ネットでの動画配信が主流になりつつある昨今、でもホームシアターで楽しむならやっぱりフィジカルメディア。実際に、ビットレートの有利さや細かな仕様、特典などでそのメリットを感じることも多いはず。本連載では、そんなディスクメディアをホームシアターで再生、インプレッションを紹介する。今回は松田優作主演『蘇える金狼』『野獣死すべし』の2タイトルを、酒井俊之さんにチェックしていただいた。
1970年代から80年代にかけて松田優作が主演したピカレスクロマンの人気作『蘇える金狼』『野獣死すべし』が「4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】」で登場。先にリリースされている『犬神家の一族』や『戦国自衛隊』と並ぶ、クォリティの高い新たな4Kマスターが当時の映画館体験を超える喜びを与えてくれる。角川映画ファン必携の、まさに “フィジカル万歳” な仕上がりだ。
映像マスターは、遡ること2014年に4K Scaning Blu-rayを制作する際に仙元誠三撮影監督が監修したグレーディングのパラメーターデータがベース。さらに劇場公開当時のタイミングデータ、過去のマスターや上映用フィルムなども参照しながら新たに4KレストアとHDR化を施したニューマスターが作成されている。グレインがやや目立っていた4K Scaning Blu-rayの2Kマスターとは趣を異にし、4Kデジタル修復版はフィルムの粒状感も抑えめになって滑らかな画調だ。それでいてコントラストの高い力強いトーン。脂ぎった『蘇える金狼』とクールな『野獣死すべし』といったイメージである。
とりわけ『蘇える金狼』はUHDブルーレイ化にあたって、挿入歌や劇伴がこれまでになくファンキーな音色になっていて驚かされる。新たに制作されたドルビーアトモス音声は驚くほどに中域がモリモリ。これはもう冒頭の角川フェニックスロゴのサウンドロゴからして違うことが『戦国自衛隊』版と聴き比べてみるとよくわかる。サラウンドのサウンドデザインは『戦国自衛隊』の方が面白いが、『蘇える金狼』はフロントの量感重視。エネルギッシュなアクション映画にふさわしい、押し出しが強い仕上がりだ。こういったドルビーアトモス音声の活かし方もあるのだと参考になった。
いまKADOKAWAでは2026年に迎える “角川映画50周年” に向けて、往年の角川映画の4K UHD化プロジェクトを粛々と進めている。手間暇をかけた4Kデジタル修復版のマスター制作はもちろんのこと、これまで日の目を見ずに埋もれていた映像素材や未公開音源、発表されていなかった大量のスチール写真なども同梱特典の資料集に収めるなどファン目線に立ったパッケージ化を続けている。とはいえ、角川映画も名作・人気作・ヒット作ばかりが揃っているわけではない。いまのこの姿勢をどこまで貫けるか。正念場はまだまだこれからだ。
『蘇える金狼 4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】』 ¥12,980(税込)
●発売・販売:KADOKAWA●1979年/日本/カラー/ビスタ●収録音声(UHDブルーレイ):日本語2022 Remixドルビーアトモス、日本語4.0ch、日本語2.0ch(モノーラル)●本編131分
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『野獣死すべし4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】』 ¥14,080(税込)
●発売・販売:KADOKAWA●1980年/日本/カラー/ビスタ●収録音声(UHDブルーレイ):日本語2.0ch(モノーラル)、日本語2000 Remix 5.1ch DTS-HD MA、他●本編118分
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