2022年でデビュー33年目を迎える東京スカパラダイスオーケストラ。近年の活躍は目覚ましく、オリジナルはもちろん、様々なアーティストとのコラボ作品も積極的にリリースしている。またライブでも『ルパン三世のテーマ』(通称、スカパラのルパン)がスカパラアレンジで演奏され、会場を大きく盛り上げているという。
今回はそんなスカパラでパーカッションを担当している大森はじめさんをStereoSound ONLINE視聴室にお招きし、SACD/CD『ルパン三世 1977〜1980ORIGINAL SOUNDTRACK』の音を体験いただいた。御自身が演奏したこともある楽曲をSACDで聴いて、大森さんはどのように感じたのだろうか。(取材・まとめ:泉 哲也)
――今日はおいでいただきありがとうございます。大森さんは、音楽はもちろん映画もお好きとのことで、これまでも度々取材にご協力いただいています。調べてみたら、2009年にブルーレイ『AKIRA』が発売された時にも、HiVi視聴室で大画面とサラウンドを体験してもらっていました。
大森 そうでしたね、あれも楽しかったなぁ。当時は自宅で5.1chシステムを使っていたのですが、今は2歳の娘がいるのでスピーカーを出しておくことができないんです。それが寂しくて……。
――そういうことなら、今日は思い切りオーディオを楽しんでいって下さい。再生システムには、SACD/CDプレーヤーにデノン「DCD-A110」、AVセンターに同じくデノン「AVC-X8500HA」を使います。後ほどブルーレイもご覧いただきますので、BDプレーヤーのパナソニック「DP-UB9000」とプロジェクターのビクター「DLA-V9R」、キクチの120インチスクリーンも準備しました。スピーカーはイギリス、モニターオーディオ「PL IIシリーズ」の5.1.4構成です。
大森 相変わらず凄いシステムですね。これは楽しみです。
――まず、11月に発売された『S.O.S.[Share One Sorrow]』をお聴き下さい。これはスカパラの最新作ということでいいんでしょうか?
大森 はい、CDとブルーレイが2枚ずつ入ったミニアルバムになります。コロナ禍で、ライブに足を運べなかった方がたくさんいらっしゃいました。そんな人にも観てもらいたいという思いも込めて、ライブ映像をカップリングしています。(編集部註: [CD+DVD盤] や [CD ONLY盤] もあり)
ライブに足を運べなかった人にも、楽しんでもらいたいという思いを込めました。
ミニアルバム『S.O.S. [Share One Sorrow]』が絶賛発売中
11月10日に発売された6曲入りのミニアルバム。CD DISC-1にはムロツヨシ氏演出・出演の舞台『muro式.がくげいかい』のテーマ曲で、ムロ氏をゲストボーカルに迎えて大きな話題となった「めでたしソング feat.ムロツヨシ」や「Make Your Sweet Memories」(東ハト『キャラメルコーン』50周年記念ソング)などを収録。さらにCD DISC-2には2021年7月2日に東京ガーデンシアターで行われた「Together Again!」ライブを収めている。
[CD+Blu-ray盤] には特典映像も多数収録。Blu-ray DISC-1は「めでたしソング feat.ムロツヨシ」等のメイキングビデオや2021年2月21日の新潟テルサでのライブが、Blu-rayDISC-2は、2021年7月2日に東京ガーデンシアターのライブ映像という豪華な内容だ。
[CD+DVD盤] はDVD DISC-1の内容に若干の違い(インタービューが一部未収録)はあるが、ライブ等はブルーレイと同一となっている。
『S.O.S. [Share One Sorrow]』
[CD+Blu-ray盤] CTCR-96051~2/B~C ¥7,700(税込)
[CD+DVD盤] CTCR-96053~4/B~C ¥6,600(税込)
[CD ONLY盤] CTCR-96055~6 ¥2,970(税込)
タワーレコードでもお求めいただけます! ↓ ↓
https://tower.jp/item/5251493/S-O-S--%5bShare-One-Sorrow%5d-%5b2CD+2Blu-ray-Disc%5d
――ムロツヨシさんとのミュージックビデオの撮影風景も入っていましたが、メンバーがみんなとても楽しそうで面白かったです。
大森 ありがとうございます。あれは現場も楽しかったですね。ムロさんは今回がCDデビューなんですよ。ブルーレイに収録したライブも、お客さんを入れることができた最初の公演だったので、メンバーも本当に楽しんでいました。
――CD DISC-1から、1曲目「S.O.S.」と4曲目「A Night In Tokyo」を再生しましたが、いかがでしたか?
