩られた優にとって、幼なじみの美咲は一筋の光だ。彼女は再び故郷で暮らそうと、東京での生活を切り上げた。ふたりは以前と変わらず、気が合い、楽しそうに話す。優の仕事も順調になってきた。が、他人の幸せに好感を持てない人間はどこにでもいるもので、しかもそれが、経営者の息子であったならば……。ささやかな幸せを得るべくまっとうに生きようとする庶民を、よこしまな者たちが権力にものをいわせて妨害していく図のあとに広がる風景は、果てしなく荒涼としている。
映画『ヴィレッジ』
2023年 4月21日(金)全国公開
<キャスト>
横浜流星
黒木華 一ノ瀬ワタル 奥平大兼 作間龍斗 淵上泰史 戸田昌宏 矢島健一/ 杉本哲太 西田尚美 木野花 中村獅童 古田新太
<スタッフ>
監督・脚本:藤井道人 音楽:岩代太郎 企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸 制作プロダクション:スターサンズ 制作協力:Lat-Lon 製作幹事:KADOKAWA 配給:KADOKAWA/スターサンズ 製作:「ヴィレッジ」製作委員会
(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会