国内最大級のハイレゾ配信サイトe-onkyo musicから、アニソン歌手YURiKAさんのアコースティック・セルフカバーMiniアルバム『REUNION』のステムデータが販売となった。ステムデータとは、音楽制作において、ボーカル、ギター、ベース、ドラムなど楽器ごとの音源をまとめた音源ファイルのことだ。これまでも、一部のアーティストがネットやCDなどでステムデータを配布することはあったが、どれもプロモーション色の強い一過性のものでしかなかった。ステレオサウンドでは、この新たな取り組みに大変注目をしており、YURiKAさん、音楽プロデューサーの水野大輔さん、e-onkyo musicのディレクター長田渓さんの3名に、今回の販売についてお話をうかがった。

─── ステムデータをe-onkyo musicで販売しようと思った理由を教えてください。

長田 数年前からYouTubeなどで「弾いてみた」「歌ってみた」のような動画を配信する方が目立つようになっており、そのような人たちへの需要を感じ始めていました。またコロナ禍の中、音楽との関わり方が少し変わってきたなという感覚もありました。さらに、楽器の売り上げが伸びているという話を伺ったり、これを機に音楽に離れていた人が徐々に戻ってきているというような話を聞いたりと、音楽に対する需要がじわじわと増えているとも感じていました。

そういった状況を鑑みて、ステムデータをオフィシャルで販売できれば面白いのではないかと思いました。そこで、以前別の仕事でご一緒させていただいていた、音楽プロデューサーである水野さんに、ステムデータの販売についてお声がけをさせていただきました。

画像: e-onkyo music ディレクター 長田 渓さん

e-onkyo music ディレクター 長田 渓さん

水野 実はお話をいただく以前から、ステムデータを販売出来ないかと考えた事が過去に何度もありました。でも権利的に少し難しく、アーティスト側は面白がってくれても、企画側になるとあまり賛同してくれる人は少なくて、話が具体的になることはありませんでした。そんな時、長田さんからお話を伺い、コロナ禍で音楽を楽しむスタイルが変化する今、販売をチャレンジするには良いタイミングだと思いました。

YouTuberの方々が公開する動画が、公式からの音源が無いために、どうしても非公式音源に頼らざるを得ない状況などもみて、公式からきちんと提供して、ちゃんと権利を守った上で遊んで欲しいという思いもありました。

画像: 音楽プロデューサー  水野 大輔さん

音楽プロデューサー 水野 大輔さん

YURiKA この『REUNION』というアルバムは、実はコロナ禍のステイホーム中に作られ、自身のサイトだけで販売されたちょっと特別なCDです。そのため、その時のレコーディングの様子なども、YouTubeで2時間生配信をしたりもしました。配信中に、エンジニアを目指している方からのコメントや、録音に興味がある方からのコメントを多数いただきました。そのような経験もあり、そういった方面に興味がある方にステムデータを発売することで、私の曲を聴いてもらえたり、楽しんでもらえるのはいいなと思いました。

画像: アニソン歌手 YURiKAさん

アニソン歌手 YURiKAさん

画像: YURiKA「REUNION」収録版「Le zoo」ボーカル収録現場の生配信! www.youtube.com

YURiKA「REUNION」収録版「Le zoo」ボーカル収録現場の生配信!

www.youtube.com

ステムデータとは(解説:水野大輔さん)

ステムデータとは楽器ごとのパートのトラックです。全部一緒に再生するとその曲になります。音楽業界ではライブなどをする時に「半オケ」などと呼ばれて、生楽器でないパートだけ流したりして使います。また、今回はメンバーにピアノがいないからピアノだけ流したりという風に使ったりもします。

 

─── ステムデータを使ってどんな事ができますか。

水野 単純なところで各トラックのマイナスワンが作れます。自分の持っているDAW(Digital Audio Workstation)ソフトでデータを読み込んでもらって、ギターのパートを消して、自分でギターを弾いて楽しんでもらえます。ボーカルの部分を消して「歌ってみる」というようなカラオケ的な楽しみ方も出来ます。

各トラックが独立しているので、編集したり、ミックスし直してもらうことも出来ます。それこそ曲を刻んでサンプリングなどもできます。ボーカルのトラックもあるので、自分で作ったオケ(演奏)でYURiKAが歌っているみたいな音源を作る事もできます。

