HDMIビットストリーム再生。 進化を遂げたリンのサウランド

 通常の2ch再生から5.1/7.1chのサラウンド再生まで、多彩な音源を快適に、しかもハイクォリティで楽しませてくれるリンの「イグザクト」システム。ステレオ再生と同等の品質と操作性を担保しつつ、本格的なサラウンド再生が楽しめるという、オーディオ再生のひとつの理想を具現化したわけだが、今回、そこからさらに一歩踏み込んで、HDMI端子によるビットストリーム入力がサポートされた。

 DSMシリーズの内部に格納される拡張モジュール(Surround ProcessIng Module)の完成によって、ドルビートゥルーHDやDTS-HDマスターオーディオ等の音声信号デコードが可能となり、リニアPCMマルチ出力を持たないユニバーサルプレーヤーとの理想的な接続が実現。より高精度なサラウンド再生が可能となり、同時に、システム構築の自由度が大きく拡がったと言っていいだろう。

画像1: HDMIビットストリーム再生。 進化を遂げたリンのサウランド

 現段階ではドルビーアトモス、DTS:Xなどのいわゆるイマーシブオーディオのデコードはサポートしていないが、音質に対する意識の高さは、もちろんイグザクトグレード。イグザクトリンクによって提供されるサラウンド再生への期待は、きわめて大きい。

 具体的なシステム構成は以下の通り。
まずイグザクトシステムの司令塔となるのが、DSM、あるいはシステム・ハブにサラウンドモジュールを加えた「ヘッドユニット」。そこにイグザクトボックスと呼ばれる「サラウンド拡張ユニット」を加えて、チャンネル数に応じて通常のパワーアンプやパッシブ型スピーカーを用意することで、サラウンド再生へ発展できるというわけだ(下図参照)。もちろんイグザクトスピーカー(アンプ内蔵のアクティブ型)を複数使用し、そのクォリティをさらに高めていくことも可能だ。

画像2: HDMIビットストリーム再生。 進化を遂げたリンのサウランド
画像3: HDMIビットストリーム再生。 進化を遂げたリンのサウランド
画像: リンのEXAKTによるサラウンドは以前から、HDMIのマルチチャンネルリニアPCM音声を活用することで対応はしていたが、今回、Surround Processing Module(上部写真のモジュール)という新規デコード基板が完成したことで、BDプレーヤーなどからのHDMIビットストリーム音声をサポート。必要なシステムとしては、①ヘッドユニット、②サラウンド拡張ユニット、③必要な構成のサラウンド用パワーアンプおよびスピーカーシステムとなる。そのほか、EXAKTスピーカーとの共存まで考えると、さまざまな組合せでの構築が可能。なお、DSM側のファームウェアも最新Daver68以降のヴァージョンが必須となる

リンのEXAKTによるサラウンドは以前から、HDMIのマルチチャンネルリニアPCM音声を活用することで対応はしていたが、今回、Surround Processing Module(上部写真のモジュール)という新規デコード基板が完成したことで、BDプレーヤーなどからのHDMIビットストリーム音声をサポート。必要なシステムとしては、①ヘッドユニット、②サラウンド拡張ユニット、③必要な構成のサラウンド用パワーアンプおよびスピーカーシステムとなる。そのほか、EXAKTスピーカーとの共存まで考えると、さまざまな組合せでの構築が可能。なお、DSM側のファームウェアも最新Daver68以降のヴァージョンが必須となる

 また近々、新世代のDSMとも言えるセレクトDSMでも、サラウンドデコード機能が装備される計画があるという。同モデルの場合、最大6chのパワーアンプが内蔵できるため、通常のパッシブ型スピーカーによる5.1chシステムの接続が可能。つまりスマートな単一筐体で、5.1chの本格的なサラウンドシステムが組めるということ。詳細が分かり次第、HiVi本誌でも詳しく紹介する予定だ。

