マークレビンソンは新たにNo5000シリーズを発表。その第1弾として、プリメインアンプのNo5805が登場した。

 新5000シリーズは、これまでの50シリーズや500シリーズに比べてよりいっそう求めやすい価格が設定され、かつ本機では、アナログディスクやハイレゾ、ストリーミング再生に加えて、aptXHD対応ブルートゥース接続機能も備えるなど、幅広い層にアピールする1台となっている。

 本機のプリアンプ部は、フルディスクリート、ダイレクトカップリング、デュアルモノラル構成のクラスA回路と、マークレビンソンの伝統を継承し、MM/MC対応フォノイコライザーも装備する盤石の構成。なお、本機のフォノイコライザー部は、MM/MCのゲインコントロールとサブソニックフィルターのON/OFFをセットアップメニューから行なえるほか、MMの負荷容量とMCの負荷抵抗の切替えも、リアパネルに配置されたディップスイッチで細かく設定が可能だ。パワーアンプ部も、プリアンプ同様フルディスクリート、ダイレクトカップリングのAB級増幅で、大容量電源トランスと大容量コンデンサーを備え、8Ωで125W+125W(4Ωでは250W+250W)のパワーを発する。 

 本機は、上位モデルであるNo585.5に肉薄するスペックや機能を有しながら、価格はその約半額で、外観も500シリーズのような重厚さはないが、洗練されたいいデザインである。25mm厚のフロントパネルや手触りのいいノブは、アルミの削り出しをブラスト加工し、アルマイト処理したマークレビンソン独特と言えるもので、フロントパネルのディスプレイに採用されたガラス共々ひじょうに高級感がある。

明るめのキャラクターを持った
切れ味鋭い鮮烈な音

 スピーカーはモニターオーディオPL300Ⅱを、ユニバーサルプレーヤーにパイオニアUDP-LX800をセットして、最初はアナログ接続(XLR)でCDを聴く。『ボビノ座のバルバラ』は、歌声に品位の高さが感じられ、明快で汚れのない美音。ロバート・グラスパーを中心に現代のブルーノートの精鋭が集結した『R+R=NOW』も、傾向としては明るめの音で、切れ味のいい、鮮烈、鮮明な音が飛び出した。次にデジタル同軸接続として、No5805内蔵のDACで聴くと、こちらの方がよりワイドレンジで、かついい意味で少し優しい音に変化。空間感も広大に感じられた。

 続いてフィダータのサーバーとUSB接続してハイレゾを再生。ビル・エヴァンス『ワルツ・フォー・デビイ』から「ポーギー」では、1961年のヴィレッジ・ヴァンガードに満ちた濃密な空気感や暗騒音、聴衆のざわめきが時空を超えて生々しく伝わってきた。音の傾向はCDをデジタル同軸接続で聴いたときとよく似た、情報量が多い高品位な音。特にエヴァンスのピアノはとても優しく、そして限りなく美しい。ヒラリー・ハーン独奏でヴュータンのヴァイオリン協奏曲から第3楽章では、実にスピーディーで艶やかなヴァイオリンの音色が飛び出してきた。オーケストラの低域の伸びも文句なし。

 アメリカ南部のブルージーなロックを聴かせる、アラバマ・シェイクス『サウンド&カラー』は、劇的に荒々しい音が飛び出すと身構えたら、これが意外にハイファイでスムーズな音。これはこれでまことに結構な音である。

 最後にBDの2 ch 音声を視聴。ノラ・ジョーンズ『ライヴ・アット・ロニースコッツ』から「イッツ・ア・ワンダフルタイム・フォーラヴ」や「フリップ・サイド」では、あまり広いとは言えないジャズクラブ、ロニー・スコッツだが、店内に満ちた観客の熱気がダイレクトに伝わってきた。ノラ嬢の歌声は一聴クールだが、その実、ジワリと熱い、という感じが素晴らしい。ドラムのブライアン・ブレイドのグッと抑えた、しかし気合の入ったドラミングも生々しく、クリス・トーマスがアップライトベースとエレクトリックベースを使い分ける、その音色の違いも実に明瞭で、最前列の特等席で鑑賞する気分に浸ることができた。

 マークレビンソンとしては思い切った価格設定の5000シリーズだが、本機を聴く限りはマークレビンソンクォリティはしっかりと維持されている。続いて登場すると思われるデジタルディスク/ファイルプレーヤーにも大いに期待してよさそう。

画像: 明るめのキャラクターを持った 切れ味鋭い鮮烈な音

INTEGRATED AMPLIFIER
MARK LEVINSON No5805
¥850,000+税

●出力:125W+125W(8Ω)、250W+250W(4Ω)●接続端子:アナログ音声入力3系統(RCA×2、XLR)、デジタル入力4系統(同軸、光×2、USBタイプB)、プリアウト1系統(RCA)、フォノ入力2系統(MC/MM)●対応サンプリング周波数 量子化ビット数:〜384KHz 32ビット(PCM)、〜11.2MHz 1ビット(DSD)●寸法/重量:W438×H145×D507mm/28.1kg ●備考:バランス入力HOT=2番ピン
●問合せ先:ハーマンインターナショナル株式会社 TEL.0570(550)465

画像: RCA、XLRのアナログ入力のほか、ハイレゾ入力対応のデジタル入力も備える。また、ハイレゾフォーマットMQA(Master Quality Authenticated)のデコードに対応することも特徴だ。フォノ入力はDIPスイッチによりインピーダンスの設定が可能


RCA、XLRのアナログ入力のほか、ハイレゾ入力対応のデジタル入力も備える。また、ハイレゾフォーマットMQA(Master Quality Authenticated)のデコードに対応することも特徴だ。フォノ入力はDIPスイッチによりインピーダンスの設定が可能

画像: フロントパネル側に大型のトロイダルコア電源トランスを、その後方にアナログ/デジタル系を独立させた入力基板などを配置。本体の両脇には、ヒートシンクを設けた電力増幅回路を配するオーソドックスな構成を採る

フロントパネル側に大型のトロイダルコア電源トランスを、その後方にアナログ/デジタル系を独立させた入力基板などを配置。本体の両脇には、ヒートシンクを設けた電力増幅回路を配するオーソドックスな構成を採る

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