ネットでの動画配信が主流になりつつある昨今、でもホームシアターで楽しむならフィジカルメディアの魅力も忘れたくない。実際に、ビットレートの有利さや細かな仕様、特典などでそのメリットを感じることも多いはず。本連載では、そんなディスクメディアを愛する方々に、ご自宅のシアターで気になる作品を体験してもらい、その楽しさを紹介していく。第一回はスポコン作品を愛する潮晴男さんお薦めの一本だ。(StereoSound ONLINE編集部)

 貧困や人種差別・偏見を乗り越えて、二人のスーパーテニスプレーヤーを育て上げた実話の映画化である。

 スポーツを題材にしたハリウッド作品はたくさんあるが、野球やアメフト、バスケットボール、ボクシングが主だったもので、テニスを題材にした作品は少ないと思う。原題の『キング・リチャード』が示すように、主人公は二人のスーパーテニスプレーヤー、ビーナスとセリーナ姉妹を育て上げたリチャード・ウィリアムス(ウィル・スミスが好演)である。

画像1: 『ドリームプラン』ブルーレイのドルビーアトモスサウンドを、浴びるように楽しむ。ハードコートらしい、迫力ある試合をダイレクトに感じた【フィジカル万歳 01】

 何事も自ら思い描いたプラン通りに実行しようとするリチャードは、周囲はもちろん、時として家族との間で生まれる軋轢にもがく。しかしながら不屈の精神をもって障害に立ち向かう中から、独自の育成法にやがて光が差し込んでくる。

 野球のように投球シーンやホームランを打つといった劇的なカットはないが、二人の娘が成長するにつれ、コートで戦う彼女たちの姿がリアルに描かれているし、強烈なサーブやレシーブを受ける場面では思わず手に汗を握る。

 監督はレイナルド・マーカス・グリーン、撮影はロバート・エルスウィット。アリのアレクサにパナビジョンのレンズを用いて3.4K収録した素材を4Kにアップコンバートして上映した素材を、2Kブルーレイとしてリリースしている。

 メインキャストが黒人ということもあり、褐色の肌色の表現が実に難しい。しかも一人ひとり微妙に色合いが異なるので、再生時のポイントはこうした肌色の階調性や色彩の違いをどこまでていねいに描き出せるかだ。

 実際に視聴して、本当に肌色再現はたいへんだと思った。ビーナス役のサナイヤ・シドニーはやや浅めの褐色だし、セリーナ役のデミ・シングルトンは若干深めの色づきだが、こうした差異は低輝度部の階調表現力が充分でなければ出てこない。本ディスクではそんな微妙なニュアンスまでしっかり楽しむことができた。

画像2: 『ドリームプラン』ブルーレイのドルビーアトモスサウンドを、浴びるように楽しむ。ハードコートらしい、迫力ある試合をダイレクトに感じた【フィジカル万歳 01】

 またデイライトのシーンにおけるハイライトの伸びが爽やかさを演出する。本ディスクはBDなのでSDR収録だが、逆光シーンにおける光の回し方とともに撮影の巧みさが感じ取れる。

 音声はドルビーアトモス収録で、わが家でもこの音声を選択した。エンドロールにアトモスのクレジットはないので(一部劇場でドルビーサラウンド7.1ch上映の記述あり)、もしかしたらパッケージだけの特典なのかもしれない。

 サウンドデザインはリチャード・キングが担当しているが、あざとさはなく実に自然な仕上がり。時折LFEが活躍する程度で派手な演出はされていない。ダイアローグ劇であるため、声が重要な鍵を握るが、親子で口争いをするシーンでも感情の起伏がよく捉えられているように感じた。

 気になるドルビーアトモスの効果は、空間の広がりを伝え、ハードコートでの試合では歓声とともにボールの軌跡を音がサポートする。

 家族愛に包まれた比較的静かなスポコン物語だが、涙腺が緩むシーンもあるのでご用心。144分の長編だが最後まで没入して楽しむことのできる作品である。ビヨンセの歌がエンディングに登場する本人たちの映像に彩を添えている。

潮さんの「ニコタマ劇場」再生システム

画像3: 『ドリームプラン』ブルーレイのドルビーアトモスサウンドを、浴びるように楽しむ。ハードコートらしい、迫力ある試合をダイレクトに感じた【フィジカル万歳 01】

●プロジェクター:JVC DLA-V9R
●スクリーン:スチュワート スノーマット(115インチ/シネコス)
●UHDブルーレイプレーヤー:パナソニックDP-UB9000
●AVセンター:デノンAVC-A110
●パワーアンプ:パスXA-100(L/C/R用に3台)、他
●スピーカーシステム:ATC SCM100sl×3(フロント、センター)、他

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