昨年、歌手デビュー50周年を迎えた石川さゆりが、50周年記念アルバムとなる『Transcend』を発売(CD2/15 LP3/1 SACD3/31)。本作は、なによりもまず、音質を最優先に製作された一枚であり、本日3月22日には、レコーディングを担当した内沼映二氏が会長を務めるミキサーズラボにて、アルバム試聴会、および、石川さゆりを招いての内沼とのクロストークショーが行なわれた。

画像1: 「石川さゆり」、デビュー50周年記念アルバム『Transcend』の試聴会が実施。「これからも音楽で感動を届けていきたい」

 今回のアルバム制作の発端は、テイチクレコードのプロデューサー佐藤 尚氏の弁によれば、現在の音楽マーケットを俯瞰すると、デジタルコンテンツ、ストリーミングサービスが全盛であり、それは時代の要請として必要なものではあるものの、やはり、音楽の担い手としては“高音質”にこだわった音楽商品を発表したい。そのコンセプトの下、本企画をスタートさせたのだという。そこで話されたのは「パフォーマンス」「技術」、そして「音楽性」の3本柱であり、この三位一体の商品を送り出すべく、ボーカリストには石川さゆりを、レコーディングには同業界において長き渡り活躍している巨匠・内沼映二を、音楽性では内沼とも親交の深い斎藤ネコを、それぞれ選任し、製作を行なったということだ。

画像2: 「石川さゆり」、デビュー50周年記念アルバム『Transcend』の試聴会が実施。「これからも音楽で感動を届けていきたい」
画像3: 「石川さゆり」、デビュー50周年記念アルバム『Transcend』の試聴会が実施。「これからも音楽で感動を届けていきたい」

 曲目については、石川の2000を超える楽曲の中から、定番中の定番ともいえる6曲を選定。それに対し、ビックバンドアレンジ、ストリングスアレンジという2種類のアレンジを施し、収録スタジオも、それぞれのアレンジに適した会場を選び、収録を行なっている。内沼の弁によれば、ビックバンドアレンジの収録には、空間が広く、大編成・大音量でも音が飽和しないビクタースタジオ「Studio 301」を、ストリングスアレンジでは、響きの美しいBunkamura Studio「A Studio」を選定したという。収録はそれぞれPCMで行なっており、2chへのミックスダウンは、ミキサーズラボの自社スタジオにて、アナログミキシングコンソールを通して、最終的にPyramixのDAWにてPCM 384kHz/32bitのスペック(マスター音源)にまとめている。

画像: マスター音源(384kHz/32bit)は」Pyramixから再生

マスター音源(384kHz/32bit)は」Pyramixから再生

画像4: 「石川さゆり」、デビュー50周年記念アルバム『Transcend』の試聴会が実施。「これからも音楽で感動を届けていきたい」

 今回ラインナップされるのは、CD、LP、シングルレイヤーSACDという3種類のパッケージであり、その工程においても最大限音質に配慮した作業が行なわれている。アナログ(LP)は、マスター音源のPCM 384kHz/32bitからカッティングしたラッカー盤をマスターに、CDはそのラッカー盤を再度デジタル化し、最終的にCDのフォーマットである44.1kHz/16bitに変換したものをマスターにしている。このCDの製作工程に用いられているのは、近年ミキサーズラボが推進している「ラッカーマスターサウンド」というマスタリングの技術であり、一度、ラッカー盤を経由することで、倍音成分や音のまろやかさが醸成され、「艶があり、滑らかなサウンドになる」ことから、今回採用されたということだ。SACDについては、アナログミキシングコンソールでミックスダウンされた2chアナログ音声をアナログテープ(ハーフインチ)に録音。それを再生し、Pyramixを用いて、2.8MHz/1bitのDSDファイルを作成している。このあたりの工程の詳細ついては、小社・ステレオサウンドNo.226 2023年SPRING(3月2日発売)に詳しいので、ご興味をお持ちの方はぜひ、ご覧いただきたい。

