カラリと晴れ渡った音調であり微細な情報が鋭敏にふるまう
これは、トランス類を内製する強みを生かしたトランス式アッテネーター採用のライン入力プリアンプ。減衰量は31ステップであり、最初の5ステップは3dB隔、次の5ステップが2dB次の18ステップでは1.5dB、最後の3ステップは1dBという不均等な減衰量にて限られたタップ数での実用性を確保する。
アッテネーターは出力側にあり、その前に5極真空管C3mによる1段増幅が設けられている。ゲインは17dBで2.5:1の結合トランスを負荷にしている。つまり抵抗素子によるエネルギー損失を避ける設計思想だ。増幅段が固定バイアスというのも自己バイアス抵抗による損失を防ぐためだろう。入力の1つはホームシアター用として音量調整しない仕様。また増幅段をパスするパッシヴモードもある。増幅段用電源部は整流管6CA4とチョークコイルを採用。XLRの入出力端子はアンバランス接続だ。本体には操作部がなく、分厚くて重いリモコンで操作する。
カラリと晴れ渡った音調であり微細な情報が鋭敏にふるまう。純度感のある音場空間に透視図遠近法の音の配列が見えるようで、これはたしかに音量調整可能な低損失のインピーダンス変換装置だと納得する。ソフトの傾向は選ばず、現代録音の高分解能も古典録音のしっとり感も受け止めつつ、わずかに細部を補筆して明瞭度を確保する趣向。パッシヴモードよりアクティヴモードのほうが音の生気を味わえた。
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