大森 音が気持ちいいですね。楽器の分離感も素晴らしいです。各自の楽器の手元が見えるというか。1曲目のシンセパッドの広がりもひじょうに自然でした。今日のシステムも高品質なんでしょうが、スタジオでミックスして、最初にCDをかけた時の音が出ていました。
最近はCDプレーヤーを持っている人も減ってきて、どうしても配信やサブスクリプションは避けられない環境ですよね。でもCDと配信では再生するシステムが違っているはずです。ですので、僕らは配信用とCD用でミックスを変えています。というのも、CD用に仕上げた音をそのまま配信に使うと、出て欲しい音が聴こえないという経験があったのです。それもあって、配信用は圧縮する前提で音のバランスを仕上げておきたいと考えました。
――特に管楽器の高域などは圧縮音源では厳しいでしょうね。
大森 リバーブの気持ちよさは、スピーカーを使わないと体験できないことが多いんです。出てくる音が空気を通して伝送される、それが大事だと思います。一度この振動を感じてもらえれば、みんなオーディオに興味を持ってくれるんじゃないでしょうか。
――アーティスト自身がそこまで考えて音決めしていたとは、驚きです。今回の『S.O.S.』でもメンバーがミックスに参加していたのですか?
大森 もちろんです。毎回時間をかけてああでもない、こうでもないとやっています。僕らは、CDを何回も聴いて欲しいと思っています。だから、繰り返し聴いても疲れない音にしたい。音数が多くても疲れないで、でも低音の迫力はしっかりある。そんな難しいことに、エンジニアさんと一緒になってチャレンジしています。
――その意味では、CDはライブとは別の “作品” なんですね。
大森 そうなんです。だから、CDはスピーカーで空気振動を通して聴いて欲しい、そんな願いを込めて作り続けています。ファンの方には、今日のシステムは無理にしても(笑)、できるだけいい環境といい音で聴いてもらいたいですね。
――作り手がそこまで考えてくれるということは、オーディオファンにも嬉しいお話です。
さて今日は、SACD/CD『ルパン三世 1977〜1980 ORIGINAL SOUNDTRACK』を大森さんに聴いていただきたいと思っています。弊社では以前からオーディオファイル向けに録音のいい楽曲を集めたCDやSACDを発売してきました。このディスクもそのひとつになります。ちなみに大森さんはこういった環境でSACDを聴いたことはありますか?
大森 いえ、本格的なオーディオシステムでSACDをじっくり聴くのは初めてです。
――このディスクは全20曲を収録していて、テーマ曲が3バージョン含まれています。まずは1曲目「ルパン三世のテーマ(ルパン三世‘78)」から聴いていただきます。
大森さんも納得! かつてない“ルパンサウンド”を体験できる一枚です
Stereo Sound ORIGINALSELECTION Vol.12
『ルパン三世 1977~1980 ORIGINALSOUNDTRACK ~for Audiophile~』 ¥4,950(税込)
同作の中でも一番長いTVシリーズで、ルパン人気を決定づけたとも言える「PART2」。そのサウンドトラックから、大野雄二さんが手がけたテーマ曲や挿入歌、BGMなど20曲を厳選。貴重な当時のマスターテープからDSD変換を行なって、SACD化しました。また、ハイブリッド盤のCD層用も、アナログテープから同時にPCMに変換して別マスタリングを実施するという贅沢な工程を経ています。
テーマは “お気に入りのオーディオシステムで、繰り返し聴きたい最高のルパン”。手前味噌ながら、なかなかいい案配で実現出来たのではないかと自負しています。これまで聴いたことのないルパンのテーマを体験いただけるはずですので、ぜひ本ディスクをお求めの上、アナタのオーディオルームでお楽しみ下さい。
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大森 う〜ん、すごく生々しい音ですね。テーマを聴くだけで映像が浮かんできました。CD以上の情報量というか、アナログレコードっぽいニュアンスまで感じました。
僕は『ルパン三世 PART2』をリアルタイムで観ていた世代で、中学生の頃はルパンの筆箱を使っていました。このテーマも大好きでしたが、当時は音楽はそこまで気にしていませんでした。でも改めて聴くと、演奏もアレンジも本当に凄い。パーカッションがこんなに入っていたのかと驚きました。
これをテレビアニメ用として作曲した大野さんも凄いし、当時のミュージシャンもやっぱりうまいですね。サントラの録音がこのクォリティということが、驚異的です。
――では次に、7曲目「ルパン三世’79」と14曲目「ルパン三世’80」を再生します。
大森 あぁ、これも映像が浮かんだ! まさに極上、拍手です。これって1年ごとにアレンジを変えているんですね、そこも凄い。しかも「ルパン三世’79」ではシンセドラムを使って、「ルパン三世’80」ではビッグバンド風と、曲調をがらっと変えている。続けて聴くとその変化に驚きます。
イントロから変わっているから、違う曲を聴いているみたいです。アレンジが本当に凄いので、各パートの譜面もたいへんだっただろうなぁと素直に思いました。そこまでわかるというか、特に「ルパン三世’79」を聴いていて、ここに譜面があるように感じたのです。
SACDだとここまで細かい情報を再現できるんですね。改めて、当時はここまでやっていたんだ、こんな音まで入っていたんだという、新しい発見がありました。
――スカパラもライブで「ルパン三世のテーマ」を演奏していますね。スカ風のアレンジになっていますが、あれはメンバーで考えられたんですか?
