XPERI Corporationは、同社最新技術の展示・発表を行う「XPERIプライベート展示会」を開催した。
同社は、家庭用機器から車載、劇場といった様々な分野で快適な体験を可能にする技術を発明、開発、提供するテクノロジーカンパニーだ。2年ほど前に誕生し、StereoSound ONLINE読者にもお馴染みの「TiVo」「IMAX Enhanced」「DTS」「HD Radio」といったブランドの技術も、現在はXPERIが提供している。
日本では2019年以来のプライベート展示会(前回はTiVoの展示会として開催)とのことで、その間に開発された新技術も並んでいた。またDTSの技術も同時に展示されていたことも新しい。
まずTiVo関連では、北米で発売中のストリーミングデバイス「TIVO STREAM 4K」がデモされていた。これはHDMI端子につないで使うアイテムで、アンドロイドOS上で動作する。Netflix、Amazon Prime Video、Disney+などの配信サービスに対応済みで、4K/HDRやドルビーアトモスの再生も楽しめるという。
さらにTIVO STREAM 4Kでは北米で配信されている様々なペイチャンネルの視聴にも対応している。そこにはCBSニュースやFOXスポーツなども含まれており、これらはテレビ放送と同様にリアルタイムで視聴することになる(サービス側が対応しているコンテンツについてはStart-over=見逃し再生もできる)。
この他に、「TIVO+」というTIVO STREAM 4Kを購入したユーザーが自由に使えるサービスも準備されており、ここでは150ほどのチャンネルが無料で視聴できる。
そしてTIVO STREAM 4Kのもうひとつの特長として、音声によるコンテンツ検索が充実している点があげられる。これはTiVoが以前からケーブルテレビのSTB(セットトップボックス)等で展開してきた機能をストリーミングデバイスに搭載したものとなる。
具体的には、付属のリモコンに番組・作品名やキーワードを話しかけると、該当するコンテンツを探して、表示してくれる。
例えば「Show James Bond's movie」といえば「007」のシリーズを選んでくれるのだが、実は「ジェームス・ボンド」は役名なので、他の同様の音声検索では007シリーズに絞ることが難しい場合もあるそうだ。TiVoでは以前からこういった曖昧な検索ワードについても独自のアルゴリズムで対応しており、映画の登場人物名でも確実にヒットしてくれる。
さらに「with Pierce Brosnan」と条件を追加でき、その場合はピアース・ブロスナンの出演作を選んでくれるという。その他にも「I’m your father」「I’ll be back」といった名台詞で映画を探すこともでき、前者を試してもらったところ、きちんと『帝国の逆襲』が表示されていた。
TIVO STREAM 4Kは北米では30ドル前後で販売されているという。日本でも一部コンテンツの視聴は可能とのことだが、アクセスエリアや日本語字幕等が準備されていないなどの制約はある。
TiVoの技術としてはその他に、放送と配信の融合を進めるインターフェイスを提案している。もともとTiVoは電子番組表のGガイド技術を提供しているが、今回はSTBの番組表に「過去番組へ」という項目が追加された。
ユーザーがここを選ぶと、各チャンネルの放送済み番組の中から見逃し配信されているコンテンツが選べるようになる。本機能は関東、関西を中心に展開されており、これらのエリアのケーブルテレビ用STBに実装されているそうだ(現在対応している見逃しサービスは『TVer』と『TELASA』)。
しかもこの操作はSTBやテレビのメニューからできるので、リモコンがあればシームレスに放送と配信を行き来できることになる(再生デバイスをネットワークにつないでおく必要はあり)。見逃し配信のメニューには、番組詳細、出演者一覧、関連シリーズといったデータも表示され、そこから気になる番組を探してもいい。
その他に、車載向けとしてカメラを使ったユーザー識別機能もデモされていた。この機能ではラジオ放送だけでなく、無線LAN(スマホ等のテザリングや車自体の無線機能)経由で各種サービスとつないで様々なソースを楽しむことができる。
日本国内では昨年3月に「DTS AutoStage」としてradikoとの統合がスタートしており、メルセデス・ベンツの新型Sクラスユーザーに向けて、放送局のロゴ、放送中の番組名、出演者情報、ライブステーションガイドなど、新しいエンタテインメント体験を届けている。
展示会では、ダッシュボードに内蔵したカメラでドライバーの顔や表情を認識し、お薦めのラジオ番組や音楽を選ぶデモも展示していた。表情は「Natural」「Happy」「Sad」など7つに識別され、ユーザーの気分に応じたレコメンドをしてくれるのも特長だろう。
なおこの機能ではユーザーの表情の他に、頭の傾き、位置、目の動きといった情報も解析している。これらの情報を元にドライバーの状態を把握することで安全運転のサポートや、自動運転が普及した場合にも充実したエンタテインメント提供を可能にしたいという狙いもあるのだろう。
ちなみに本機能は複数の人物の解析も可能で、ドライバー席だけでなく、助手席やバックシートに座っている人数や表情も識別し、それぞれに最適なコンテンツが提供できることになる。誰が電話をしているかなども分かるので、脇見運転防止などの注意喚起にも役立つだろう。
XPERIのオフィスにはサラウンド再生ができる視聴室も準備されている。今回はそこで「IMAX Enhanced」機能を内蔵したテレビのデモも体験させてもらった。
IMAX Enhancedは、4K/HDRのイメージ、DTS:Xサウンド(現時点の日本国内サービスではドルビーを使用)、上下情報の多い映像(アスペクト比1.90:1)といった特長を持ったコンテンツが配信で楽しめるもので、ソニーやハイセンス、TCL、フィリップスのテレビ等に採用されている。Disney+などの動画サービスでも一部で採用されており、今後様々なプラットフォームで楽しめるようになる見込みという。
加えてPlay-Fiを採用したサラウンドシステムの体験も可能だ。Play-FiはDTSが提唱しているワイヤレス伝送技術で、テレビやサウンドバー、AVセンターなどの核になる機器から対応スピーカーに信号を無線で送り、遅延のないワイヤレスサラウンドを実現する。無線伝送は2.4GHz/5GHzのいずれかの帯域で、DTSをベースにした圧縮技術を使っているそうだ(最大で192kHz/24ビット/2chの伝送に対応)。
各スピーカーのアサインはメニュー画面やアプリから簡単に可能。普段は別の部屋でステレオ再生用に使っているPlay-Fi対応スピーカーを、サラウンド再生したい時だけリビングに持ってきて5.1chを楽しむといった使いこなしもできる。
TiVoでは、これまでも様々な独自技術によって快適なテレビ試聴を提供してきた。今回そこにDTSやIMAX ENHANCEDといった幅広い知見が加わったことで、ホームシアター全般や車載分野でもより充実したエンタテインメント体験の実現が期待できる。オーディオビジュアルファンとして今後の同社の提案に注目したい。