画像: 「FUJI&SUN '19」はまさに富士山を臨む素晴らしい環境で実施された ©FUJI&SUN'19

「FUJI&SUN '19」はまさに富士山を臨む素晴らしい環境で実施された ©FUJI&SUN'19

東京の気温は30度越え。今年も「夏フェス」の季節がやってきた。オーディオビジュアルの専門誌「HiVi」を運営する人間が、なぜこうしたライヴイベントを重視するか。それにはれっきとした理由がある。

まず、オーディオ・オーディオビジュアル(ハードウェアいじり)趣味は、すべてCDやDVD、ブルーレイといったソフトありきの話であるし、それを“現場”で体験できるイベントもやはり同じように重要であると考えているから。つまり、「ソフト」「ハード」「ライヴ」(イベントやフェス)の三本柱が揃ってこそ、より文化的な発展が見込める!と信ずるところによるということ。

そんなたいそうなことを言わずとも、人が一生懸命動いているさまにはなぜか感動してしまうものなのではないか。初めてボブ・ディランのライヴを観たときも、「この人は同じ世界に実在していたんだ!」というシンプルな感動を覚えたし。そんなミーハー心を満たすだけでも、ライヴには価値があると思う。

フェスティバルビジネス全盛のいま、さまざま「フェス」が行われているのだが、その中でもすでに実施されたイベントで心に残ったもの、これから大いに期待しているイベントについて紹介してみたい。

じっくりライヴとゆったりローカル感
「FUJI&SUN '19」

画像: メインステージ前の様子。最前列で踊るもよし、後方でねそべって音楽に浸るもよし。かつてのフジロックのフィールド・オブ・ヘヴン〜オレンジコートを彷彿とさせる光景だった。 ©FUJI&SUN'19

メインステージ前の様子。最前列で踊るもよし、後方でねそべって音楽に浸るもよし。かつてのフジロックのフィールド・オブ・ヘヴン〜オレンジコートを彷彿とさせる光景だった。 ©FUJI&SUN'19

まずは、去る5月11日、12日に行われた「FUJI & SUN ‘19」。このイベント今年が初回とあって、知名度はまだまだだろう。しかしながら、ぜひ来年以降も参加したい!と思えるイベントだった。場所が静岡県の「富士山こどもの国」であるし、キャンプを前提にしていそうなので敬遠した方もいるかもしれないが、1日目の日帰りで参加しても十分に楽しめたのだ。

まずは環境がいい。「富士山こどもの国」は、キャンプ場も併設する公営の公園で、自然の中にありつつも、道やトイレなどがしっかりと整備されている。サバイバル的ニュアンスを求めるキャンパーには物足りないかもしれないが、ライヴを楽しむことを目的にした人間にとっては実にちょうどよかった。

ライヴを目的にしているのだから、何より重要なのは出演者だ。このブッキングがまた絶妙だった。1日目のヘッドライナーはなんとエルメート・パスコアール(!)。この名前にピンとこない人には、とことん無関係なセレクト。それでいて刺さる人にはこれだけで参加を決意させる、それだけのインパクトがある。もちろん、記者は後者である。

画像: 2018年に続いて来日したブラジルの巨匠、エルメート・パスコアール。なんと83歳! 単独公演のレビューはHiVi7月号(6月17日発売)に掲載予定 ©FUJI&SUN'19

2018年に続いて来日したブラジルの巨匠、エルメート・パスコアール。なんと83歳! 単独公演のレビューはHiVi7月号(6月17日発売)に掲載予定 ©FUJI&SUN'19

かといって独自路線を突き詰めるわけではなく、1日目は大友良英スペシャルビッグバンドといった一般知名度も高い出演者のほか、cero、WONKなど若者に人気のバンドも出演するバランスのよさ。音楽ファンであれば、出演者を知らずとも大いに楽しめるであろう内容だった。各出演者の出番がきっちり1時間取られていたことも好印象。単なるダイジェストに終わらない、素晴らしい構成だと思う。

残念ながら参加できなかった2日目のラインナップも面白い。こちらのヘッドライナーは「林立夫special session with 矢野顕子& Guests〜Plays 大瀧詠一Early 70’s Songs and more〜」。このほかChara、田島貴男(ORIGINAL LOVE)、Chara、クラムボン、などより一般認知度の高い出演者が揃っていた。

