DO THE RIGHT THING with DTS:X/4K DIGITAL RESTORATION

It's the hottest day of the summer.
You can do nothing, you can do something,
or you can...

Release Dates (Theater):June 30, 1989 (Domestic)
Domestic Total Gross:$27,545,445
(International: $9,750,000)

STEELBOOK EDITION

画像: ドゥ・ザ・ライト・シング(1989年) 監督 スパイク・リー 製作 スパイク・リー 脚本 スパイク・リー 撮影 アーネスト・ディッカーソン 音楽 ビル・リー 出演 ダニー・アイエロ, スパイク・リー, ビル・ナン, ジョン・タートゥーロ, ジョン・サヴェージ, ルビー・ディー, ロージー・ペレス, オシー・デイヴィス, リチャード・エドソン, ジャンカルロ・エスポジート, サム・ジャクソン, ジョイ・リー, スティーヴ・ホワイト, ミゲル・サンドヴァル, マーティン・ローレンス youtu.be

ドゥ・ザ・ライト・シング(1989年)
監督 スパイク・リー
製作 スパイク・リー
脚本 スパイク・リー
撮影 アーネスト・ディッカーソン
音楽 ビル・リー
出演 ダニー・アイエロ, スパイク・リー, ビル・ナン, ジョン・タートゥーロ, ジョン・サヴェージ, ルビー・ディー,
ロージー・ペレス, オシー・デイヴィス, リチャード・エドソン, ジャンカルロ・エスポジート, サム・ジャクソン,
ジョイ・リー, スティーヴ・ホワイト, ミゲル・サンドヴァル, マーティン・ローレンス

youtu.be
画像1: SCREEN CAPTURE

SCREEN CAPTURE

FILM

ニューヨークはブックリン、その年イチバンの猛暑を記録した夏の日。耐え難い暑さゆえか、誰もが些細なことに神経を尖らせ、ついにはそれに火がつき大爆発、またたく間にさまざまな人種間のハーモニーが崩れ去る。1989年、当時32歳のスパイク・リーが放った本作は、芸術的な複雑さを犠牲にすることなく、危機的状況にフォーカスしながらユーモアを忘れず、あらゆる人種のエゴを情け容赦なく詰め込んで魅せた、リーが愛するフリー・ジャズが如き大傑作である。1990年代に突入すると、リーをはじめとする黒人監督が次々と傑作を放つことになるが、当時を振り返れば、誰もが「アフリカ系アメリカ人(以下「黒人」と表記)監督の歴史は驚くほど短い」と思ったろう。その幕開けを飾る、草分け的な長編映画が『知恵の木』(1969)とされるが、LIFE誌などで活躍していた写真家ゴードン・パークスが、63年に発表した自伝的小説を映画化、製作、脚色、音楽を兼ねて監督した作品である。1920年代のカンザスシティを舞台に、黒人少年が出会いと別れを繰り返しながら、ひとりの人間として成長していく姿が描かれている。機会があれば、是非とも鑑賞されたい。

82年長編監督デビュー作『ジョーズ・バーバー・ショップ』、続く『 シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』『スクール・デイズ』と、リーは人種差別、貧困といったさまざまな問題を、皮肉をたっぷり効かせた辛口ユーモアを織り込みながら描いてきた。そんな彼が、イタリア系やスパニッシュ系、韓国系など、初めて黒人以外の人びとを主要なキャラクターとして登場させたのが本作。登場人物たちの人種の多様化によって、それまでの監督作以上に黒人の立場が明確にされ、人種問題の複雑さがクローズアップされることになったのである。本作が放った衝撃は本国アメリカに止まらず、世界各国で大きな話題を呼んだが、アカデミー賞やカンヌ国際映画祭などの主要賞レースでは無冠に終わり、その結果そのものがアメリカの厳しい現実を物語っていたのである。そのリーがアカデミーやカンヌで受賞するのは『ブラック・クランズマン』によってであり、本作公開から29年後のことであった。

メジャースタジオの後ろ盾がない映像作家たちは、スタイルとしてリアリズムを好む傾向がある。リアリズムは何よりもまず安上がりに映画が製作できる。撮影は路上でできるし、費用が嵩むスタジオセットも必要としない。予算はローバジェット、高額な撮影装備を使うこともほとんどない。だが実物の素材、加工のない現場ロケーション、アヴェイラブルライト(その場にある灯り)などを使いこなす彼らは、生々しい社会の細部を描き出すことにズバ抜けた才能と技術を持っている。一方で、リアリズムがもたらす結果は必ずしも普遍的なものではない。スパイク・リーの映画で例えるなら、撮影スタイルはしばしば様式化されたものになっている。刺激的なカラースキーム、大胆なレンズ操演(さまざまな広角レンズ)、緩急自在の編集技法などを駆使しているのだ。UHD BLU-RAY化にあたって、映像面ではこのような新しい発見に出会うことが出来よう。

