コルグは、同社が提唱しているインターネット動画配信システム「Live Extreme」の最新版となる「Version 1.8」をリリースした。
コルグが2020年9月に発表したLive Extremeは、オーディオ・クロックを配信システムの軸とした「オーディオ・ファースト思想」や、ロスレス/ハイレゾ・オーディオに対応した高い音質が好評を博し、既に30を超えるコンサートやイベントの配信に採用されている。
しかしこれまでLive Extremeを視聴するには15Mbps以上の高速インターネット環境が必要で、4G回線など低速なインターネット環境でも視聴できるようにしてほしいという要望が多くあったそうだ。
低速インターネット環境での視聴を実現する方法として、一般的な動画配信では「ABR
(Adaptive Bitrate)」技術が用いられている。これはライブ会場からアップロードされた映像と音声から、ストリーミングサーバー内で様々なビットレートのストリームを生成し、個々のユーザーの回線速度に応じて、配信ビットレートを切り替える機能だ。
ABRは低速回線の視聴者でも映像や音声が途切れにくくなるという利点がある反面、ストリーミングエンコーダー内で既に非可逆圧縮されている映像や音を、ストリーミングサーバー内で再圧縮することになり、画質や音質が著しく劣化してしまうという問題点があった。
これに対し、Live Extreme Encoder version 1.8では「Direct ABR」を新搭載している。Direct ABRとは、SDIやHDMIから入力された非圧縮映像からLive Extreme Encoder内部で、最大4系統のAdaptive Bitrate映像を直接生成し、サーバーにアップロードするもの。これにより配信サーバー内で再圧縮する必要がなくなるため、同じビットレート映像であっても、従来システムより高画質な映像が配信できるという。Direct ABRはLive Extremeを視聴可能なユーザー数を増やすだけでなく、ライブ配信の高画質化を実現する画期的な技術となっている。
なお「Direct ABR」が適用されるのは映像のみで、音声は従来通りFLACやALACによるロスレス/ハイレゾ配信のみに対応している。
そして、9月11日に開催される「Immersive voices - dip in the pool 2022 live」からLive Extreme Encoder version 1.8が正式運用されることが決定している。同公演は渋谷WWWで開催され、映像は最大1080pを含む、4段階のABRで配信予定。低速インターネット環境でも安定して楽しめるそうだ。
「Live Extreme Encoder version 1.8」の概要
●エンコード対応フレームサイズ (px):3840×2160, 2560×1440, 1920×1080, 1280×720, 854×480, 640×360, 360×240
●エンコード対応フレームレート (fps):60/59.94/50/30/29.97/25/24/23.98/15/14.98
●エンコード対応ビットレート:200kbps〜65Mbps
●音声の4chステレオ配信に対応(FLACのみ)
●映像と音声の同期方法として、最大500msの映像の遅延にも対応(音声遅延を伴う大規模な配信音声マスタリングにも対応可能)