画像: 記者は見逃した、林立夫special session with 矢野顕子& Guests〜Plays 大瀧詠一Early 70’s Songs and more〜 ©FUJI&SUN'19

記者は見逃した、林立夫special session with 矢野顕子& Guests〜Plays 大瀧詠一Early 70’s Songs and more〜 ©FUJI&SUN'19

そして、なによりちょうどよかったのは規模感。人が多すぎず、かといって閑散としているわけではない。参加者各々が会場の3つのライヴステージやキャンプを思い思いにゆったりと楽しめる、終始スローな空気感が漂っていた。

当日はものすごく早起きしたので、途中でそのあたりの草っぱらで寝ていたのだが、それもフェスの一部。そんなことが許されるピクニック的雰囲気もあった。事実、オーディオエンスは家族連れがとても多いように見受けられた。かつては積極的にフェスに参加していたものの、子供ができた今は……。という音楽ファンも参加しやすい環境だったのだろう。

画像: 夜も独特の雰囲気。5月の富士のふもとは相当に冷え込む。 ©FUJI&SUN'19

夜も独特の雰囲気。5月の富士のふもとは相当に冷え込む。 ©FUJI&SUN'19

それ、早く言ってよ!と言われても参加してみたら素晴らしかった、ということなので仕方ない。しかしながら、このフェスはWOWOWが主催として名を連ねており、7月上旬には「WOWOWプライム」で放送されることが決まっている。まずはこちらで会場の雰囲気を楽しんでいただければ幸いだ。これが、オーディオビジュアル雑誌編集部が、本記事をアップした大きな理由のひとつ。7月中旬には静岡放送でステージダイジェストの放送もあるとのこと。受信区域の方はこちらもチェックを。

ともあれ、ぜひとも2020年の開催も期待したい! 関係者のみなさん、よろしくお願いします。

サーフカルチャーにとどまらない
「GREENROOM FESTIVAL」

画像: 横浜赤レンガで行われる都市型フェスティバル「GREENROOM FESTIVAL」。

横浜赤レンガで行われる都市型フェスティバル「GREENROOM FESTIVAL」。

この流れでもうひとつご紹介したいイベントが「GREENROOM FESTIVAL」。サーフ・ビーチカルチャーをルーツに持つ音楽とアートのフェス、というのが主題の15年目を迎える長寿のイベントだ。こちらはご存知の方も多いだろう。個人的にも毎年気にしてはいながらも、なんとなく参加せずにいた。ジャック・ジョンソンやドノヴァン・フランケンレイターなど、まさにサーファーがメインアクトを務めているイメージで、彼らが発するゆるーい感じが「なんとなく楽しそうだな」とは思わせるものの、「必ず行きたい!」とは思わずにいたのだ。「FUJI&SUN」ではゆるさを楽しんだわけだが……。

しかし、今年はちょっと違った。ヘッドライナーを見ると、1日目は若手(とはいえ、89年生まれ)ソウル・シンガーのリオン・ブリッジス。2日目は23歳のギタリスト、トム・ミッシュ。どちらも新世代と呼べるミュージシャンだ。その他、“ミクスチャー”のはしりフィッシュボーンやら、こっちにもChara、ORIGINAL LOVE、ホンダのCMでお馴染SIRUPなど実に多彩。15年目の節目に既定路線とは違った切り口を見せたイベント。ぜひ注目していただきたい!というわけなのである。

画像: 昨今珍しい、若手の「ギタリスト」トム・ミッシュが出演する。

昨今珍しい、若手の「ギタリスト」トム・ミッシュが出演する。

で、そのイベントはいつなのよ、というと、5月25日、26日の二日間。今週末である。しかもチケットは全種ソールドアウト!ここでイベントの存在に気づいた方には申し訳ないのだが、「今年は行きたい!」と思った方が多かったということだろう。

現場の盛況に期待が高まるところ。ソールドアウトの人気イベントなのだから、きっと来年以降も継続するはず。今年行けなかった、という方も、2020年以降のGREENROOM FESTIVALの動向にも注視していていただきたい。(HiVi編集部・柿沼)

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