リアリズムと表現主義の境界線を注意深く歩くように描く『ドゥ・ザ・ライト・シング』では、さまざまなカメラアングルにも注目だ。映画には①俯瞰 ②ハイアングル ③アイレベル ④ローアングル(あおり) ⑤ダッチアングル(斜角)という、基本的な5つのアングルがあり、キャラクター間のコントラストを示すために使いこなされている(カメラの角度には厳密な定義はない/下欄「SCREEN CAPTURES」参照)。①は多くの場合、人間を無力で罠にはめられたように、また不安感を表現してみせる傾向があり、アングルが高くなるほど運命的な意味合いが増す。②は基本的には①と逆の効果を示し、縦もしくは垂直の感覚を意識させながら、作品テーマの重要性を増大させる。本作では混乱にも似たパワーや狼狽ぶりが強調されるのだ。そして本作で多用される⑤は、カントアングル、ダッチチルトとも呼ばれ、カメラを横に傾けて撮影、撮影画像の水平線は斜めに傾いている。心理学的には緊張感や切迫感を暗示すると言われるが、本作では観客の視覚的な方向感覚を狂わせつつ、混乱と緊張、歪んだ現実を提示。気温が高まるにつれて、キャラクター間の緊張が高まり、伝統的な映画撮影手法は消失、ダッチアングルはさらに傾斜、より長い時間をかけ、画面は広角レンズとの併用で醜く歪み、方向感覚を消失させ、圧倒的な存在感を示している点に注視されたい。

画像2: SCREEN CAPTURE

SCREEN CAPTURE

VIDEO

撮影は『ジョーズ・バーバー・ショップ』から『マルコムX』までのリー監督作品や、『ウォーキング・デッド』『デクスター 警察官は殺人鬼』などのTVドラマ・シリーズで知られるアーネスト・ディッカーソン。本作は4パーフォレーション35mmフレーム撮影ながら、オリジナルカメラネガはハードマット(撮影中にカメラのフレームをマスキング)された1.66:1アスペクト、意図された上映アスペクトは1.85:1のビスタサイズ。通常は1.37:1スタンダード・サイズで撮影して、ソフトマット(上映フィルムのプリントの際に上下にマスクをかける/上映時の映写機でマスクをかける)が主流。ビスタサイズ上下のマスクのかけ方の相違から、1.66:1ヨーロッパ・ビスタと1.85:1アメリカン・ビスタに2分されたのだが、ハードマットで1.66:1撮影された映画は非常に少ない(カンヌ国際映画祭などヨーロッパでの映画祭出品での上映トラブルは概ね回避される)。2019年、ユニバーサルは35mmオリジナルカメラネガを4Kスキャン(16ビット)、ディッカーソン監修のもとデジタルレストア/カラーグレードを敢行。このレストアマスターは劇場上映、クライテリオンBLU-RAYに使用されている。UHD BLU-RAY化は2019年リマスターをもとに、L.A.のユニバーサルスタジオ・デジタルサービスで行なわれ、HDR10グレードが施されている。ユニバーサル・グローバル・メディア・オペレーションズのマイク・ダルティが総監修、ディッカーソンが最終承認を与えている。LUT(ルックアップテーブル)は開示されていない。映像平均転送レートは77.7Mbps(3層100GB/クライテリオンBLU-RAY版 34.6Mbps/2009年ユニバーサル版 30Mbps)。収録アスペクトは1.85:1ビスタサイズ。

2019 年にクライテリオンBLU-RAYがリリースされた時、それまでのユニバーサル版から劇的なアップグレードが施されていたが、UHD BLU-RAYとクライテリオンの差異はそこまでは開いていない。フレーミングは同等(デジタルマスクに極微少な差異がある)。粒子構造も同等の層を有しているが、圧縮方式の違いによってグレインはより細密明快に表示される。全体的な解像感の顕著な改善を視認でき、提供される洗練されたテクスチャは驚くべきものがあり、32年前に撮影された映像とは思えない鮮度感がある。ミドルやロングショット内の情報量も見違えるものがあり、ことに大顔絵や被写体のクローズアップのディテールが目覚ましい。