大森 そうです。メンバー同士でここにリフを持ってきて、こんな風にロック・スカっぽくしよう、といった具合に話し合いました。ファンもみんな知っている曲なので、先日のツアーでも演奏したばかりです。若い方も楽しんでくれて、本当に幅広い世代で盛り上がっています。
当日の主な試聴機器(価格は税込)
●SACD/CDプレーヤー:デノンDCD-A110 ¥336,600
●UHDブルーレイプレーヤー:パナソニックDP-UB900 オープン価格
●プロジェクター:JVC DLA-V9R ¥2,200,000
●スクリーン:キクチホワイトマットアドバンス(120インチ/16:9)
●プリメインアンプ:デノンAVC-X8500HA ¥550,000
●スピーカーシステム:モニターオーディオPL300II ¥1,760,000(ペア、フロント)、
PLC350II ¥748,000(1本、センター)、PL200II ¥1,210,000(ペア、リア) 他
●サブウーファー:イクリプスTD725SWMK2 ¥528,000
スカパラのCDや『ルパン三世』のSACDを最高の状態で聴いてもらうために、再生機にはデノンの110周年記念モデル「DCD-A110」を準備した。これをStereoSound ONLINE視聴室常設の「AVC-X8500HA」にアナログ接続している。なお、スピーカー「PL300II」のパフォーマンスを最大限引き出せるよう、X8500HAはフロントL/Rをバイアンプ駆動に設定した。BS4Kの録画ディスクは、AAC5.1ch放送を5.1.4にアップミックスして再生している。
――13曲目の「ラヴ・スコール」も再生しましょう。これを歌っているサンドラ・ホーンさんも、SACDとしては初めての収録になるようです。
大森 懐かしいなぁこの曲も。もう、泣きそうです。でも、これサンディさんだったんですね。知らなかった。すっごく可愛らしい声ですね。
以前、サンディさんと一緒にライブをやっていたことがあるんですが、この曲を歌ってもらえばよかったなぁ。レゲエ風に演奏したら格好よかったでしょうね。
――『ルパン三世』では意外な人がヴォーカルを歌っていたりするんです。「スーパー・ヒーロー」はゴダイゴのトミー・スナイダーさんですよ。
大森 え、あのドラムの? ぜひ聴いてみたいです。
――では11曲目の「スーパー・ヒーロー」を再生します。
大森 曲は聴いたことがありますが、歌っているのがトミーさんとは知りませんでした。それにしても人選が凄すぎですよ。サンディさんもトミーさんも声が本当に綺麗だし、何より曲がいい。短いフレーズでも印象に残る、そこが素晴らしいですねぇ。
――BGMでは20曲目の「サンバ・テンペエラード〜C-DAG」も人気ですので、こちらもお聴き下さい。
大森 いや〜たまらない。リズムが抜群に気持ちいい。曲を聴きながら、これはスカパラで演奏すればいいのにと思いました(笑)。本当に当時の録音はいいですね、特にコンガの音が心地いい。曲もアレンジも “大野さんの音” なんですよね。これを全部アナログで録音していたんですから、もうそれだけで感動します。
――『ルパン三世』ファンの大森さんにSACDの音を気に入っていただけて、こちらとしても安心しました。
大森 ファンにとっては、当時の音をここまで鮮明に甦らせてくれたというだけで、嬉しいですよね。この音で『カリオストロの城』のサントラも聴いてみたいですね。
――最後に、東京オリンピック閉会式の4K放送を録画したディスクがありますので、120インチ+5.1.4サラウンドでご覧いただきたいと思います。
大森 うわ、大きいなぁ。それにここまで細かく観えるんですか? 自宅のテレビでBSハイビジョンの録画は観たんですが、まったく印象が違います。何だかぐっときちゃいました。
――私もたまたま4K放送を録画していたら、スカパラが登場したので驚きました。
大森 家族にも話してはいけないという契約でしたから、たいへんでした。全世界に生放送されるわけですから、その規模感や緊張感も半端じゃないのに、リハーサルは別のスタジアムだったので、国立競技場で演奏したのは本番が初めてだったんです。
――そんなにたいへんだったんですね。でも大森さんはアップで抜かれていましたが、とても楽しそうでしたよ。
大森 カメラマンがアメリカ人だったんですが、妙に波長があって、笑顔でポージングすると褒めてくれるんです。それが楽しくて、いい気持ちで演奏していました。それにしても、4Kだとこんなに大きく投写してもぼけないんですね、ちゃんとメイクしてもらってよかった(笑)。
――せっかくご自身が出演されたことですし、ぜひご自宅でも4Kを楽しんで下さい。
大森 そうですね。まさか4Kでここまで見え方が違うとは思いませんでした。現場のたいへんさを思い出して、うるうるしちゃいましたよ。映像も音もクォリティがあがると、新しい発見があるんですね。『ルパン三世』のSACDといい、東京オリンピックの閉会式といい、今日はいいものを体験させてもらいました。ありがとうございました。