8Kの新しい方向性が「ドラマ」だ。これまで「8Kは花鳥風月を高精細に描くためのもの」といわれてきた。ノンフィクションには高精細映像は合うが、果たして、フィクションにはどうか?
見えすぎるのはどうか。ドラマに応用したらどうなのか。
そのトライが8KドラマのNHK『浮世の画家』。戦前との社会の激変に戸惑う老画家を渡辺謙が演じた、カズオ・イシグロ原作作品は、NHKにとっては「8Kはドラマに合うか」を試すひじょうに重要な実験だった。
私は試写にて、しっとりした質感が高精細に、そしてハイコントラストに描かれたと、見た。監督の渡辺一貴氏(NHKエンタープライズ・番組開発エグゼクティブ プロデューサー)は、こう言った。
「ハイビジョンでの撮影が始まった時も、鮮明に映りすぎてしまい、ドラマなんかつくれるわけはないと言われたものですが、いつの間にか普通になりました。8Kも同じだと思います。今回の経験から8Kはひじょうにドラマに向いていると確信しました。多彩な表現が可能だからです。特に感動したのが、いままでの黒は黒一色だったのに。ところが8Kの黒はその中にすこし暗い、明るいなどグラデーションがはっきり表現できるのですね。それには驚きました」
精細感と階調再現は、ドラマに8Kのメリットを与えるだろう。