ヨーロッパ映画賞にその名を遺す撮影監督「カルロ・ディ・パルマ」。イタリア映画の黄金時代を牽引した天才たちの一人として、その人生を、その仕事を、ドキュメンタリーとしてまとめた映画「水と砂糖のように」が、11月30日より東京都写真美術館ホールほかにて公開される。

 彼の映画人生は、わずか15才で初めて参加した「郵便配達人は二度ベルを鳴らす」(1942)から始まり、以後、さまざまな名監督・巨匠とのコラボを通じて、生涯で100本以上もの作品を残している。

 本作では、彼が撮影した、ロッセリーニ、ヴィスコンティ、デ・シーカ、ジェルミ、アントニオーニ、スコラ、ベルトリッチ、アレンなどの25作品の一部も挿入しており、単に伝説的なひとりの撮影監督の伝記にとどまらぬ、映画黄金時代を追体験できる感動的な仕上がりとなっている。

■プロデューサーインタビュー ~アドリアーナ・キエサ(プロデユーサー)~

――なぜこのドキュメンタリーなのですか?
 カルロ・ディ・パルマは、世界中で有名になった“イタリアン・スタイル”の映画を創造した偉大な天才たちの一人です。この映画を観ることは、たんにディ・パルマの人生物語を追うという事ではなく、彼が協力した100本以上の映画、ネオレアリズモの幕開けを告げたヴィスコンティの傑作『郵便配達は二度ベルを鳴らす』から、巨匠監督たちが取り組んだイタリアン・コメディ、映画史におけるランドマークとなった作品、たとえばアントニオーニの『赤い砂漠』や『欲望』などを通して、イタリア映画の真の旅路を歩むことなのです。

 『水と砂糖のように』は、映画への純粋な愛と強い情熱に振り回されるすべての若者たちにとって、そこから勇気やインスピレーションを得るだけではなく、レッスンとなるのです。犠牲、一貫した価値観、自らの芸術的な選択へ献身、技術の習得によってのみ到達できる、想像を超えた高みを見せられることになるのです。

――なぜファリボルズ・カムカリ監督を選んだのですか?

 彼に監督を依頼したのは、彼の繊細な芸術的能力だけでなく、彼の国際的な背景がより普遍的な視野をもたらすと考えたからです。実際彼は直接カルロを知らないのですが、彼の映画を研究していたし、カルロの洗練された技術、陰影と明るく暖かい色彩、それぞれの映画に異なる特質と深い意味をもたらす独自の画像、つまりその“光、深さ、魔法”から強い影響を受けていました。

 アドリアーナ・キエサは、カルロの生活と仕事に関する綿密な調査を引き受けた。そしてカムカリ監督につきそいカルロの人間像の側面を呼び覚ました。それは一般にはあまり知られていないであろう、彼の強烈な人間性、途方もない活力、自然な優雅さ、そして彼と人生を共にした彼女ならではの物語、想い出、大切な感情だ。

 カルロ・ディ・パルマのフィルモグラフィーには、101本の映画と40本のドキュメンタリー、そして特別プロジェクトが含まれる。

■監督インタビュー ~ファリボルズ・カムカリ(監督)~

 これは伝記映画ではありません。

 カルロ・ディ・パルマの生涯と仕事を顧みて再構築することは、映画の「黄金時代」の手法と価値を呼び覚まし再発見することです。もちろんイタリア映画のことですが、それは世界中の映画の作り手に衝撃と影響を与えた映画なのです。

 これは、生き方のレッスンです。情熱と、シンプルさと、厳しさを持って、仕事をやり人生を生きることです。

 ディ・パルマは、ローマに深く根差した彼のルーツによって、その国際的な視野に深く結びついています。

 これはまた芸術のレッスンです。妥協を拒否する芸術です。

 それは、映画言語における技術と芸術両面の実験や革新を通じ、物語を語る最良の方法を毎回探り続ける長い物語。厳密で品質を一切損なうことのない物語です。

 私とディ・パルマとの最初の出会いは、映画学校の1年生の時に見た『欲望』です。この映画はあまりに衝撃的で永遠に私の人生の一部になりました。そしてその映像がとても印象深く、私はディ・パルマに会ったことはなかったのですが、その映像について論文を書いたのです。

 何年もたって、私はこのドキュメンタリーを作るように依頼されました。それは、『欲望』やミケランジェロ・アントニオーニについて語るというだけではなく、映画史上においてクラシックになっている多くの映画を語ることです。それらの映画は世界中の監督たちに愛され彼らに大きな影響を与えている作品です。

 ディ・パルマが撮影し参加している100本以上の映画には、ネオレアリズモの最も核心的な作品、イタリアン・コメディ、アントニオーニの名作、そしてウッディ・アレンの最良の作品群が含まれます。

 このプロジェクトに5年以上取り組んできて気づいたことがあります。ディ・パルマがインタビューで語った内容が、映画にとってどれほど意味があり必要なことか、そして今、おそらくかつてないほどそれらが重要であるということです。

■カルロ・ディ・パルマが関わった作品たち
ルキノ・ヴィスコンティ
郵便配達は二度ベルを鳴らす
揺れる大地

ロベルト・ロッセリーニ
無防備都市
戦火のかなた

ヴィットリオ・デ・シーカ
靴みがき
自転車泥棒
ミラノの奇蹟

ピエトロ・ジェルミ
イタリア式離婚狂想曲

ミケランジェロ・アントニオーニ
さすらい
赤い砂漠
欲望

エットーレ・スコラ
ジェラシー

ベルナルド・ベルトリッチ
ある愚か者の悲劇

ウッディ・アレン
ハンナとその姉妹
ラジオ・デイズ
アリス
ウッディ・アレンの影と霧
夫たち、妻たち
マンハッタン殺人ミステリー
ブロードウェイと銃弾
誘惑のアフロディーテ
世界中がアイ・ラヴ・ユー
地球は女で回ってる

映画「水と砂糖のように」
11月30日より東京都写真美術館ホール ほかにて全国限定公開

監督・脚本:ファリボルス・カムカリ
プロデューサー:アドリアナ・キエサ 
出演:ケン・ローチ、ヴィム・ヴェンダース、ベルナルド・ベルトリッチ、ウッディ・アレン他多数
字幕:岡本太郎
配給:オンリー・ハーツ
宣伝:山形里香
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
推薦:日本映画撮影監督協会
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2016年/イタリア/90分/1:1.78

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