長田 e-onkyo musicとしては音楽を聴くという楽しみだけでなく、そこに加わってみるというような双方向の楽しみを提供できると良いと考えています。エンジニア志望の方などでも、プロになるまでこういった生のデータに触れる機会は無いかと思います。そう言った意味からも曲作りの勉強にもなりますし、資料的な価値もあるかと思います。

 

─── ステムデータのオフィシャルでの発売は、業界としても新しい試みだと思います。そのことに対する思いなどを教えてください。

画像2: 音楽の楽しみ方革命!プロの演奏データを使って遊べる! アニソン歌手YURiKA、水野プロデューサー、e-onkyo musicの3者が起こす、ステムデータ販売という新たな挑戦

水野 今回販売する商品は、我々が普段使っている音源をそのままステムデータにしてしまっているので、よく聴くとちょっとした演奏のヨレや、楽器などがすれる音などが入っているかと思います。一個一個のトラックを販売用にクリーニングなどはしていません。もともとの曲作りの際も、組み合わせた時に気にならない微細なノイズなどはそんなにカットしていません。

僕はプロデューサーとして若いアレンジャーさんなどからデータをもらってチェックする仕事が多いのですが、年々データが綺麗になりすぎていると感じています。つるっとした感じで、そういうデータは楽曲として組み合わせてもつるっとしていて、「プロの音はそんな音ではないんだよな…。」と、いつも物足りなさを感じていました。アナログ楽器なんてノイズが出て当然ですし、歌だってちょっとしたリップノイズとか息づかいが入っていて当然です。それらを全て不要なノイズとして捉えるのは、場合によっては違うのではと思っています。今回のステムデータは割とお化粧なしのデータを提供しています。

先日もYURiKAとはレコーディングの様子を2時間そのまま配信しました。エンジニアさんの自宅のスタジオに行って、録音時の様子はもちろん、マイクの選定から位置の調整まで全てを観せました。今回ステムデータを販売することで、本当はこういう風に音楽は作られているんだよと伝えるのは、文化的にも意義があるのではと思っています。最近はPC上だけで曲作りが完結してしまうDTMが進歩しています。しかし、若いクリエーターさん達にも、そんな綺麗には音楽は作れないことを伝えたいです。

今回のステムデータの販売に関しては、製作の内部事情を見せるという意味で反対する人もいるかもしれません。夢を売っている商売なんだから、あまり中身を見せない方がいんじゃないかと言う人もいるかもしれません。もちろんそれもアーティストをプロモーションするという意味では大切な事です。

しかしYURiKAに限って言えば、本人が当たって砕けろ的なチャレンジ精神溢れるキャラクターですし、今回のステムデータの販売に関しても、当初から素直に賛同してくれました。本人が嫌だと言えば、やらなかったです。YURiKAは、ファンへのサービス精神も強いし、アニソン歌手としてその文化をどうやって広げて行きたいか常に考えています。そういった意味でも今回の企画をいただいたのは、良いタイミングでもありました。

画像3: 音楽の楽しみ方革命!プロの演奏データを使って遊べる! アニソン歌手YURiKA、水野プロデューサー、e-onkyo musicの3者が起こす、ステムデータ販売という新たな挑戦

YURiKA 私もアニソンが歌いたくて、これまで頑張ってきたという強い思いがあります。今回のステムデータの販売が、アニソン歌手になりたいという人たちの参考になったり、楽しんでくれる人がいるならやるべきだと思いました。こういったコロナ禍の時期ですし、新しい事にはどんどん挑戦したいですし、販売に対する抵抗は全然なかったです。

画像4: 音楽の楽しみ方革命!プロの演奏データを使って遊べる! アニソン歌手YURiKA、水野プロデューサー、e-onkyo musicの3者が起こす、ステムデータ販売という新たな挑戦

長田 e-onkyo musicとしては、正直、これがものすごく認知されて大きな収益を産むとは現時点では考えていません。しかし、元々e-onkyo musicがハイレゾ音源を販売する意義として、スタジオクオリティの物をそのまま世に出すという理念があります。それを音楽製作というもう少し違うレイヤーでも実現する。新たな音楽の価値を創造してみたいという思いがあります。

 

─── このステムデータを使ってYouTubeやInstagramのようなプラットホームで配信することはOKですか?

