イヤホン・ヘッドホン用のケーブルブランドとして知られる「HAKUGEI」(リアルアシスト取り扱い)から、リケーブルの新製品が2種類が4月20日に発売される。初めてのリケーブルにも好適な「HEALER」(¥19,800税込)と、高級イヤホン向けの「MICHAEL」(¥126,500税込)だ。ここでは発売に先駆けてそれぞれの音質チェックをお届けしよう。

HAKUGEI
リケーブル

「HEALER」
¥19,800(税込)

画像1: HAKUGEIから注目リケーブルが登場。ケーブルによる音の違いを楽しむのに好適なエントリー「HEALER」&ハイエンド「MICHAEL」

HAKUGEIブランドのエントリーモデル。線材にはOCCを用い、0.05mmの素線を135本撚り合わせたリッツケーブル。8芯の仕様となる。試聴にはカスタム2ピン、4.4mmバランスモデルを用いている

「MICHAEL」
¥126,500(税込)

画像2: HAKUGEIから注目リケーブルが登場。ケーブルによる音の違いを楽しむのに好適なエントリー「HEALER」&ハイエンド「MICHAEL」

HAKUGEIブランドのハイエンドモデル。金メッキ銀線、パラジウムメッキ銀線、銀線リッツ、銀金合金、グラフェン・ファイバーという5種類の素線(計100本)を撚り合わせてリッツケーブルとしている。試聴にはカスタム2ピン、4.4mmバランス仕様を用いた。

 今や、ワイヤレスで音楽を快適に楽しめる完全ワイヤレスイヤホン=TWSが人気だが、有線タイプのイヤホンやヘッドホンにも根強い人気がある。その理由はいくつかあるが、一番はやはり音質。信号を圧縮する無線伝送ではなく、音源をそのままケーブルを通じて伝送するから、最新のハイレゾコンテンツなどでは、音源の持つ豊かな情報量を存分に楽しむことができる。基本的に電源は不要なので、外出先などでバッテリー切れを心配する必要はないし、それにともなう故障なども少ない。もうひとつは、接続ケーブルを交換してより好ましい音質へチューニングする“リケーブル”の楽しみがあること。

 リケーブルは、本来はケーブルの断線などによる故障に対応するものだが、各社から音質に特化した交換用ケーブルが発売されたことで、音質チューニング用アイテムとして注目を集めている。

 また、現在のイヤホン/ヘッドホン用の出力端子は、従来の3.5mmステレオミニ端子に加えて、バランス伝送を実現する4.4mmバランス端子なども登場しており、バランス接続&ケーブルの脱着に対応したイヤホン/ヘッドホンならば、リケーブルによって音質的に有利なバランス接続を楽しめるようになる。最近ではDAP(携帯音楽プレーヤー)やヘッドホンアンプもバランス出力を備える機種が多数ラインナップされているので、機器の買い替えや買い足しにあわせてリケーブルをする人も増えている。

 今回紹介する「HEALER」、「MICHAEL」ともに、コネクターはカスタムIEMで採用の多いカスタム2ピン端子のため、試聴ではリアルアシスト取り扱いのSee audioの有線イヤホン「Kaguya」(¥187,000税込)を組み合わせている。BA×4基、EST(静電)ドライバー×4基による構成で、ESTドライバーは「EST65QB02」という最新のパーツを採用しているのが特徴。付属するケーブルは、6Nのリッツ線OCCにシルバープレイテッドを施したもので、ハイエンドモデルだけに質の高いものとなっている(3.5mmステレオミニ)。が、今回組み合わせる「HEALER」、「MICHAEL」が4.4mmバランスプラグのため、条件を合わせるためにオプションのケーブル(線材の仕様は同じで、プラグがスイッチジャック式。4.4mmバランス)を組み合わせている。

See audio
有線イヤホン
「Kaguya」
¥187,000(税込)

画像3: HAKUGEIから注目リケーブルが登場。ケーブルによる音の違いを楽しむのに好適なエントリー「HEALER」&ハイエンド「MICHAEL」

See audioのフラッグシップモデル。ユニバーサルタイプのIEMで、バランスド・アーマチュアドライバー(BA)×4基、静電(EST)ドライバー×4基という豪華な構成。BAドライバーは低域と中域でパーツを変えるなどこだわりの仕様。再生周波数帯域は20Hz~40kHzをマークする。試聴テストでは条件を合わせるためにオプションのケーブル(スイッチ式ジャック)を組み合わせて4.4mmバランスで聴いている

 まずは「Kaguya」の実力を探るべく、オプションのケーブルで聴いた。プレーヤーはソニー「NW-WM1AM2」。接続は4.4mmバランスだ。アンドリス・ネルソンス指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団による『ブルックナー/交響曲第8番』から第4楽章を聴いたが、出だしの力強い旋律をスピード感のある音で再現してくれた。オーケストラの配置が見えるような見通しのよい音場で、個々の楽器の音にもきめ細かさがある。軽快でスピードの速い低音はややタイトだが、低音楽器や打楽器の音の響きも豊かに再現し、スケールの大きな演奏を楽しめた。中高域は自然な感触で音色としてはニュートラル、弦楽器の艶や倍音の美しい音色も実にていねいに再現してくれた。

画像: プレーヤーにはソニーの「NW-WM1AM2」を使い、4.4mmバランスで接続している(写真は「MICHAEL」)

プレーヤーにはソニーの「NW-WM1AM2」を使い、4.4mmバランスで接続している(写真は「MICHAEL」)

