パナソニックから、有機ELビエラの新製品が3シリーズ6モデル発表された。それぞれの型番と価格は以下の通りで、全機種とも7月19日の発売を予定している。
TH-65GZ2000(市場想定価格60万円前後)
TH-55GZ2000(市場想定価格40万円前後)
TH-65GZ1800(市場想定価格53万円前後)
TH-55GZ1800(市場想定価格33万円前後)
TH-65GZ1000(市場想定価格49万円前後)
TH-55GZ1000(市場想定価格29万円前後)
いずれも4K解像度の有機ELパネルを搭載した製品で、4Kチューナーも2基搭載する。つまり、4K放送を視聴しながら、外付けUSB HDDに裏番組録画も可能ということだ。さらに地デジ/BS/110度CSデジタルチューナーを3基内蔵している。
同社ではこれまで有機ELビエラを2シリーズ発売していたが、今回はそこにもうひとつ上位モデルとして「GZ2000」が加わっている。ここではそのGZ2000シリーズについて詳しく紹介したい。
GZ2000シリーズ最大の特徴は、パネルに「Dynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ」を搭載している点となる。これは、パナソニックが自社工場で組み上げた有機ELパネルを指す。
これまで有機ELパネルは、パナソニックを含めて、パーツ(モジュールユニット)として外部メーカーから供給を受けていた。テレビメーカーは、そのパネルに独自の制御回路等を組み合わせることで、暗部階調や白ピークの再現性などにオリジナルティを出していたわけだ。
しかし今回の「Dynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ」は、モジュールユニットではなく、オープンセル方式で有機EL部を購入し、周辺回路、熱対策などはパナソニック独自で設計した構造や素材を使って組み上げている。
そのパネル制御技術には「Dot ContrastパネルコントローラーPRO」があてがわれている。これは、画素単位で高いコントラスト再現性と忠実な色再現を実現するもので、明るい部分でも色ヌケをしない点が特徴という。GZ2000では、パネルに最適化したバージョンを採用することで、明るく鮮やかな映像を実現している。
また品質管理については、製造ラインでパネル一枚一枚を測定し、ホワイトバランスや階調再現の調整を行なっているという。さらにGZ2000では、業務用モニターに近い階調再現を実現するために、オリジナルの調整工程を追加している。
もうひとつ、業務用モニターにも使われている3次元カラーマネジメント回路の3D-LUT(ルック・アップ・テーブル)を有機ELパネルの特性に合わせて進化させ、HDR映像の明るい部分でも色飛びをせず、階調をきちんと再現できる「ヘキサクロマドライブ プラス」を投入した。
その結果、GZ2000では有機ELパネルの発光性能が向上し、コントラスト再現も改善された。「漆黒から眩い光の輝きまでをリニアに再現する」という開発目標にも近づいているそうだ。製品発表会で各種デモ映像を見せてもらったが、感覚的には昨年モデルから2〜3割ピークの再現性がよくなっているように感じた。
また暗部階調についても顕著な改善が確認できた。映画作品で、これまでの有機ELテレビでは暗がりに沈んで見えなくなっていた衣装の傷がGZ2000ではしっかり認識できたし、背景の壁のディテイルもよりリアルに再現できている。ピークから最暗部に至るまで、情報再現力は確実に改善されている。
HDRソースは、同社の有機ELテレビとして初めてドルビービジョンに対応した。さらにHDR、HLGはもちろんHDR10+の再生も可能なので、4方式すべてのHDR映像を楽しめることになる。なおドルビービジョンについては、3種類のモードが選択できるようだ。
地デジなどの2K信号が入力された場合は、「4Kファインリマスターエンジン」で変換した後、4K映像として表示する。その際に、4K映像も含めて入力信号の情報量を解析し、最適な処理を行加えている。具体的には放送が2Kからのアップコンで情報が少なかったら、ディテイルを立てるような処理を行ない、逆に8Kからのダウンコンバートのように細かな情報が多い素材では、過度な強調はしないといった具合だ。
また輝度関係では、SDR信号が入力されると「AI HDRリマスター」でHDR変換を行なう。ここではAIを活用することで、2K/SDR映像も高品位な4K/HDR映像に変換してくれるのだ。なお接続端子はすべてのHDMI入力が4K/60p/HDR信号に対応済みで、複数台の4KレコーダーやUHDブルーレイプレーヤーをつないでも安心だ。
映像品位が向上してくると、音質への要求も高くなるのは当然だ。GZ2000シリーズでは、この点についてもきちんと配慮されている。
まずオーディオシステムについては、テクニクススタッフによるチューンを加えている。同ブランドのフルデジタルアンプである「JENO Engine」を始めとする高音質パーツを多数採用し、そもそもの音質品位を高めている。
スピーカーシステムとしては2ウェイ3スピーカーをフロントL/C/R用として3セット搭載、本体下部に正面向きに内蔵した。この他にダブルウーファー+パッシブラジエーター式サブウーファーを、L/R用として2基備えている。
さらにドルビーアトモスのフルデコード機能を内蔵し、そのためにイネーブルドスピーカー2基を本体後方に上向きにマウントした。つまりGZ2000では、ドルビーアトモスをきちんとデコードし、それを3.2.2システムで楽しめるということになる。地デジなどの2chやBS放送の5.1ch音声についても、3.2.2にアップミックスして再生可能だ。
なおGZ2000では設置場所に応じて音場補正を行なう「Space Tune」機能も持っている。設置の際に簡単な質問に応えるだけで、部屋の高さや音の反射特性に合った最適な音場を再現してくれる。なおこれらのオーディオシステムの実用最大力は140Wと、テレビとしては桁外れな値になっている。
4K解像度はもちろん、自社製造パネルによるピーク、暗部階調の再現性の進化、それをベースにした4種類のHDR信号への対応など、GZ2000は有機ELテレビとしてオーディオビジュアルファンが求める要素にほぼフル搭載してきている。
その期待の新製品がどんな画質・音質を楽しませてくれるのか、StereoSound ONLINEでも視聴機を入手次第、リポートをお届けしたい。どうぞお楽しみに。