「オレンジ計画」の時点でもう日米戦争が相手側のなかで一方的にプログラミング済みだったとしても、それでもミッドウェイぐらいで引き返していたら、少なくとも1945年の惨事はなかった。

 自分が生まれる何十年前の同じ日に東京が火の海だった、そう知ったのはおそらく中学生ぐらいの頃だ。東京都江東区の「東京大空襲・戦災資料センター」にも足を運んだことがある。写真もすさまじかったが、文章やイラストの生々しさにも想像力が増幅させられて、見終わったあとに気分が落ち込んだ。だが知っておくべきことがここにあるのだ、という知見も蓄積された。

画像1: 「日の出までに10万人以上の死者を出し、東京の4分の1が焼失した史上最大の空襲」に今、あらためて迫る『ペーパーシティ 東京大空襲の記憶』

 今回、この空襲をテーマに作品を監督したのは、オーストラリア出身の映画監督エイドリアン・フランシス。年々少なくなるだけの東京大空襲の生存者たちを丹念に取材し、証言を引き出していく。焼け野原から70数年を生き抜いてきた老人たちにとって、思い出したくもない、つらい経験であることがいうまでもない。生存者たちが、「もう忘れたい」と「それでも伝えていかなくては」という思いのはざまで、どれほど揺れ動いたか、想像に余りある。そこを、あえて、戦争を知らない後進たちのために、口にしてくれたのだ。なんと尊いことか。ところで筆者は、人間が愚かさを回避するほぼ唯一の方法は歴史から学ぶことではないかと思っているのだが、その印象がますます強まる一作であったとも告白したい。

画像2: 「日の出までに10万人以上の死者を出し、東京の4分の1が焼失した史上最大の空襲」に今、あらためて迫る『ペーパーシティ 東京大空襲の記憶』

 それにしてもアメリカは、原子爆弾の投下も含めて、こんなひどいことを、(基本的に白人の国である)イタリアやドイツにはしたのかしらん。東京ドキュメンタリー映画祭2022で観客賞を受賞したこの作品、今度はみなさんが観客になり、時代の痛みを感じる番だ。

映画『ペーパーシティ 東京大空襲の記憶』

2月25日(土)より シアター・イメージフォーラムにてロードショー、全国順次公開

監督:エイドリアン・フランシス
配給協力:スリーピン
2021年|80分|オーストラリア|日本語、英語
(C)2021 Feather Films Pty Ltd, Filmfest Limited

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