 ジャズプレイヤーを目指す若者たちを描いたアニメ作品『BLUE GIANT』のオリジナルサウントラックから、彼らが演奏した「N.E.W.」を聴くと、冒頭から激しく吹くテナーサックスの音を生々しく再現する。強く息を吹き込む感じや、金管楽器特有の音の感触には、充分な力強さがある。ピアノやドラムの音もリアルだが、低音域がタイトな感触のため、リズム感や気味の鋭さはよく伝わるが、低音パートの身体が震えるような力感がやや軽くなる。

 低音の再現は、ぼくの好みではもう少し重量感や力感が欲しい気もするが、低音不足というほどのものではなく、スピードやキレ味、低音の解像感の高さを求める人にはぴったりだと思う。中域の密度感や高域の繊細さと空間再現の巧みさなどを含めて、フラッグシップらしい高い実力を持ったモデルと言える。

「HEALER」は、高級イヤホンの持ち味をきちんと楽しめ、価格以上の満足度を得られる製品だ

 これを踏まえて、まずはエントリーモデルの「HEALER」に交換。2万円ほどと手の届く価格ながら、OCC(無酸素銅)のリッツケーブルを採用し、デュポンPVC仕上げとし、さらに高級ケーブルでは定番の網組とするなど、手頃な価格とは思えないしっかりとした作りになっている。接続は同じく4.4mmバランス端子だ。

 『ブルックナー/交響曲第8番』から第4楽章では、音場の広さと奥行の豊かな再現が印象的だ。出だしの雄壮なメロディーも力強く鳴る。タイトな低音は少しマイルドな感触となるが、コントラバスなどの低音楽器の音階もきちんと再現するし、胴鳴りの豊かな響きも心地よいもの。中高域の密度感や各楽器の音色の再現もリアルで、「Kaguya」オプションのケーブルと比べても、情報量や音の質感などで優位さを感じた。これはなかなかの実力だ。

 『BLUE GIANT』の「N.E.W.」は軽快でキレ味の良い鳴り方となる。テナーサックスを力強く吹いた音の勢いとその音が空間に広がる様子が美しく再現され、ライブステージを思わせる感触の鳴り方だ。その特徴は、空間描写の鮮明さと、ややタイトな感触ながらも楽器の音の質感まできめ細かく描く情報量の豊かさにある。不要な色づけの少ない音も好感触で、音の個性という点ではインパクトは少ないが、「Kaguya」のような高級イヤホンとの組み合わせでも持ち味を損なうことなく、充分に満足度の高い音を楽しめる。

「MICHAEL」は、ハイエンドモデルに相応しい圧巻の実力。低音の厚みとエネルギー感が好印象!

 今度はハイエンドモデルの「MICHAEL」だ。こちらは金メッキ銀線、パラジウムメッキ銀線、銀線リッツ、銀金合金、グラフェン・ファイバーという複数の線材を組み合わせている。外装はデュポンPVC仕上げだ。網組ケーブルの質感の高さはもちろんのこと、高級感のある作りも立派。ケーブルもしなやかで使い勝手も良い。

画像: 「MICHAEL」は、ハイエンドモデルに相応しい圧巻の実力。低音の厚みとエネルギー感が好印象!

 『ブルックナー/交響曲第8番』から第4楽章でまず感心したのは、イヤホン「Kaguya」自身の持ち味であるタイトな低音に、芯の通った力強さが出てくること。オーケストラの迫力や重量感が出て、スケールの大きな音場がいっそう雄大になる。もちろん、低音の厚みが増しても、出音の勢いや解像感の高さが損なわれることはない。よりエネルギー感が加わったかのような力強さになる。

 音場の広がりや見通しの良さもさらに鮮明さを増し、特に弦楽器の艶が際立つため、音の色彩感が豊かになったと感じる。音色の鮮やかさが印象的だが、周波数バランス的にはニュートラルで高域だけが突出するようなことはない。絵画で言えば色数が増え、より細い筆で緻密に描くようになったことで、より鮮明さが高まったと感じる。そこに音の厚みとエネルギー感が高まった中低音が加わり、より躍動感のある演奏に感じられた。

 だから、『BLUE GIANT』の「N.E.W.」の吹き上がるようなテナーサックスの音がさらに力強さを増し、低音がずしりと響くピアノ、キレ味の鋭さとリズム感の良さにパワー感を増したドラムが一体となり、曲の持つ勢いとエネルギーの迸りがダイレクトに伝わってくる。この暴力的とも言える音の勢いは見事なもの。

 ブルックナーの8番では滑らかで上質な色彩感を伝え、BLUE GIANTではキレ味鋭い音のエネルギーをぶつけてくる。曲の持ち味をしっかりと引き出す鳴り方は見事なもので、リケーブルでこれほど表現力が豊かになるのかと驚かされる。

リケーブルの面白さが存分に実感できる2製品。「MICHAEL」はお気に入りの高級モデルに組み合わせれば、さらに満足度が高まる!

 「HEALER」、「MICHAEL」ともに、それぞれの価格帯で頭一つ抜けた実力を持ったケーブルで、リケーブルの面白さを味わうには最適だと言える。両方に共通して好ましいと感じたのは、音質的に特徴的な色づけのない部分で、イヤホンや好みによる好き嫌いが出にくいこと。このあたりの強い個性を主張しない作りというのも、ケーブル専門メーカーらしい良さだと思う。

画像: リケーブルの面白さが存分に実感できる2製品。「MICHAEL」はお気に入りの高級モデルに組み合わせれば、さらに満足度が高まる!

 「MICHAEL」はなかなかの価格なので、それに釣り合う価格の高級イヤホンのユーザーに限られると思うが、「HEALER」ならば手の届く価格なので、初めてのリケーブルに挑戦したい人にはぜひおすすめしたい。イヤホンのバランス接続に興味がある人にも注目してほしい。

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