コロナ禍による延期から2年、ついにこの時がやってきた。“新世代ヴィンテージ・ソウル・ミュージックの大本命”、ドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズの初来日公演が南青山「ブルーノート東京」の“The EXP Series”の一環として開催されたのだ。あの、聴き手を包み込むような音世界がナマで聴けると思うと、いてもたってもいられず、7月14日の初日ステージに足を運んだ。
バンドの結成は2012年、アメリカ中西部のインディアナ州ブルーミントンにて。来日メンバーはリード・ヴォーカルのドラン・ジョーンズ、ドラム&ヴォーカルのアーロン・フレイザー(ソロ・アルバム『イントロデューシング・・・』も出している)、ギターのブレイク・レイン、ベースのマット・ロミー、キーボードのスティーヴ・オコンスキーの5人だ。60~70年代ソウル・ミュージックへの愛をむき出しにしつつ、決してなぞりにならないレパートリーのほとんどは、アーロンが作曲している。全員、発する響きがとんでもなく分厚い。そして“ポケット”が深い。歌詞のニュアンスとメロディの美しさを届けることにマインドを捧げ、全員がひとつになって創造にいそしんでいる印象を受けた。時にメロウ、時にディープな世界に、筆者はハイ・レーベル(アメリカ南部の都市・メンフィスのレコード会社。1970年代に大きな人気を誇った)の音作りに通じる親しみを覚える。
初日のファースト・セットでは、計17トラックを披露。「ラヴ・ウィル・ワーク・イット・アウト」、「モア・ザン・エヴァー」、新定番といっていいであろう「シー・オブ・ラヴ」、ミュージック・ビデオも話題の「ウィッチュー」など、ニュー・アルバム『プライヴェート・スペース』からのナンバーもしっかり楽しめた。ドラン・ジョーンズの歌声は“抑え”と“解放”のバランスが心憎いばかりで、ときにマイクを口から離してシャウトし、生の歌声を場内に響かせた。ファースト・アルバムからの「キャント・キープ・マイ・クール」では“Hit Me”とシャウトしながら、オーティス・レディングやジェイムズ・ブラウンのライヴ盤のように何度も何度もブレイク(意図的に生み出す空白部分)を繰り返しつつ、観客からさらなる熱狂を引き出してゆく。猛烈につややかなファルセットの持ち主、アーロン・フレイザーもドラムの叩き語りに加え、「トゥー・メニー・ティアーズ」ではスタンド・マイクの前に立って熱唱した(この曲に限ってドラムはブレイク・レインが担当)。
“The EXP Series”は、シーンを牽引していく可能性を秘めたアーティスト達をブルーノート東京が紹介する企画で、当公演が第38弾となる。現在進行形の勢いの持ち主に最大限の関心を持つ音楽ファンにとっては毎回が垂涎のプログラムであると断言できる。ドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズの一日も早い再来日と、“The EXP Series”の明るい未来に思いを馳せながら、とてつもなく幸せな気分で家路についた。
撮影:石橋純