前回の記事をアップしてから一ヶ月と少し。週末の各種イベントを待つ身としては、梅雨明けが待ち遠しい季節。これからが夏本番であり、“夏フェス”も本番ということになる。ここでは、この7月に行われるフェス2本をご紹介しよう。日程は異なるので、どちらも参加したいと思われた方もご安心を。

「ハイレゾ」で聴くだけでも楽しめる
『FUJI ROCK FESTIVAL ’19』

画像: 夏フェスと言えば、『フジロック』。メイン会場の『GREEN STAGE』収容人数は約4万人と言われている。

夏フェスと言えば、『フジロック』。メイン会場の『GREEN STAGE』収容人数は約4万人と言われている。

まずは7月26日(金)〜28日(日)で開催される『FUJI ROCK FESTIVAL ’19』。通称フジロック。日本の夏フェスと言えば真っ先に名前が挙がる定番のイベントだが、知ってはいても参加したことはないという方も多いのではないだろうか。なにせ開催地が新潟県の苗場スキー場であり、都市部から結構距離のある山の中なのだ。

とはいえ、インドア派のロッカーも関係ないと見過ごすのはもったいない。素晴らしい現在進行形の音楽を世界中から集めてくれているのだから、このキュレーターとしての機能だけでも活かしてほしい。そこで、本サイトらしく「ハイレゾ」で楽しめるという発想で注目ミュージシャンを紹介していきたい。

もちろん、レゾリューションが高ければいいってものではないにしても、現在進行形のミュージシャン、特に“売れている”ミュージシャンに関しては、ハイレゾも期待できることが多いと実感している。録音、マスタリングともに、もともとが24ビット音源でのデジタル制作のものは多いだろうし、なんとなくそれがそのまま世に放たれている印象はあるが……。リスナーとしてはありがたく享受させていただくばかり。

画像: 2019年のフジロック出演者一覧。これらの名前を音楽ストリーミングサービスで追うだけでも楽しめる

2019年のフジロック出演者一覧。これらの名前を音楽ストリーミングサービスで追うだけでも楽しめる

メジャーどころは音もいい!?
『GREEN STAGE』

そうした代表選手として挙がるのが、メインの『GREEN STAGE』に出演するミュージシャンだろう。今年であれば、例えばジャネール・モネイ。『ドリーム』『ムーンライト』など、俳優としてもちょいちょい見かける彼女が、どのようなステージングを魅せてくれるのか期待が高まる。現代のミュージシャンらしく、幅広いジャンルを吸収した音楽性はファーストアルバムから感じられるが、ハイレゾで聴く、という観点からすれば目下の最新アルバム『Dirty Computer』がおすすめ。冒頭はブライアン・ウィルソンのコーラスで始まるのだが、すぐに音楽がより緻密に作り上げられていることを実感できる。

『GREEN STAGE』でもう一組注目しておきたいのは、「フューチャー・ソウル・バンド」ハイエイタス・カイヨーテ。名前からすればネオ・ソウルの親戚のようだが、それをなぞるのではなく、電子音楽の要素も柔軟に取り入れた懐の深さを感じさせる。そのいっぽうで、生楽器の演奏技術が高さから、正統的ソウル・ミュージックの流れを汲むことも同時にしっかりと感じさせる。変拍子を駆使した曲などもあるのだが、耳に馴染みのいいヴォーカルの力もあって、あくまでポップに聴かせてくれるのが彼らのいいところ。『Choose Your Weapon』の「Molasess」など、通しの演奏を録音したものだというから大したもの。

最新エレクトロニカはいい音で聴くべし
『WHITE STAGE』

『GREEN〜』に次ぐ『WHITE STAGE』の出演者は毛色が変わってくる。ロックフェスの王道という感じのしない、DJセットでのエレクトロニカやオルタナバンドなどが多数出演するのだ。オーディオ趣味でクラシックやジャズが好まれるのは、ダイナミックレンジが広いということが大きな理由の一つだろう。しかし、昨今では技術の進化とともに、デジタルでしかできない、オーディオ的に聴きごたえのある録音物も登場してきていることに注目したい。

その例として、すぐに思いつくのはジェイムス・ブレイクの作品。ファーストアルバム『James Blake』はハイレゾこそリリースされていないが、ここに収録された、驚くような低音はオーディオファンにも衝撃だろう。きわめて人工的に、緻密に作り込まれた音楽は、ぜひ優れたオーディオ装置で体感してほしい。いまのところ、ハイレゾで配信されているのは『The Colour in Anything』のみ。空間を浮遊するように自由に貼り付けられた音を楽しめるのは、オーディオ趣味の特権だ。

そして、やはり気になるのはトム・ヨーク。フジロックへは「THOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXES」名義での出演で、新譜『ANIMA』をリリースしたばかり。本作は現在、音楽ストリーミングサービスQobuzでのハイレゾ配信を確認している。早晩、他サイトでの販売もはじまるのではないだろうか。ボディソニックをともなう強靭な低音は、やはりスピーカーリスニングで味わいたいところ。

なお、Netflixでは新譜と同名の短編映画『ANIMA』が公開中。ほぼトム・ヨークのミュージックビデオといった体で、音楽の世界によりどっぷりと浸かれる。こちらはさらに空間が拡張され、体感型となる5.1chサラウンドでの配信。もちろん、5.1chでの聴取を強く推奨する。

