フォノカートリッジがいくつかあると、音楽ジャンルや音質傾向を考えて使い分けたくなる。そんなときはダブルアーム仕様のアナログプレーヤーが便利なのだが、市販製品はシングル構成がほとんど。そこで考えられたのが、簡単にダブルアーム環境を実現できるMASTAZ(マスタツ)のコネクションベースセットだ。ここで紹介するのは、ラックスマンのPD171Aにジャストフィットする専用設計のMCB5040L-TKである。定評あるイケダのダイナックバランス型IT407CR1ロングアームを装着して、その音を本誌試聴室で検証してみた。
MCB5040L-TKは、厚いMDF製ベースにアームベースのユニットを連結させた構造になっている。それにPD171Aを乗せることで簡単にダブルアーム対応を実現する。正面左側にあるダストカバーのヒンジ受けは、ドライバーを使って事前に外しておく。
機械的にガッチリ固定されているわけではないけれども、PD171Aとコネクションベースセットは安定した状態になる。まずは水準器を使ってプレーヤー本体とMCB5040L-TKのアームベースの水平を整えておこう。次に装着するロングアームのポジションをチェック。トーンアームに付属するテンプレートを使ってみたが、アーム取り付けベース部は前後にスライドできるので微調整が容易だ。これでセッティングはいちおう完了。ハウリングが発生するようだったら、オーディオラックとMCB5040L-TKの間にフェルトを挟むなどして対策を講じるといいだろう。
イケダのIT407CR1には、最新鋭のAMANEとフェーズメーションのPP2000という、ともにMC型フォノカートリッジの最高峰2種を組み合わせて音を聴いてみた。
最初に聴いたのはイケダのAMANEの方で、アンセルメ指揮「三角帽子」は地に足のついた盤石の安定感を伴いながら、ダイナミックな美音を奏でてくれる。装置のグレードが高いことを納得させる音で、特殊制振合金をベースに採用しているAMANEは、グルーヴに刻まれた音の深部まで克明に聴かせてくれる。井筒香奈江のダイレクト盤でも音の重心が低いことを実感させ、情感の込められた歌声のリアリティと美しいピアノの打音が実に印象的だった。
フェーズメーションPP2000との組合せでは、彫りの深い音像描写で積極的に音が前に出てくる。ヘッドシェルを含めて表面に硬質なDLC処理を施している効果が音に反映されているようで、ブライアン・ブロンバーグ「WOOD2」では、ジャズらしい爆発的なエネルギー感を満喫できた。MCB5040L-TKのマス(重量)にも助けられているようで、アンセルメ指揮「三角帽子」の低音域も想像以上に充実した鳴りである。
ラックスマンPD171Aにアドオンして得られたダブルアームの環境は、快適そのもの。MCB5040L-TKの構造はシンプルで、他のプレーヤーにも柔軟に対応できるようだ。
Record Player Base
MASTAZオーディオプロジェクト
MCB5040L-TK
¥110,000(税込)
●寸法/重量:[コネクションベースキット]W500×H60×D400mm/7.2kg(べース部)、W300×H21×D240mm/850g(アームベース部)、[パルテノンベース]W167×H145×D150mm/2.8kg ●備考:アームベース固定用M6×40mmビス5本、アクリルスペーサーΦ40×H45mm・3本、M5ボルト3本付属。ロングアーム専用で注文時にトーンアームを指定。アームを取り付ける3角形の天板は、孔加工なし/孔加工済み(25mm/31mm/40mm/SME用トラック楕円)の5種からトーンアームに合わせて選択 ●問合せ先:(株)ステレオサウンド販売部 TEL. 03(5716)3239、ステレオサウンドストア( https://www.stereosound-store.jp/ )、仕様についてはMASTAZオーディオプロジェクト TEL. 048(982)1627
装着したトーンアーム
イケダサウンドラボズ IT407CR1 ¥420,000
●実効長:307mm ●備考:ヘッドシェル(IS1)付属
●問合せ先:(株)カジハラ・ラボ TEL. 03(6279)6311
試聴に使用したカートリッジ
フェーズメーション PP2000 ¥440,000
●問合せ先:協同電子エンジニアリング(株)TEL. 045(710)0975
イケダサウンドラボズ AMANE(周) ¥450,000