JリーグとNTTグループは、Jリーグが著作権を所有するすべてのデジタルアセットを集約した「JリーグFUROSHIKI」を活用した取組の第一弾として、高臨場・高精細ライブビューイング「Jリーグデジタルスタジアム」を開催した。

画像: 会場には5つの巨大なスクリーンが設置され、サポーターはその前のエリアに座って試合を鑑賞していた

会場には5つの巨大なスクリーンが設置され、サポーターはその前のエリアに座って試合を鑑賞していた

 「Jリーグデジタルスタジアム」とは、スタジアムで行なわれている試合を、スタジアムから離れた場所にある屋内施設でリアルタイムに再現しようという試みだ。快適な環境で、あたかもスタジアムにいるかのような感覚を体感しながら観戦・応援できるのはもちろん、各種ホスピタリティを付随したハイエンドな映像やデータを活用した観戦体験といった新しいサービスも提供できる空間となっている。

 また「Jリーグデジタルスタジアム」なら、既存のスタジアムでの観戦が難しかった障害のある方や家族連れでも負担を低減した観戦機会を享受できるわけで、その点も注目を集めそうだ。

 そして編集部も、本日(5月12日)午後に開催された「Jリーグデジタルスタジアム」に参加してきた。場所は大手町プレイスで、対戦カードは「明治安田生命J1リーグ 第11節 ヴィッセル神戸 vs 鹿島アントラーズ@ノエビアスタジアム神戸」だ。

画像: スクリーンに向かって左サイドからの様子。天井にもステイが組まれ、アトモス用のトップスピーカーが取り付けられている

スクリーンに向かって左サイドからの様子。天井にもステイが組まれ、アトモス用のトップスピーカーが取り付けられている

 会場となったカンファレンスセンター2Fホールには、スクリーンの大画面とドルビーアトモスによるサラウンドシステムが準備され、試合の様子が間近に体験出来るようになっていた

 スクリーンは5面が並び、その横幅は合計約35mという巨大なもの。中央にピッチ全体の俯瞰映像(4K解像度)が、その両脇にはJリーグのオフィシャルカメラからこの会場用にスイッチングした映像を写し出すサブスクリーンとデータ表示用のスクリーンが2面(2K)配置されている。なおピッチ映像はアスペクト比48:9の超横長12K映像で、横幅は17mとのことだ。

 その12K映像は、今回のためにノエビアスタジアム神戸に持ち込まれた5台の4Kカメラで撮影した画像をリアルタイムに合成しているそうで、映像自体のつなぎ目などはまったく気にならなかった(プロジェクターによるブレンディングのむらは若干あった)。

 ちなみに映像圧縮方式としてはH.265/HEVCが使われており、会場では4Kプロジェクターを3台同期再生して12Kの映像を投写していたそうだ。4Kプロジェクターはパナソニック製で、会場内後ろ側に5台並んでいる様子はなかなか壮観だ。

画像: プロジェクターはパナソニックのDLPタイプが5台並ぶ。4K投写用にはPT-RQ22Kが使われていた

プロジェクターはパナソニックのDLPタイプが5台並ぶ。4K投写用にはPT-RQ22Kが使われていた

 ピッチ用4Kカメラの映像はフィックスで、全体を捉えるようにセットされている。試合前にスクリーン正面のS席あたりに座ってみたが、視野いっぱいにスタジアムの風景が飛び込んでくるので、実際にピッチを見下ろしているかのような臨場感が体験できた。

 スピーカーはフロアーに12基、天井に8基、サブウーファー6基の12.6.8アトモスシステムという豪華さだ。正確にはフロアー用が正面のスクリーンに沿って5基、後ろ側にそれと正対する形で5基、左右の側面中央あたりに各1基という配置で、トップスピーカーはピッチ用スクリーンの両脇にあたる位置の天井に各2基と、中央の前後に各1基、両サイド中央上側に各1基置かれている。

