東芝映像ソリューションは本日午後、渋谷の「Tokyo Arts Gallery」で「次世代8Kレグザエンジンの開発について」と題した説明会を開催した。

 これは、同スペースで開催中の清水大輔氏のタイムラプス展「そこある光」にあわせて開催されたもので、会場正面には88インチの8K有機ELレグザの試作機が、両サイドには4Kレグザが4台並べられ、清水氏が8Kカメラで撮影した映像が再現されていた。

画像: 88インチの8K有機ELレグザ開発モデル。発売時時期などは未定

88インチの8K有機ELレグザ開発モデル。発売時時期などは未定

 冒頭、東芝映像ソリューション(株)R&Dセンター オーディオビジュアル商品開発部 部長 山内日美生氏が登場し、「8Kレグザエンジン」(8K REGZA ENGIN PROFESSIONAL)の開発状況について紹介してくれた。

 山内氏は開口一番、「8K REGZA ENGIN PROFESSIONALをようやく紹介できます」と話した。

 「8Kレグザエンジン」は、8K時代を見据えて、8K有機ELや8K液晶などの様々な8Kデバイスに対応する新エンジンを目指して開発を進めており、今回展示されている試作モデルにも内蔵されているそうだ。

 機能としては、「8K超解像技術」「8Kフォーカス復元」といった再構成処理による緻密な8K映像再現や、「8K倍速ドライブ」によるフレーム補間・倍速表示を行うことができる。

 山内氏によると8K映像はフォーカス感がキーポイントだが、清水氏のタイムラプス映像はもともとフォーカス感があるので復元の余地は少ないが、そんな高品質なコンテンツでも圧縮や動きに対するぼやけがあり、8Kレグザエンジンでフォーカス感を復元することで奥行感、実態感を再現できているという。

画像: 東芝映像ソリューション(株)R&Dセンター オーディオビジュアル商品開発部 部長 山内日美生氏

東芝映像ソリューション(株)R&Dセンター オーディオビジュアル商品開発部 部長 山内日美生氏

 さらに今後の展開として、8Kレグザエンジンでは、クラウドを活用した高画質テクノロジーも採用すると発表された。これは、映像エンジンをクラウドにつないで、それぞれの番組に最適な情報を入手し、コンテンツに併せた高画質化処理を行うようにするというものだ。

 レグザでは「おまかせ」モードを搭載しているが、それをさらに進めて自動画質調整機能を進化させていこうという企画といえる。「これまではAIを活用していましたが、もっとふみこんだ調整を行なうためにクラウドを使用します」と山内氏は説明していた。

 「番組に最適な情報」とは何か気になるところだが、それについてはこれから詳細を詰めていく模様だ。処理の流れとしては、EPG(電子番組表)でジャンルや番組名を識別し、それに応じて各コンテンツに適した絵づくりを加えていくことになる。

 つまり、テレビ側の映像エンジンによる処理をベースとして、そこにクラウドから提供される付加情報を使った信号処理が加わるということだ。そこで肝心なのは、クラウド側にどんな高画質化要因が準備できるかだが、ここについては同社の絵づくり担当者が順次整理していくという。

画像1: 東芝映像ソリューションが、「8K REGZA ENGIN PROFESSIONAL」の技術発表会を開催。88インチの有機ELテレビを使ったタイムラプス映像の上映も行なった

 ここからは想像だが、映画ならアクション、ドラマ、ホラーといったジャンルごとにどんな傾向(画面全体を暗めのトーンにするとか、くっきり系にするとか)に仕上げていくかといった情報も付加できるだろうし、あるいはどの監督の作品なのかまで識別できれば、その監督の絵柄の傾向によってどんなパラメーターが最適かといった処理を加えられるだろう。さらにアニメやドラマなどのシリーズ物なら、複数のエピソードを踏まえた画質調整といった発想もでてくると思われる。

 もちろんそれらに必要な映像解析や絵づくりの情報をクラウドに上げるのは人の力必要だし、それを誰が担当するかも重要になる。当分はレグザの絵づくり担当者がその任に当たるそうだが、将来的にはAI技術も導入して情報蓄積を進めていきたいとのことだった。

 もちろんこれは一朝一夕で実現できることではないだろうが、具体化した暁には8Kレグザエンジンが“究極の映像エンジン”になることは間違いない。常に高画質に進化し続けるテレビとしてのレグザの誕生に期待したいところだ。

 ちなみにクラウドサービスを使った高画質化は8K用に限らず4Kモデルにも搭載可能だ。これが実現できれば、4Kレグザの画質もワンステップ向上することだろう。

画像2: 東芝映像ソリューションが、「8K REGZA ENGIN PROFESSIONAL」の技術発表会を開催。88インチの有機ELテレビを使ったタイムラプス映像の上映も行なった

 続いて登場した東芝映像ソリューション(株)取締役上席副社長の安木成次郎氏は、「私はMUSEハイビジョンの時代からテレビ事業に関わってきました。東芝では20年に渡って映像エンジンを開発・内製化してきました。2000年のデジタル放送スタートの際にジャンプアップがあり、その後も超解像の開発がターニングポイントとなりました。以後は半導体技術も組み合わせて進化させてきています。今後の方向性がクラウドの活用で、深層学習やシーン検出をさらに進化させていきます。次々世代のIC開発にも応用する予定ですので、レグザエンジンのさらなる発展を期待してください」と話してくれた。

画像: 東芝映像ソリューション(株)取締役上席副社長の安木成次郎氏

東芝映像ソリューション(株)取締役上席副社長の安木成次郎氏

 なお、今回の8K有機ELレグザは研究開発用モデルで、8Kレグザエンジンも質感リアライザーなどの処理はほとんど使っていないそうだ。ちなみに会場で再現されていた映像は、HEVC圧縮された150Mbpsの8K/30p映像をUSBで入力し、それを8K/120pに変換していたそうだ。その映像はフォーカス感に優れ、ピーク感もある、抜けのいいもので、有機ELパネル自体のむらもほとんど気にならなかった。

 参考までにこのエンジンを搭載した8Kテレビの発売予定を聴いてみたが、商品化時期は未定(東京オリンピックに間に合うかも含めて)で、市場性やタイミングをみながら検討していきたいとのことだった。

 タイムラプス展「そこある光」は、11月17日(日)まで開催されており、8K有機ELレグザは期間中ずっと会場に展示されているそうなので、興味のある方は渋谷まで足を運んでみてはいかがだろう。

画像: タイムラプスクリエイターの清水大輔氏(右)と東芝映像ソリューション(株)商品企画部ブランド統括マネージャーの本村裕史氏(左)。本村氏によるとレグザのデモコンテンツを探しているときに清水氏の作品に出会い、素材を提供してもらうことにしたという。清水氏は、「レグザでは見えなかった光などを再現でき、自分の想像を超えて、自分のやりたい映像を再現してくれる貴重な存在です」と話していた

タイムラプスクリエイターの清水大輔氏(右)と東芝映像ソリューション(株)商品企画部ブランド統括マネージャーの本村裕史氏(左)。本村氏によるとレグザのデモコンテンツを探しているときに清水氏の作品に出会い、素材を提供してもらうことにしたという。清水氏は、「レグザでは見えなかった光などを再現でき、自分の想像を超えて、自分のやりたい映像を再現してくれる貴重な存在です」と話していた

This article is a sponsored article by
''.