ジャパンディスプレイは1月21日、都内で会見を開き、東京大学と共同研究・開発した薄型イメージセンサーを発表した。
これは、世界初となる、指紋・静脈・脈波を計測可能な薄型でフレキシブルな生体センサー。東大の持つ薄型有機光検出器の技術と、ジャパンディスプレイの持つ低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(LTPS TFT)技術を組み合わせることによって実現したという。
![画像: 今回発表のセンサー。試作機へ組み込まれているのは一番右のもので、それよりも大きいサイズもできますよ、という展示](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783364/rc/2020/01/22/40c71f88a670c3189ed4f8139ab0459853e283b2.jpg)
今回発表のセンサー。試作機へ組み込まれているのは一番右のもので、それよりも大きいサイズもできますよ、という展示
![画像: 今回開発した新型センサーの説明をする、ジャパンディスプレイR&D本部 デバイス開発部 部長の木村裕之氏](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783364/rc/2020/01/22/01de0ca68a6ce246709ac0fa00b008b6fe28f9f3.jpg)
今回開発した新型センサーの説明をする、ジャパンディスプレイR&D本部 デバイス開発部 部長の木村裕之氏
会見では、このセンサーを使った2種類の試作機が展示されていた。
一つは、いわゆる生体認証に使えるもので、指先を治具に置くと、指先と指の腹(第2関節)の部分にこのセンサーが設置されており、先述の指紋、脈波、静脈の生態情報を得ることができる、というもの。
![画像1: ジャパンディスプレイ、東大と共同で、薄型・フレキシブルな生体認証用センサーを開発。高速・高解像度での読み出しを実現。3年後の実用化を目指す](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783364/rc/2020/01/22/a93abde441e74659b67a975ea1cf67cef5941360.jpg)
![画像: このように指を置く](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783364/rc/2020/01/22/efe979d752592f1c27d1c530ddb58113e66f9eef.jpg)
このように指を置く
![画像: 画面中央の四角い枠の部分が静脈、右の枠が指紋(ぼかしてあります)を検出している](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783364/rc/2020/01/22/33cf055a7527f772ad980a96487869c3b925e87e.jpg)
画面中央の四角い枠の部分が静脈、右の枠が指紋(ぼかしてあります)を検出している
もう一つは、ウエアラブルデバイスへの応用を考えたもので、LTPS TFTの特徴でもあるフレキシブル性――曲げられる――を活かして、手首に巻いて装着する形状であり、これで、生体情報の記録(ログ)を取ることができる、というもの。体調を管理する(見守り)ことで、病気を未病で防げるようにもなるだろう、ということだ。
![画像: ウエアラブル用センサーの試作機](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783364/rc/2020/01/22/3e1d98f9ecfebdcc8432e2880130d15fc3270155.jpg)
ウエアラブル用センサーの試作機
では、何がすごいのかと言えば、有機の光検出器をLTPS TFTと組み合わせることで、データの読み出し速度が一桁上がり(約10倍速くなったそう)、41fps(秒41枚)の高速化を実現したこと。ほかにも、15μmという薄型化&フレキシブル化も可能になり、ウエアラブル化への可能性を開いているし、解像度は508dpi(5インチのクラスのフルHD解像度のスマホより細かい)を達成しているそうだ。
![画像2: ジャパンディスプレイ、東大と共同で、薄型・フレキシブルな生体認証用センサーを開発。高速・高解像度での読み出しを実現。3年後の実用化を目指す](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783364/rc/2020/01/22/5424af5da9bb2ab15ff4bbc612c087fe71515ebd.jpg)
静脈の撮影については、従来(現行)のレンズ式と同等の精度を持ち、かつ測定に最適な場所(ポイント)への移動が素早く行なえるのも特徴になるという。
ちなみに、今回発表のセンサーは、センサー製造時に、LTPS TFTの上に有機層を形成する際のプロセスの見直しによって実現した、ということだった。
ジャパンディスプレイでは、今後、有機光検出器の自社生産体制を整え、3年後をめどに製品化を進めたいとコメントしていた。
なお、今回の成果は、英国科学誌「Nature Electronics」のオンラインで公開されている