フォステクスのフルレンジユニットFEシリーズは、限定生産だったSolシリーズ以来、そこに注がれた技術要素を継承し、あるいは新しい要素を加え、さらにはいったん解きほぐしてから別の手法で同等の効果を得ようとするなど、入念な開発方針が軌道に乗ったように思える。すなわちNSシリーズが快調なのだ。
今回試聴したのはFE108NSとFE208NSだ。そこに注がれた特徴的な技術はすでにお馴染みのもの。つまり「2層抄紙コーン」、「ポケットネックダンパー」、「ハトメレス」などだ。搭載フェライト磁石はFE108NSが90mm径、FE208NSが156mm径と、それぞれの有効振動板面積と同等かそれを超えるほど大型のものを採用。またギャップのポール部に銅キャップをかぶせて電流歪みを低減させている。フレームは頑丈なアルミダイキャスト製。
FE108NSは、このユニット専用のバックロードホーンBK108NSに装着して試聴。ユニットの価格に比して値が張るのだが、ウォールナット突き板にクリア塗装したきれいな仕上げだ。パワーアンプはエアータイトATM3を使用。
当初は高速、快速で中域の成分が繰り出される印象でやや腰高に聴こえた。しかし微細な情報を探り出しては提示する応答性の良さは隠れもない。そして108Solと比べると、その熟成感に対して少しドライに聴こえるのだが、節度があり、試聴を進めるにつれて緻密な表情を聴かせるようになった。初動感度の高いコルゲーションダンパーがこなれてきたことも関係しているだろう。ならば小出力真空管アンプとの相性も期待させる。
FE208NSはバックロードホーンのBK208NSに装着。さすがに大型らしいスケール感となり、ピアソラのライヴ録音などステージの奥行きがよく見えてくるし、3次元的な音のレイアウトも明瞭だ。ミケランジェリのピアノ協奏曲にしても美音の実在感と伸びやかさが向上。ただしこの表現力ならば音像の彫りはもっと確かであってもいい。
そこで新型スーパートゥイーターT96Aを追加してみる。これはアルミ合金リング振動板とアルニコ磁石に特徴がある。用意された低音カットのコンデンサーはMUNDORF(ムンドルフ)のMCap EVO Silver Gold Oilの0.33µFを使用。すると音場の透明度、そして臨場感がたちまち向上する。ピアソラのタンゴは即興的な打音のさんざめきが次第にベースの刻みに同期し、さらに熱を帯びて躍動感を聴かせる様子が克明。ミケランジェリの美音は陰影がともない、低域までよくうごめくホールの響きの中で閃光のように屹立している。こうした優れた純度と品位の向上は、高域ユニットとの過渡応答性の志向がよく揃っていることを物語る。こうして、多くの真空管アンプと手合わせ願いたくなる、完成度の高さを感じた。
Speaker Unit
フォステクス
FE108NS ¥33,000(ペア)
●型式:10cmコーン型フルレンジ ●インピーダンス:8Ω ●fo:75Hz ●感度:87dB(W/m)●入力:15W ●バッフル開口寸法:100mm ●推奨エンクロージュア方式:バックロードホーン型 ●重量:1.08kg ●備考:2層抄紙コーン採用 ●問合せ先:フォステクスカンパニー TEL. 042(545)6111
FE208NS ¥61,800(ペア)
●型式:20cmコーン型フルレンジ ●インピーダンス:8Ω ●fo:45Hz ●感度:94dB(W/m)●入力:40W ●バッフル開口寸法:185mm ●推奨エンクロージュア方式:バックロードホーン型 ●重量:4.5kg ●備考:2層抄紙コーン採用
T96A ¥42,000(ペア)
●型式:ホーン型トゥイーター ●インピーダンス:8Ω ●感度:96dB(W/m、8k、10k、12k、15kHz平均)●推奨クロスオーバー周波数:8kHz以上 ●入力:15W ●重量:600g ●備考:リング形状アルミ合金振動板採用、ホーンおよびイコライザーはアルミダイキャスト製、写真の置き台を付属