最大の観どころはHDRグレードの恩恵だ。SDRではフラットにみえる光彩色彩が散見され、露光オーバーに感じるショット(とくに背景の白トビ)も存在したが、HDRグレードは映像に本来の命を吹き込んでいる。ウォームトーン(オレンジと黄色の色合い)は暖かみが増し、濃淡も的確に再現されているため、白であるべき部分には色味が付着しない。ウォームトーン配色は、猛暑の暑さだけではなく、人種間で沸騰する感情の熱量をシミュレートすることを目的としている。本盤ではウォームトーン配色が非常に効果的に作用しているのがわかり、一触即発のムードを醸成する熱っぽい画調に目を奪われよう。一貫して光彩色彩は豊かで活気に満ちており、深みを増した黒レベルも優秀、低照度ショットの視認性にも優れている。

画像3: SCREEN CAPTURE

SCREEN CAPTURE

AUDIO

サウンドデザインはスパイク・リー監督初期作をはじめ、コーエン兄弟監督作(『ノーカントリー』ほか)、さらにはオスカー受賞の『ゼロ・グラビティ(オスカー受賞)』、オスカー候補となった『ROMA/ローマ』の音響エンジニアとして知られるスキップ・リーヴセイ。5.1サラウンドサウンドトラックは、NBCユニバーサル・スタジオ・ポスト・オーディオ・オペレーションズ(USPAA)によって、2009年に35mm 4トラック/ドルビーSRサウンドトラックからリマスターされた。音響監修をリーヴセイが務め、スパイク・リーが承認。2019年劇場公開にあたり、2009年当時の技術ではできなかった細部のレストアが施された。その際にUSPAAがDTS:Xミックスをシミュレートしており、明らかな効果を確認できたため、UHD BLU-RAY採用のために正規のDTS:Xミックスを行なっている。こちらもリーが最終承認(リーヴセイの関与は不明)。音声平均転送レートは5.3Mbps(24bit/クライテリオン5.1ch音声 3.6Mbps/2009年ユニバーサル版5.1ch音声 3.9Mbps)。

開幕、パブリック・エナミーの『ファイト・ザ・パワー』が流れ出した瞬間、サウンドトラックは部屋を包み込む強烈なダイナミズムとともに躍動する。本編が始まると、アンビエントとストリートノイズが豊富に盛り込まれており、サウンドスケープはこれまで以上にオープンなものに感じられるはずだ。役者個々の発声に聴くさまざまなダイナミックレンジと幅の広さを的確に再現、クライテリオン版のダイアローグと比較すると、本盤ではいくぶん語勢が強く押し出される。

興味深いことに、導入部と帰結部の統合性、作劇法とカッティングをみると、華やかなりし50年代、ヴィンセント・ミネリやスタンリー・ドーネンらが手掛けたハリウッド・ミュージカルの構造と近似しているのがわかる。『ドゥ・ザ・ライト・シング』をスパイク・リー・ミュージカルと解釈するなら、品揃え豊かな楽曲とDTS:Xの顔合わせは必然だったと言えよう。ハイフィデリティで感度の高いローエンドだけでなく、オブジェクトとサラウンドチャンネルが巧妙に操演され、ドラマと音楽への没入度を大幅に高めている。音楽一家出身のリーならではの音楽構成を垣間見ることが出来るが、ジャズ・ベーシストの父親から引き継いだジャズ的資質も、ヒップホップやR&Bに代表される同世代的な音楽に培われた音楽観も声高にせず、テーマやジャンルに忠実な音楽の使用に取り組んでいるあたり、非常に興味深い。フランク・シナトラのバラードがイタリア系アメリカ人のピザ・レストラン経営者(ダニー・アイエロ)を象徴する一方で、ブラックコミュニティの住人たちを象徴するソウル、ゴスペル、ピップホップが緊張のネジを容赦なく締め上げる。そのインパクトは強烈極まりない。

「『ドゥ・ザ・ライト・シング』の主題歌とも言える『ファイト・ザ・パワー』(パブリック・エネミー)は、人種の垣根を越えて広く支持された楽曲だが、『ドゥ・ザ・ライト・シング』を製作するにあたって、なかでも白人警官による黒人への暴力行為を描くにあたって、この曲ほど説得力のあるものはないだろう。『ドゥ・ザ・ライト・シング』は過激さばかりがクローズアップされるが、こうした音楽によるシンプルなアプローチがスパイク・リー作品の魅力なのだ」(サウンド・オン・サウンド誌)

