JUNONE(ジュノン)は、トライオードの創業者山崎順一氏の名にちなんだブランド名。トライオードの高級機にのみ命名され、厳選された販売店でのみ扱われて、インターネット上での販売は行なわない。すでにプリアンプのReference Oneが発表され本機は第2弾となる。
重量が45㎏にもなるプリメインアンプJUNONE 845Sは、845のシングル構成で、22W+22Wの大出力をひねりだす。出力アンプ部の前にフラットアンプを配置しているが、それを使わないメインイン端子も装備。これはリアパネル側で切り替える。リモコンは音量調整と消音の機能がある。
845Sは固定バイアスで、前面のメーターでカソード電流を監視しバイアス調整をしやすくなっている。それを駆動するのはプスヴァンのWE300Bで、こちらは自己バイアスだ。どちらも直流点火であり、ハムバランサーもそれぞれ装備している。オーディオ用直熱3極出力管の2段構えとしたのは、845の駆動に必要な大きな電圧振幅を余裕で取り出すことと音質上のねらいからだろう。パワーアンプ部初段は12AT7によるSRPP。このパワーアンプの3段増幅は段間がコンデンサー結合されて安定動作を図っている。4〜8Ω対応のスピーカー出力端子からSRPP段にトータルNFBを掛けている。
フラットアンプ部は12AX7の各ユニットを増幅とカソードフォロアー出力に使う直結反転アンプで、グリッド側にNFBを掛けている。
電源部は900V台の高電圧を得るために、2つのトランス2次巻線の整流出力を2階建てにしているのが珍しい。その高電圧部と、供給電圧が300Vを切る電圧増幅段用電源には、各々チョークコイルがあてがわれている。平滑用電解コンデンサーは日本ケミコンの特注品。845用真空管ソケットはピンの勘合部にテーパーを設けた信頼性の高い特注品を採用。付属電源ケーブルは、同社で製品化されているTR-PS2だ。
試聴はもっぱらメインインにて行なった。ライン入力は明朗で闊達な音だが標準入力が220mVであり、CD入力では相当にボリュウムを絞ることになる。
パワーアンプ部をエアータイトのATC5と組み合わせると、高純度で精密感のある直熱出力管らしい世界が展望される。といっても直熱管の2段構えということを強調するような特殊な鳴り方ではない。余裕のあるダイナミックレンジと、音色の幅があらゆる音楽の形態に新鮮な響きや活性を与えているのだ。
室内楽やコンボジャズの細部まで透徹した音像描写のスーパーリアリズムもいいが、大編成ほど真価を発揮するのがたのもしい。ケルテス指揮の「ハーリ・ヤーノシュ」(CD)は、スピーカーを飛び越えて大きな響きが出現し地を這う低音の音圧感が心地いい。それに広大な野を渡るエコーの表現など細密描写の能力にも聴き惚れる。ビッグバンドジャズの管楽器やリード楽器の音群としての響きは、重厚にして精妙。3次元的な音場の形成能力も優秀、845の能力が全面展開されている。