去る11月18日、SONOSの最新サウンドバー「SONOS Beam(Gen2)」(¥59,800、税込)が発売された。同社「SONOS Beam」の後継機で、本体サイズ(W651×H69×D100mm)はそのままに、ドルビーアトモスのデコードに対応している。ストリーミングサービスのAmazon Musicでのハイレゾ音源(最大48kHz/24ビット)とDolby Atmos Musicの再生もできる多機能モデルだ。
搭載されたユニットは4つの楕円形フルレンジウーファーと1基のトゥイーターで、これを5台のデジタルアンプで駆動する。低音再生のためのパッシブラジエーターも搭載済みだ。ドルビーアトモスの再生にはイネーブルドスピーカーなどは使わず、新開発されたフェーズドアレイスピーカー処理によって天井方向の情報を再現しているそうだ。そのために電気回路を改善し、CPUの処理速度も40%アップしている。
今回Beam(Gen2)の取材機を借用できたので、いくつかのテレビと組み合わせて使ってみた。Beam(Gen2)の接続端子はeARC対応のHDMI入力1系統とLAN端子というシンプルな仕様だ。そのため、組み合わせるテレビの種類によって入力される信号が異なってしまうので、注意が必要だ。組み合わせるテレビごとの対応信号は以下の通り(ビットストリームでの再生。下位互換での出力は除く)。
1)eARC対応テレビと組み合わせた場合
ドルビーアトモス、ドルビーTrueHD、ドルビーデジタルプラス、ドルビーデジタル、リニアPCM
2)ARC対応テレビと組み合わせた場合
ドルビーデジタルプラス、ドルビーデジタル、リニアPCM
3)ARC非対応テレビと組み合わせた場合
ドルビーデジタル、リニアPCM ※付属の光デジタル→HDMI変換アダプターを使用
まずは視聴室常設の有機ELテレビ、レグザ「48X9400S」とつないでみる。48X9400SはARC対応モデルで、残念ながらドルビーアトモスのビットストリーム伝送はできない。なので、今回はBeam(Gen2)の最高スペックでの再生は確認できていないことは最初に報告しておく。
48X9400SのHDMI1端子(ARC対応)にBeam(Gen2)を接続し、さらにUHDブルーレイプレーヤーのパナソニック「DP-UB9000」のHDMI出力を48X9400SのHDMI2入力につなぐ。これで接続はOK。
次にiPhoneでSONOSアプリを立ち上げ、Beam(Gen2)をシステムに追加する。さらにルームチューニングの「Trueplay」を起動し、測定をスタート。Trueplayの使い方は簡単で、iPhoneをマイク代わりにして、画面の指示通りに室内を動き回ればいい。SONOSユーザーの間では、この行為を “天の声を聴く” などと呼んだりするようだ。
測定を終えた状態で、UHDブルーレイ『ハドソン川の奇跡』を再生する。このディスクはドルビーアトモス収録だが、先述の通り48X9400SはeARC対応ではないので、ドルビーアトモスの信号は再生されない。アプリ画面で信号を確認すると、ドルリーデジタル5.1chでBeam(Gen2)に入力されていることが確認できた。
そのサウンドは、48インチ画面では小さかったと感じさせるほど広がりのあるもので、冒頭の飛行機墜落シーンの迫力が充分感じ取れた。低域も量感たっぷりで、飛行機のエンジン音の重さ、墜落のビルの崩壊シーンなども勢いを持って再現される。トム・ハンクスの声にこもった緊迫感までリアルに聞き取れた。
48X9400Sは6スピーカーを内蔵するなど音質にも配慮したモデルで、内蔵スピーカーでもきちんとした定位感、実体感を再現している。しかしBeam(Gen2)を組み合わせると、画面の外にまで広がる臨場感や低音の迫力が加わって、いっそう映画の世界を深く楽しめるのは間違いない(さすがに後方までは音が回らないけど)。
これは音楽コンテンツでも同様で、ドルビーアトモス収録のミュージカル作品『モーツァルト!』でもヴォーカルの力強さ、コーラス隊の包み込むような歌声などはBeam(Gen2)の方が一歩上をいく。帝国劇場の響きの再現もリアリティを増している。高さ方向の再現がもう少しあったら、という気もしたが、それはeARC対応テレビとつないでドルビーアトモス信号を伝送すれば、解決することだろう。
次にBS4K放送を録画したディスクを再生すると、Beam(Gen2)にはリニアPCM2chで伝送されていた。Beam(Gen2)はAACに対応していないので、プレーヤーかテレビのどちらかでリニアPCMに変換しているのだろう。ちなみに録画したのは東京オリンピックの閉会式で、AAC5.1chで放送されている。これがなぜPCM2.0chになっているのかは不思議なところではある。
その閉会式では選手の入場後進でのナレーションが画面中央に定位し、BGMと歓声がふわりと視聴者を取り囲む印象。東京スカパラダイスオーケストラの演奏が始まると、スタジアムの中に音楽が広がって参加者と一緒にライブを楽しんでいる気分になった。低音感はそれなりだが、キレよくテンポを刻んでいる。
ARC対応テレビとの組み合わせで好印象だったので、自宅の10年以上前のプラズマテレビ、パイオニア「PDP-5000EX」(もちろんARC非対応)ではどうかも試している。
この場合のBeam(Gen2)は、同梱の光デジタル→HDMI変換ダプターを使ってソース機器と接続する。わが家の場合はパナソニックの4Kレコーダー「DMR-4W300」のHDMI出力から、映像をプラズマテレビに、音声はDMR-4W300の光デジタル出力から変換アダプターを介してBeam(Gen2)のHDMI入力につなぐことになる。
なお、試しにDMR-4W300のHDMI出力をBeam(Gen2)のHDMI入力につないでみたが、Beam(Gen2)側がDMR-4W300を認識してくれず、音を再生できなかった。
光デジタル→HDMI変換ダプター経由で音をBeam(Gen2)に入力し、テレビ放送やブルーレイを再生する。地デジのバラエティやBS4Kの映画、音楽ブルーレイなどを観てみたが、セリフに厚みがでて、画面への求心力も強くなる印象だ。PDP-5000EXには小型スピーカーをつないであるが、ライブ作品のドーム状の包囲感などはBeam(Gen2)の方が自然に再現された。
なおBeam(Gen2)は、アプリでテレビリモコンのボリュウムをメモリーする機能も備えている。これを使えばテレビのリモコンで音量を調整できるので、普段使いで困ることもないだろう。1点だけ、光デジタル→HDMI変換ダプターの不具合か、時々テレビの音声が途切れることがあった。この点は改善して欲しいと思った次第だ。(取材・文:泉 哲也)