画像: ラッカーマスターサウンドの工程

ラッカーマスターサウンドの工程

画像: 貴重なラッカー盤の再生デモも行なわれた。再生機はテクニクスの「SL-1200GR」

貴重なラッカー盤の再生デモも行なわれた。再生機はテクニクスの「SL-1200GR」

 さて、試聴会では、PCM 384kHz/32bitのマスター音源、およびラッカー盤からのダイレクト再生という2種類の方法でデモが行なわれており、その再生音を聴いた当の石川本人は、「すごくふくよかなで、かつてレコードを聴いた時に覚えたワクワクした感じがする」と表現。50年記念作として、音質にこだわって製作・完成した本作を見ながら、「50年歌ってきて、音質を追求した本作に関わることができてとても幸せ」と嬉しさをにじませていた。

 ちなみに本作は、演奏と音声を同時に録音する一発録音が採用(実施)されており、その意図についての石川のコメントを、少し長くなるが紹介すると、「今の録音の仕方は、カラオケを録ってから、ボーカルを録って重ねていくことが多くなっていますけど、私は同時に録音していた時代にデビューした世代なので、未だにオケを録る時に、一緒に歌うということをずっとしております。演奏をする皆さんとセッションをしている、音楽を通して会話をしているとも言えます。それが心地よくて、それこそが音楽なんだなって感じています。スタジオにいると、それが感じられるので、本当に大好きな場なんですよ。歌い手として幸せを感じていますし、皆さんには本当に感謝しています。感情や高揚するものが音楽の中にはある。人と人を通して本気でそれを重ねた時に、聴いてくださる方々にも、感動が生まれるのだなって感じます。そういうことを生業としてやってきた50年だったのだなってすごく感じていますし、このアルバムを通して、1人でも多くの皆様に、(その思いを)共有していただけたら、幸せに思います」と、胸の内を明かしてくれた。

 また、内沼のレコーディングを、「魔法みたい」と形容。「内沼さんがミキシングをしてくださると、自分でもこんな声が出たのかしらって思うような声が出ちゃうんですよ。歌う時には、自分の思い描く歌、音楽の世界というものが必ずあって、頭の中に絵が思い浮かんでくるのですが、自分の発した声が、内沼さんがミキシングをされて自分の耳に戻ってくると、もっと景色が深まっていくんです。そしてさらに深いものが見えたり、聴こえたりしてくる。より自由に、もっと好きに飛んでいいよって言われているようで、行っちゃっていいんですね! って、思いっきり行けるのが、内沼さんの音作りなんです」と、その心地よさを語っていた。

 その内沼は、石川の声について、「倍音がいい感じに含まれていて、高域が伸びた時の感じがもう、ゾクッとするんですよ。だから、録音の時も、なるべくいいところを録ろう、いいところを出してもらえるようなことを意識しながら、やっていますね」と絶賛していた。

 それを受けて石川も、「音が聴こえて、ピタッと合った瞬間。あっ来たって思うんです。そうすると、いくらでも声が出ていくんですよ。面白いですよね」と笑顔を見せていた。

 また、今後の活動については、「音楽って本当に自由なんです。だから、51年目からは、いろんな世界に飛んでいきたいし、はしゃげるかな、楽しめるかなということ、どんどんやってみたいですね」と話してくれた。

 最後に、彼女にとっていい音とは、と尋ねると、「いい音っていうのは、人間が感動できる音だと思います。人が感じるものですから、感情に訴えかけてくるものがある。それが素敵なものなのだと思います。そして、生きている毎日に寄り添ってくれるものですね」と、素敵な答えを返してくれた。

画像: シングルレイヤーSACDはステレオサウンドより3月31日に発売

シングルレイヤーSACDはステレオサウンドより3月31日に発売

画像5: 「石川さゆり」、デビュー50周年記念アルバム『Transcend』の試聴会が実施。「これからも音楽で感動を届けていきたい」

石川さゆり デビュー50周年記念アルバム第2弾『Transcend』
CD ¥3,080(税込 テイチクエンタテインメント 発売中)
アナログ盤 ¥5,500(税込 テイチクエンタテインメント 発売中)
シングルレイヤーSACD ¥6,600(税込 企画・販売:ステレオサウンド 3月31日発売)

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