画像4: SCREEN CAPTURE

SCREEN CAPTURE

FINAL THOUGHTS

思えば、ブルックリンを舞台にした『ドゥ・ザ・ライト・シング』は、人種差別に関する見方がニューヨーク市長選の争点となっている最中に劇場公開された。映画芸術の様式美を犠牲にすることなく、現実の危機的状況に焦点があっており、当時のアメリカ映画でもっとも重要な映画とされたのも理解できよう。そして、公開31周年を迎えた2020年、白人警官による黒人男性ジョージ・フロイド窒息死事件が起きた。この事件に対して、リーは90秒ほどのショート映像をインスタグラムで公開。ジョージ・フロイド窒息死事件の映像、2014年に発生したエリック・ガーナー窒息死事件の映像、そして『ドゥ・ザ・ライト・シング』でラジオ・ラヒームが警官に殺されるシーンを引用しながら、「歴史は繰り返されなくなるのだろうか?」と問いかけている。映画は娯楽である。同時に、映画が問題提起をするならば、それを真摯に受け止めなければならない。歴史は繰り返されなくなるのだろうか?その問いを心の隅に置きながら、89年の名画クラシックを存分にお楽しみいただきたい。

※インスタグラム/オフィシャルスパイクリーより
事件の映像が含まれています。視聴の際はご注意ください。

SPECIAL FEATURES

  • Audio commentary with director/writer Spike Lee, Cinematographer Ernest Dickerson, Production Designer Wynn Thomas, and actor Joie Lee– Originally recorded in 1995, this is an excellent track that covers all aspects of the film enough to not have me surprised Lee wouldn’t have much more to add in a new track.
  • Audio Commentary with director Spike Lee
  • Behind the Scenes (SD, 57:59) – A vintage look at the production of the film, tracking the making of the feature from pre-production up to the block party after shooting had finished. It opens with an intro filmed in 2000.
  • Deleted and Extended Scenes (SD, 14:14) – A collection of rough-looking scenes.
  • The Riot Sequence (HD, 16:59) – Along with an introduction by Lee, this feature presents storyboards from the climactic riot sequence
  • Making Do the Right Thing (1988) (HD, 1:01:02)– Another archival documentary covering the production history of the film. This one also features an intro by Lee.
  • Cannes Press Conference (SD, 42:06) – Footage from the 1989 post-screening press conference, featuring Lee, along with Ossie Davis, Ruby Dee, Joie Lee, and Richard Edson.
  • Barry Alexander Brown (SD, 10:00) – An archival interview from 2000 with editor Barry Alexander Brown. He provides plenty of observations regarding the structure of the narrative and more.
  • Twenty Years Later (SD, 35:46) – This program was recorded in 2009, following a 20th
    anniversary screening of the film in New York City. Lee interviews cast and crew members, including Ernest Dickerson, Jon Kilik, actors Frankie Faison, Rosie Perez, Steve Park, and John Turturro, and Public Enemy’s Chuck D.
  • Trailers and TV Spots (HD)

SCREEN CAPTURES

画像1: SCREEN CAPTURES
画像2: SCREEN CAPTURES
画像3: SCREEN CAPTURES
画像4: SCREEN CAPTURES
画像5: SCREEN CAPTURES
画像6: SCREEN CAPTURES
画像7: SCREEN CAPTURES
画像8: SCREEN CAPTURES
画像9: SCREEN CAPTURES
画像10: SCREEN CAPTURES
画像11: SCREEN CAPTURES
画像12: SCREEN CAPTURES
画像13: SCREEN CAPTURES
画像14: SCREEN CAPTURES
画像15: SCREEN CAPTURES
画像16: SCREEN CAPTURES

DISC SPECS

TitleTHE INVISIBLE MAN
ReleasedFeb 02, 2021 (from Universal Studios)
SRP$29.98, US $22.99, US steelbook, £24.99 UK steelbook
Run Time1:59:48.514 (h:m:s.ms)
CodecHEVC / H.265 (Resolution: 4K / HDR10)
Aspect Ratio1.85:1
Audio FormatsEnglish DTS:X (48kHz / 24bit / DTS-HD Master Audio 7.1 compatible)
Spanish DTS 5.1, French DTS 5.1
SubtitlesEnglish SDH, French, Spanish

4K画質評価

解像感★★★★★★★★★  9
S/N感★★★★★★★★★  9
HDR効果★★★★★★★★★  9
色調★★★★★★★★★★ 10
階調★★★★★★★★★  9

音質評価

解像感★★★★★★★★★  9
S/N感★★★★★★★★★  9
サラウンド効果★★★★★★★★★  9
低音の迫力★★★★★★★★   8

SCORE

Film★★★★★★★★★★ 10
Image★★★★★★★★★  9
Sound★★★★★★★★★  9
Overall★★★★★★★★★  9

This article is a sponsored article by
''.