画面から迫力が飛び出してくる、そういうしかない作品だ。1944年当時の戦いを、資料によると「戦闘機の爆破や破壊シーンにおいてすら機体のCG合成はせず、精密なスケールモデルを使用。VFXでその効果を高めはしつつも、極限までCGには依存しない制作スタイルを貫いて」表現したというのだから、こだわりぶりに驚かされる。使われるのは無論、1944年当時の戦闘機。クラシック音楽でいうなら「ショパン国際ピリオド楽器コンクール」みたいなことをしているわけだ。

画像1: 観る者を1944年の空中戦へと案内! ヴィンテージ機種満載、ド迫力の一作『KG200 ナチス爆撃航空団』

 舞台はナチス占領下のフランス。戦うのはひとりのアメリカ空軍パイロットと、ドイツ空軍秘密部隊。ちなみにナチス・ドイツによるフランス占領は1940年6月22日から1944年8月25日まで続いた。B-17爆撃機の護衛任務についていた大尉は、ドイツ軍に囚われた仲間たちを救出するべく単身、敵陣へ突入する。狂気のナチスに入り込むなど、並大抵の勇気ではないできないことだが、そこで彼はナチスの恐るべき計画「ロンドン壊滅」と「新型爆弾の開発」を知ってしまう……。だがこれ以降の展開は、観る者の人種や国籍によって大きく感じ方が変わってくることだろう。

 ナチスが絡む以上、「ユダヤ弾圧」も出てくる。やはり私は日本人なので、「そういうアメリカもマンハッタン・プロジェクトをやっていたよな!」と言い返したくなる気持ちをぬぐえないものの、それはそれとして、同じような年代の若者たちが、個人的には何の恨みがあるわけではなく、正常な世の中であればどこかで出会って友人になれる可能性があったかもしれないのに、どこだかのお偉方の指示で殺し合うのはおかしい。が、そう深く思いつつも、空撮のスケールの大きさ、爆音の威力、「勝って生き抜いてやるぞ」的パイロットの鋭い目線等、この映画には惹かれるところが多々ある。

画像2: 観る者を1944年の空中戦へと案内! ヴィンテージ機種満載、ド迫力の一作『KG200 ナチス爆撃航空団』

 ボーイングB-17Gフライングフォートレス、ノースアメリカンP-51Dムスタング、スーパーマリン・スピットファイアMk.9、ホーカー・ハリケーンMk.12、ノースアメリカンB-25Jミッチェル、メッサーシュミットBf109Gなどなど、こういった機種名を見て心ときめくひとには、何はなくともお勧めしたい一作である。監督・原案マイケル・B・チャイト、脚本ティモシー・リッチー。

映画『KG200 ナチス爆撃航空団』

3月3日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか全国ロードショー

監督・原案:マイケル・B・チャイト
脚本:ティモシー・リッチー
出演:ジェームズ・マズロー、トレヴァー・ドノヴァン、ジョン・ターク、マイケル・ウェイン・フォスター、ジョン・ウェルズ
提供:ミッドシップ、コムストック?グループ
配給:ミッドシップ
協力:コムストック・グループ
特別協力:文林堂『航空ファン』
2022年/アメリカ/英語/130分/カラー/スコープサイズ/原題:WOLF HOUND/日本語字幕:宇治田智子
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