マッキントッシュのC2700は、人気の高かったC2600をブラッシュアップした新しい管球式プリアンプだ。使われている真空管はC2600と同じく、12AX7Aが5本に加えて12AT7が1本。両機のスペックを比較するとMM/MC対応のフォノイコライザー回路のS/N比が5dB以上も改善されており、DA2と呼ばれるDAC回路がアップグレード対応のモジュールになっているのが大きな相違点である。DA2はUSB入力で22.4MHzまでのDSDと384kHz/32ビットまでのPCMを再生できる、きわめてハイスペックな内容。2系統の同軸と光のデジタル入力端子があり、同社製SACDトランスポートと接続できる専用のMCT端子も装備。また、映像視聴に役立つHDMIのARC端子(オーディオ・リターン・チャンネル)も用意されている。
上級モデルにセパレート構成のC1100があるけれども、定番的なマッキントッシュの管球プリアンプといえば本機に代表される一体型になろう。他にはレベルメーターを持たない創業70周年記念の管球プリアンプC70があり、高級フォノイコライザーアンプのMP1100も管球式である。
本誌試聴室での機器環境は以下の通り。ラインレベル入力はアキュフェーズDP950+DC950の組合せで、アナログプレーヤーにフェーズメーションPP2000(MC型)を装着したテクニクスSL1000R。加えて、C2700のUSB入力にDELAのNASを接続している。パワーアンプはエアータイトのATM3で、モニタースピーカーはB&W800D3である。
まずはアキュフェーズからのディスク再生。手嶌 葵「月のぬくもり」は、いかにもマッキントッシュらしい厚みのある、余裕を感じさせる音だ。しっかりとした低音域に支えられて、彼女の繊細なヴォーカルが沁みわたるような温もりを帯びた美音なのだ。ジャナンドレア・ノセダ指揮のコープランドは、SACDらしい情報量の豊かさと懐の深さを特徴にする、スケールの豊かなオーケストラ演奏を聴かせる。丁寧な質感描写は真空管増幅であることを感じさせるし、なによりもマッキントッシュならではの風格が漂っているのが実に心憎い。
アナログディスク再生はMCの入力負荷を25Ωに設定して聴いている。ノイズフロアーの低さからオペアンプなどの半導体回路が組み合わされていると思われ、アンセルメ指揮の三角帽子はメリハリの効いたワイドレンジな再生音。アン・バートンのダイレクトカット盤は潤いを帯びたヴォーカルの存在感を高めにした、これも現代的な音傾向といえる。
DELAとのUSB接続でPCM再生を聴いた。濃いめの色彩に感じられる鮮明な音の描写力で、ESS製の高性能DAC素子が使われているようだ。本格的な音質と多機能が嬉しい。
Preamplifier
マッキントッシュ
C2700
¥1,000,000
●アナログ入力:PHONO(MM、MC)2系統、LINE7系統(RCAアンバランス×4、XLRバランス×3)●デジタル入力:7系統(RCA同軸×2、TOS光×2、USB、HDMI、DIN)●出力端子:PRE3系統(RCAアンバランス/XLRバランス×3)、DIRECT1系統(RCAアンバランス)●入力感度/インピーダンス:4.5mV/47kΩ(PHONO・MM)、0.45mV/25Ω・50Ω・100Ω・200Ω・400Ω・1000Ω(PHONO・MC)、450mV/22kΩ(RCAアンバランス)、900mV/44kΩ(XLRバランス)●出力インピーダンス:100Ω(RCAアンバランス)、200Ω(XLRバランス)●対応サンプリング周波数/ビット数:〜384kHz/32bit(PCM)、〜22.4MHz/1bit(DSD)●使用真空管:12AX7A×5、12AT7×1●寸法/重量:W445×H194×D419mm/13.4kg●備考:MM負荷容量50〜800pF(50pFステップ)切替え可。トーンコントロール(高域/低域、±12dB)、バランスコントロール、ミュートスイッチ、ヘッドフォン出力装備。リモコン付属●問合せ先:(株)エレクトリ TEL. 03(3530)6276
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