水野 それぞれの各トラックは著作権処理されております。従いましてJASRACが包括処理しているYouTubeやInstagram、ツイキャスやニコニコ動画のようなプラットホームでの配信はOKです。

 

JASRAC | 利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧 | 2020年11月5日更新

 

実は今回販売する『REUNION』は少し特殊なアルバムです。コロナ禍のステイホーム期間中でミュージシャン達の動きが取れない中、各パートを自宅で録音してもらい、それを僕のところでミックスして作った企画アルバムです。たまたま原盤権がこちらにありましたし、CDの販売自体も一般流通ではなくYURiKAのアーティストグッズの一つとして販売したため、様々な権利事情が期せずしてクリアになっていたアルバムでもありました。

『REUNION』はアコースティック・セルフカバーアルバムなので、オリジナル曲の方のステムデータも欲しいという意見があるのは分かります。それらも販売できたら面白いだろうと僕も思いますが、まずは権利的にクリア出来ているものから販売してゆこうという事になりました。

 

─── 今回のステムデータ販売でアーティストとして何を伝えたいですか?

YURiKA 普段はおしゃべりが好きで、元気で明るいキャラクターを前面に出していますが、音楽に関していえば一曲一曲を大切にして作っています。ボーカルはもちろん各楽器のバートを聴いてもらえると、YURiKAの音楽はちゃんとしているんだと思ってもらえると思います。今回の販売はそういう事を伝えられるいい機会だと思っていまし、ぜひ知ってもらいたいとも思っています。

画像5: 音楽の楽しみ方革命!プロの演奏データを使って遊べる! アニソン歌手YURiKA、水野プロデューサー、e-onkyo musicの3者が起こす、ステムデータ販売という新たな挑戦

水野 実はミュージシャン寄りの歌手というのは、それほど多くないんです。そのためレコーディングに関する事柄や、今回のようなステムデータの販売のような事を話する機会は、それほど多くはありません。YURiKAに関して言えば、彼女とは普段から「どんな曲にする?」とか話し合いをしながら曲を作っています。また、演奏の現場や、トラックダウンの現場などにもよく来てもらっています。そんなミュージシャンとしての一面も今回のステムデータから分かってもらえると良いと思っています。

 

─── ステムデータの販売という新たな挑戦について期待することは何ですか?

水野 先にも伝えましたが、製作者にはやはり生のデータを聴いてもらい、実際のプロの音とはこういったものなんだと、何か感じてもらえれば良いと思っています。一般のお客さんには、単純に音源を楽しんでもらいたいです。コロナ禍で音楽を楽しむ人が増えているようなので、ピアノマイナスワンのようにして、自分のピアノをそこに合わせるような形で楽しんでもらいたいですし、カラオケのような使い方も良いと思います。

また、やはり権利的な面で、もう少し世の中が動きやすくなると良いなと思っています。今は権利的にダメだという事が多すぎると思います。だからと言って、もちろん全部フリーにしたら良いとは思っていません。現状のグレーだからいいやで通ってしまう状況も、また違うと思っています。

業界としても、ユーザーが使いやすく、そして権利者も損をしないというバランスでの権利処理の仕組みを考える必要があると思います。ネット文化の急速な発展に権利処理の整備が追いついていないと思います。今回のオフィシャルでのステムデータの発売が認知されてゆくことで、ちょっとずつその辺りも変わってゆく事を期待しています。

YURiKA 私のように、アニソン歌手になりたいと思っている方がいるかもしれません。頑張り方が分からないという方もいるかと思います。そういう方はぜひ今回の『REUNION』を購入して、ステムデータと合わせたご自身の歌声をYouTubeなどに上げてみてください。私もぜひそういう動画を観てみたいです。そして、それが夢に挑戦するきっかけになってくれると嬉しいです。

 

─── 本日はお忙しい中、ありがとうございました。

画像6: 音楽の楽しみ方革命!プロの演奏データを使って遊べる! アニソン歌手YURiKA、水野プロデューサー、e-onkyo musicの3者が起こす、ステムデータ販売という新たな挑戦

 

  

★ YURiKAさん、サイン色紙プレゼント ★

今回の取材でYURiKAさんから、サイン色紙をいただける事になりました!下記アンケートにお答いただいた方の中から抽選で3名様にお送りいたします。どしどしご応募ください。

申し込み期間:2020年11月20日〜2020年12月19日

※ 当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。

 

 

アニソン歌手 YURiKA

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