ジャパンディスプレイは、仮想現実(VR)ヘッドマウントディスプレイ専用の液晶ディスプレイ(パネル)の量産をスタートしたと発表した。既に中国メーカー向けに出荷を行なっており、このデバイスを搭載したメガネ型VR端末も発売されているそうだ。2.1型サイズに1058ppi(pixel per inch)という高い解像度を備えている。
VRヘッドマウントディスプレイでは自然で緻密な動画表現が求められるため、1,000ppiを超える高精細さと、ぼやけを抑えるための反応速度が必要となる。同社ではこの2点について技術開発を進めてきた。さらに、実際のメガネ型VR端末をより薄く・軽量化するための工夫も施されているという。
その一番の特長は明るさだ。VR端末では短い視距離で映像を見るために、偏光レンズなどの光学系が複雑になり、光の透過率が低くなってしまう。そこで今回は輝度を430cd/平方メートルまでアップさせ(従来の製品は100cd/平方メートル前後が中心)、クリアーなVR映像を可能にしている。バックライトはエッジ型LEDで、厚みを増すことなく輝度アップを実現している点もポイントだろう。
さらに、レンズを通して見た場合にも映像が視野いっぱいに広がるよう、液晶ディスプレイを八角形にしている。そもそも四角形の液晶ディスプレイでは、レンズ超しでは四隅のピントが合いきれず、無駄な部分が残ってしまう。今回は八角形にしたことで、無駄なく映像を活用できるのだ。
なお、VR映像で360度の視野をすべてカバーするには3型ほどの大きさが理想と考えられている。しかしそれではVRグラスが大きくなりすぎてしまうので、今回は光学系も工夫することで、2.1型で広い視野を実現したそうだ。ちなみに有機ELやマイクロLEDなどでは1インチ前後のデバイスが中心のため、VRの没入感を再現するのはまだ難しいともいう。
今回のデバイスが搭載されたメガネ型VR端末を体験させてもらったが、何より小さくて軽いことに驚いた。メガネ部の厚さは3cm弱で、重さも200gを切るほどで、これなら映画1本を気にせず楽しめるだろう。通常のメガネとの併用はできないが、視度補正機能もついており、近視の人でも問題ない。
何よりこの端末を装着すると、本当に視野全体がVR映像に覆われ、余計なノイズが気にならない。この没入感は従来のVRヘッドマウントディスプレイでは体験できかなったものだ。さらに映像が明るくてクリアーなので、閉塞感もまったく感じなかった(その分ドットもしっかり見えるので、ここについてはさらなる高精細化を期待したい)。
ジャパンディスプレイでは、この液晶ディスプレイを国内工場で生産しており、今後は他のメーカーにも採用を提案していくという。そうなると、より軽くて快適なメガネ型VRディスプレイが各社から登場することだろう。
2.1型液晶ディスプレイのスペック
●液晶モード:VR専用IPS
●サイズ:2.1型
●解像度:1600×RGB×1600
●精細度:1058ppi
●応答速度:4.5ミリ秒(中間応答ワーストケース)
●リフレッシュレート:120㎐
●バックライト方式:グローバルブリンキング
●輝度:430cd/平方メートル