 試合中は解説等は一切入らず、純粋にスタジアムの歓声や応援といった現場の音だけを再生しており、その意味でも臨場感は増していたといえるだろう。この音については、ノエビスタジアム神戸で収録した信号をその場でドルビーアトモスの5.1.4音声にエンコードして伝送、大手町の会場で12.6.8にリマッピングしているそうだ。

 なお今回の中継では、スクリーンに向かって左側に鹿島サポーター席、右側に神戸サポーター席が映っていた。それを踏まえてサラウンドでも、左側のスピーカーには鹿島サポーターの声を、右側のスピーカーには神戸サポーターの声を若干多めに割り当てているそうだ。こういった配慮もパブリックビューイングならではで、映画とも違うドルビーアトモスの新しい使いこなしといえるだろう。

 それらの映像と音声の伝送には、低遅延、高品質が求められるのは当然で、今回は映像ライブ伝送用や広域イーサネットサービス、映像品質を監視するメディアオペレーションセンターなどのNTTのノウハウが活用されているわけだ。

画像: 天井スピーカーは合計8基使用。スピーカーはメイヤーサウンドのアクティブタイプだった

天井スピーカーは合計8基使用。スピーカーはメイヤーサウンドのアクティブタイプだった

 大手町プレイスには、14時の試合開始1時間前からサポーターが集まり、思い思いの席をキープしていた。そして13時30頃にはゲストとして、Jリーグ名誉女子マネージャー足立梨花さんや元Jリーガーの播戸竜二さん、石井正忠さんが登場し、トークショウが行なわれた。

 3名とも会場内のスクリーンの大きさと4Kの臨場感に驚いた様子。足立さんの、「アウェイの試合はなかなか見に行くことができませんから、こういった快適な環境とこれだけの迫力で試合を楽しめるのはいいですね」という言葉がみんなの気持ちを代弁していたといえるだろう。

 試合は1対0で鹿島アントラーズの勝利に終わったが、90分+アディショナルタイムの間じゅう、サポーターは4Kスクリーン&ドルビーアトモスによる試合中継に熱中していた。プレイが白熱してくると拍手で盛り上げたり、応援しているチームのチャンスには思わず声を上げたりして楽しんでいる様子だった。

 ちょっとだけ気になったのは、中央のチッピ用スクリーンは4K/HDR撮影だったようで、解像度も高く、陰になっているピッチ手前と日光の当たっている奥の客席のどちらも違和感なく再現できていたが、サブスクリーンは2K/SDRカメラの映像が中心だったので、解像度的に甘く感じられるカットもあったし、ユニフォームや客席が白トビを起こしている場面も目についた。将来的にサブスクリーンも4K/HDRになってくれると、いっそうの没入感が得られることだろう。

画像: 左から、日々野真理アナウンサー、播戸竜二さん、足立梨花さん、石井正忠さん

左から、日々野真理アナウンサー、播戸竜二さん、足立梨花さん、石井正忠さん

 試合終了後には再度ゲストの3名が登場。播戸さんは「とにかく臨場感がすばらしかった」、足立さんは「サポーターの席を分けるなどスタジアムに近い感じにしたら、もっと盛り上がったかも」、石井さんは「まだまだ色々な体験が出来そうで、可能性しか感じません」と、それぞれの感想を語ってくれた。

 そして司会の日々野真理アナウンサーの「皆さん今日は楽しんでくれましたか?」という質問に、サポーターみんなが拍手で応えてJリーグデジタルスタジアムは終了となった。

 今回のデジタルスタジアムは、S席が¥6,000、A席が¥3,000(どちらも自由席、前売、大人)という料金だったが、全395席が完売したという。サッカーファンからこれだけの期待を集めているのだから、4Kやドルビーアトモスといった最新技術とスポーツの融合を、さらに進化させていって欲しいと思う。

画像: 4Kやドルビーアトモスを活用した高臨場感ライブビューイングが実現。JリーグとNTTグループが、デジタル技術を集約した「Jリーグデジタルスタジアム」を開催

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