「アナログ特撮を守っていきたい、後世に伝えたい」。原作・監督・脚本を担当する石井良和の気概あふれる快作(怪作)、『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』が12月9日(金)から上映される。先に米国のカンザスシティ・アンダーグラウンドフィルムフェスティバルで上映され、最優秀長編映画 審査員賞に輝いた一作だ。

 主人公の大木勇造は、大手企業からリストラされた元サラリーマン。謎の企業「ギャラクシー商会」に再就職するものの、そこに勤めるのは銭ゲバ社長、会員数ゼロのフィットネス講師、廃品回収とは名ばかりのゴミ泥棒、ギャンブル狂の営業担当、着ぐるみの中に引きこもる男など、濃すぎる面々ばかり。

 今回、インタビューに登場いただいた櫻川ヒロは、この映画で共同プロデューサーを務め、さらにグラビアアイドル・小田奈津子役を演じるばかりか、題字、タイトルデザイナー、衣装係としても活躍、加えて自分のペットであるフェレットの「ルル」を起用するなど、多方面で貢献しているひとりだ。名作特撮映画のDVDを見たり、『特撮のDNA』展に足を運んでイメージを練ったという彼女の言葉を紹介したい。

画像1: 映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』でプロデューサーを担った「櫻川ヒロ」にインタビュー。「アナログ特撮のすごさを実感しました」

――プロデューサーとして、『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』に関わるようになったきっかけを教えていただけますか?
 最初は制作のお手伝いをしていたのですが、紆余曲折あって(笑)、私が共同プロデューサーで入ることになりました。“私がやるんですか?”という感じでしたね。逐一監督に確認しながら、ただただがむしゃらにしがみついて、最後まで創り上げた感じです。私は役者がメインなので、映画を制作するのは今回が完全に初めてで、分からないことだらけの中でやってきました。

――櫻川さんが携わるようになった時、企画はどのぐらい進んでいたのでしょう?
 脚本や構想は固まっていましたが、ロケハンは全く始まってない状態、やっとこの映画を作っていくという時でした。私は主に衣装面で意見を出すことが多く、“このキャラクターならこういうイメージで”と伝えたりしていました。

――グラビアアイドル・小田奈津子役を演じたいきさつは?
 彼女(小田)は猫島(ギャラクシー商会の社員で犬のぬいぐるみをかぶっている)の妄想シーンに登場する子なんですけど、監督から“この役はヒロくんで”と言われて決まりました(笑)。撮影は結構たいへんで、スペースが必要だったこともあり、水着姿なのに屋外で、しかも駐車場みたいなところで撮ったんです。あまりない体験をしたという意味では、楽しかったです。

画像2: 映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』でプロデューサーを担った「櫻川ヒロ」にインタビュー。「アナログ特撮のすごさを実感しました」

――タイトルに“特撮”とつくだけあって、本格的な着ぐるみ(ヴァイラスキング)も登場します。まず、特撮部分の準備はどうでしたか?
 今回はミニチュアがなかったので、細かい造作をする必要がなかったのですが、夏の炎天下の作業になりましたから、現場では氷と水分を切らさないことは徹底しました。一方で、カメラがオーバーヒートして、撮影が中断してしまうこともあって、なかなか難しかったです。

――ヴァイラスキング(着ぐるみ)の用意は?
 デザインが上がってから、着ぐるみの完成まで1、2ヵ月はかかりました。最初にデザインを3つほど作ってもらい、その中から監督と相談して選びました。今回はコロナ禍がテーマのひとつだったので、新型コロナウイルスをモチーフにした怪獣がヴァイラスキングになりました

画像3: 映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』でプロデューサーを担った「櫻川ヒロ」にインタビュー。「アナログ特撮のすごさを実感しました」

――主役の大木勇造は、今の時代では破天荒な感じですが、その人物造形について教えてください。
 大木に限らず、どのキャラクターについても、監督曰く、自分の分身みたいな感じで考えていたそうで、その一人ずつに、抜きんでた変人の部分を当て込んだと仰っていました。作品の根底にはコロナ禍があって、そのコロナによって、生活が変わってしまった人たちを描いたのが、本作になります。

画像4: 映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』でプロデューサーを担った「櫻川ヒロ」にインタビュー。「アナログ特撮のすごさを実感しました」

――特に強く印象に残っているシーンを挙げていただくと?
 ラストの、全員で歩いてくるところです。結構な大通りというか車幅が広いところで撮影したので、人の足止めをしないといけない範囲がすごく広かったのは、たいへんでした。おまけに、スタッフと演者の距離が遠いこともあって、意思の疎通がしにくくて、ずっと声を張りあげていました。でも、たいへんだった分、いいシーンになったと思っています。

画像5: 映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』でプロデューサーを担った「櫻川ヒロ」にインタビュー。「アナログ特撮のすごさを実感しました」

 一方で残念な点もあって、ネタバレになるので詳しくはお話できませんが、実はそこであるものを降らせようとしていたんです。でも、高所作業車が借りられず、降らすことができなかった……。いいシーンになりましたけど、心残りもありました。

――今回、「アナログの特撮を守っていきたい、伝えていきたい」と訴える石井監督と一緒に仕事をしての感想は?
 ほぼほぼ、(アナログ)特撮の作品に触れずに生きてきましたから、本当に未知の世界ではあったのですが、監督からいろいろ教わっていくうちに、“特撮ってすごい”って感じるようになりましたし、“守っていかないといけない”という思いも湧いてきました。やはり“味”がありますよね。本作の製作を通して私の中でも、こういう撮影(特撮)をしてみたいという願望がいくつも湧き上がってきましたので、また石井監督と一緒にアナログ特撮を作る機会があったら、頑張りたい。そう思っています。

――さて、12月9日の公開が迫ってきました。今の心境は?
 毎日ソワソワしてます。お客さんが来てくださるのかという不安もありますけど、来てくださった方が楽しんでいただけるかどうか、その思いだけで作ってきましたから。全力で楽しんで、笑って、くだらなかったねって言ってくれればうれしいです。大木勇造に比べれば、私はまだマシだ! ぐらいの感じで、楽しんで帰ってもらえたらと思います。

――最後に、今後の目標を教えてください。
 基本は女優なので(笑)、舞台と映像(映画・ドラマ)を、どちらも楽しんでやっていきたいですし、恐らく一生続けていくんだろうなって思っています。

画像6: 映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』でプロデューサーを担った「櫻川ヒロ」にインタビュー。「アナログ特撮のすごさを実感しました」

映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』

2022年12月9日(金)より池袋HUMAXシネマズで劇場公開

<キャスト>
藤田健彦、町田政則、藤崎卓也、斉木テツ、草場愛、前田ばっこー(瞬間メタル)、豊田崇史、行永浩信、中條孝紀、石井花奈、杉山裕右、野村宏伸

<スタッフ>
製作・脚本・監督・特技監督:石井良和 脚本:田中元 撮影:高橋義仁 録音:飴田秀彦 怪獣造形:佐藤大介 製作:チーム・ベター・トゥモロー 配給:Cinemago 配給協力:Giggly Box 宣伝協力:todoiF、モクカ
2022年/日本/89分/DCP/カラー/16:9/5.1chステレオ
(C)TEAM BETTER TOMORROW

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