フジロックはジャズもアツい!
『RED MARQUEE』

さらに小規模ステージとなる『RED MARQUEE』の出演者の中で気になったのは、深夜の「SUNDAY SESSION」で登場するThe Comet is Coming。サックス奏者のシャバカ・ハッチングスが率いる、サックス、ベース、シンセサイザーのトリオだ。インパルスからメジャーデビューアルバム『Trust In The Lifeforce Of The Deep Mystery』をリリースしているものの、ジャズというよりは立派なエレクトロニカバンドの様相。やはり遊びのあるシンセサイザーの音色が面白いのだが、「Timewave Zero」などで聴ける、アドリブ/インタープレイがこのバンドの真骨頂だろう。2016年のカマシ・ワシントン、2017年のサンダーキャットに連なる「ジャズ枠」とでもいうべきか、フジロックでは“ジャズがアツい”ことを推しておきたい。なお、シャバカの別バンドSons Of Kemet(チューバ+ツインドラム)の『Your Queen is Reptile』もハイレゾで聴ける。

そして、最後に取り上げるのは主要ステージでもっとも奥まった場所にある『FIELD OF HEAVEN』。出演者も通好みになっていくのだが、そんな音源でもちゃんとハイレゾで聴けるのだからすごい時代である。ここで取り上げるのは、タイのファンクに影響されたというKHRUANGBIN(クルアンビン)。ファンクと言ってもエキゾチックな音階とリバーブの効いたギターが特徴的で、暑苦しさがない。リバーブの漂いやオン気味で迫るドラムのリズムをじっくりと味わえるのがハイレゾの醍醐味だろう。

2019年のフジロックはチケット売り切れ間近。しかし、今年もYouTubeでの生配信が実施される予定だ。チケットを買い逃した!という方もハイレゾで、あるいはYouTubeで、自宅で楽しむ手は残されている。

水かけ×音楽という唯一のイベント
『S2O JAPAN SONGKRAN MUSIC FESTIVAL 2019』

画像: 昨年の『S2O JAPAN SONGKRAN MUSIC FESTIVAL』の様子。今年は会場を移し、県立幕張海浜公園 S2O JAPAN特設会場でイベントが実施される

昨年の『S2O JAPAN SONGKRAN MUSIC FESTIVAL』の様子。今年は会場を移し、県立幕張海浜公園 S2O JAPAN特設会場でイベントが実施される

タイの話題からの流れで、ぜひ紹介したいイベントがもうひとつ。今年で2回目となる『S2O JAPAN SONGKRAN MUSIC FESTIVAL 2019』である。こちらの開催は7月13日、14日の2日間。簡単に言うと、タイ発祥の水かけ祭り「ソンクラーン」と夏フェスが融合した催しだ。音楽ジャンル的には完全にEDM。記者がEDMに明るくないため出演者詳細は省略させていただくが、それでもあえて取り上げてしまうほどのイベントであるとご理解いただきたい。

去る5月にバンコクで行われた本国の『S2O』に参加してきたのだが、これが最高に楽しかった!こちらのヘッドライナーが馴染みのあるファットボーイ・スリムだったことも密に関係しているけれど。古典的ソウル・ミュージックから現代のロックまでをサンプリングし、散りばめる構成は音楽好きほど楽しめるもの。もちろん、そうでなくてもシンプルに身をまかせるだけで気持ちいい……素晴らしいプログラムだった。

画像: こちらはバンコクでの様子。写真からでも、結構な水量であることが伝わるはず。

こちらはバンコクでの様子。写真からでも、結構な水量であることが伝わるはず。

そして、この『S2O』は、やはり水の扱いがキモとなっている。音楽の起伏に応じて会場の各所に設置された放水装置から結構な量の散水がされるのだ。これが、客席の前方“着水”地点に入ると、もはやシャワーを浴びているほどの水量。それだけでもアトラクションとしてめちゃくちゃ”アガる!”というわけなのだ。

画像: 実際の”着水点”に入ると、こんな感じ。サングラスをかけている人が多いのは、目を開けていられないレベルの水量だから。

実際の”着水点”に入ると、こんな感じ。サングラスをかけている人が多いのは、目を開けていられないレベルの水量だから。

音楽に合わせた放水というのがまた巧い。盛り上がるべき箇所でわかりやすく、それをガイドするように水が降り注ぐように感じられた。“パリピ”のノリについていけないのでは……、と心配することなかれ。強めに放たれる水が心配事をすべて流してくれるはず。

画像: 水だけでなく、花火や火柱があがるバンコクでの『S2O』。とにかく、すべてが派手。

水だけでなく、花火や火柱があがるバンコクでの『S2O』。とにかく、すべてが派手。

特に、バンコクの『S2O』ではあまり気にしていない方が多いように思ったのだが、音楽イベントなので、足を踏まれても問題ないように足先を保護できる履物が望ましいだろう。そうするとクロックスのサンダルのようなものになりそうだが、個人的おすすめはイグアナアイ。しっかりと足をホールドしてくれる履き心地、足先の保護性は申し分ない。普段使いのサンダルがわりとしても、室内履きとしても使えるので、これを機に購入するのも悪くないのでは。

それでもEDMはちょっと……という向きには、『S2O』3日目の催しとして、7月15日にWANIMAの単独ライヴも予定されている。滅多にない“水かけ”ライヴ、他の夏フェスにはないレア公演としてファンは注目を。(HiVi編集部・柿沼)

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