一般社団法人日本オーディオ協会は、「ハイレゾオーディオワイヤレス」ロゴに新たなカテゴリーとして左右独立型ワイヤレス製品を追加すると発表した。
最近の音楽鑑賞ではワイヤレスイヤホンが人気で、中でも左右独立型ワイヤレスイヤホンはヘッドホン市場の半分以上のシェア(金額ベース)を占めている。これを受け、オーディオ協会ではワーキンググループ(WG)で左右のユニットが独立動作するイヤホン等においてもハイレゾらしさが損なわれない技術要件を検討し、その結果を「ハイレゾオーディオワイヤレス」ロゴに対応する左右独立型ワイヤレスの定義と定めたという。
「ハイレゾオーディオワイヤレス」ロゴは、ハイレゾオーディオ信号を圧縮してワイヤレス伝送する機器の中でも、ハイレゾとして充分な音質を持つ製品を示すものとして、2018年11月27日からライセンスを開始した。Bluetoothによるワイヤレス接続で伝送される圧縮オーディオ信号については、2020年11月現在、ソニーのLDACとSavitech Corp.のLHDCがコーデック認証されている。
左右独立型ワイヤレス製品の扱いについては、プレーヤー(Source機器)と、左右チャンネル間のデバイスが連結されたヘッドホン等(Synk機器)の間でどのような伝送を行うかで議論が続いていたという。
というのも、ワイヤレスイヤホンは左右チャンネルのユニットがそれぞれクロックを持って動作するのが一般的で、結果的に左右の音楽信号にはわずかな位相差が生じることにもなるため、これを定量的にコントロールしないとハイレゾらしさを損なうのではないかという懸念があったからだ。
そこで、使用環境における外部電波からの妨害についてWG内で評価方法の議論を行ったが、妨害の起きる環境を一律に定義することが出来ないため、最終的には各社の仕様や実力に任せることになったという。
一方で位相差については、大きく位相を揺らした場合と小さく揺らした場合では音質に影響を与える差があり、その許容値として±50μsを、左右間位相差の定義としている。
この±50μsという値を一般的なスピーカー配置に置き換えると、左右のスピーカー間180cmの正三角形で試聴した場合に、スピーカーが±1.7cm前後ずれるのと同等だという。試聴中に頭や体を±1.7cm以上動かすことは普通にあるわけで、この値に収まっていればイヤホン試聴でも音質への影響は少ないということが分かるだろう。
「ハイレゾオーディオワイヤレス」ロゴに対応する左右独立型ワイヤレスの定義概要は以下の通りだ。
●ライセンス開始日:2020年11月30日
●ライセンス許諾先:「ハイレゾオーディオ」ロゴのライセンス許諾を受けている法人
●新たに追加されたライセンス対象:ハイレゾオーディオ信号をそのまま伝送できないワイヤレス接続に対して、協会が認証した「オーディオコーデック」を用いた左右独立型ワイヤレス商品であり、ワイヤレス接続部以外は「ハイレゾオーディオ」ロゴの技術規定を満足している必要がある。
https://www.jas-audio.or.jp/journal_contents/journal202011_post14186