ふたつのパターンで検証するリンの新サラウンド

 ここでは①新たにサラウンドシステムを構築する場合と、②DSMを中心にした既存の2chシステムをベースに、サラウンド対応に発展する場合、という2通りのパターンを想定して、実際にシステムを組み、それぞれのパフォーマンスを検証していく。

 まず新規にシステムを組む①のケースだが、ヘッドユニットには、サラウンド拡張ユニットを装備したアキュレイト・システム・ハブを用意した。外観はほとんどアキュレイトDSMと変わらないが、価格はなんと45万円も安い。

画像: システム①は、新規でサラウンドシステムを構築する例としての組合せを考えた。サラウンド拡張ユニットに使うAKURATE EXAKTBOX-Iは、8ch分のDACとパワーアンプを内蔵しており、ヘッドユニット側にDACを内蔵する必要がない。ということでヘッドユニットには、HDMIや同軸、光デジタル入力を備えるが、アナログプリ出力端子を搭載しない(つまりDAC回路を非搭載)のAKURATE SYSTEM HUBを起用した。同じ形態の製品として上級グレードのKLIMAX SYSTEM HUB(¥1,600,000+税)もラインナップされている

システム①は、新規でサラウンドシステムを構築する例としての組合せを考えた。サラウンド拡張ユニットに使うAKURATE EXAKTBOX-Iは、8ch分のDACとパワーアンプを内蔵しており、ヘッドユニット側にDACを内蔵する必要がない。ということでヘッドユニットには、HDMIや同軸、光デジタル入力を備えるが、アナログプリ出力端子を搭載しない(つまりDAC回路を非搭載)のAKURATE SYSTEM HUBを起用した。同じ形態の製品として上級グレードのKLIMAX SYSTEM HUB(¥1,600,000+税)もラインナップされている

画像: AKURATE SYSTEM HUBとAKURATE EXAKTBOX-Iの接続はEXAKTリンク1本で簡単。EXAKTリンクは、RJ45端子を用いた、いわゆるLANケーブルで最大8ch分の信号伝送が可能。●問合せ先:(株)リンジャパン TEL 0120-126173

AKURATE SYSTEM HUBとAKURATE EXAKTBOX-Iの接続はEXAKTリンク1本で簡単。EXAKTリンクは、RJ45端子を用いた、いわゆるLANケーブルで最大8ch分の信号伝送が可能。●問合せ先:(株)リンジャパン TEL 0120-126173

 最大の理由は、出力をイグザクトリンクに絞ったことで、DAC回路の必要がなくなったため。入力についてはDSMと同等だが、アナログ出力はいっさい持っておらず、汎用パワーアンプとの接続は不可能。イグザクトボックス、あるいはイグザクトスピーカーとの接続に限定されることになるが、イチから新しいシステムを構築するのであれば、このお値打ち感をみすみす見逃すことはないだろう。

 今回、アキュレイト・システム・ハブからの出力を受けるのが、8ch分のDACおよびパワーアンプを装備したイグザクトボックスI(Iはインテグレーテッドアンプの意味)だ。いわゆるイグザクトエンジンを備えたコンポーネントで、ステレオ再生ではデジタルクロスオーバーとして使用可能だが、ここではDS用設定ソフトウェア、リンKonfig(コンフィグ)により、7.1chのサラウンド再生を選択する(最大7.1chまで)。

 さらにタイムアライメント(スピーカーの距離補正)、スペース・オプティマイゼーション(80Hz以下の低音の最適化)を設定する。スピーカーはHiVi視聴室のリファレンスシステムである、モニターオーディオのプラチナムシリーズIで7.1chのシステムを組むこととした。

画像: システム①ではモニターオーディオのプラチナムシリーズIを使って7.1chサラウンドシステムを組んだ。具体的には次の通り。PL300I(L/R)、PL200I(LS/RS)、PL100I(LSB/RSB)、PLC350I(C)、PLW215I(LFE)。HIVI視聴室のリファレンススピーカーだ

システム①ではモニターオーディオのプラチナムシリーズIを使って7.1chサラウンドシステムを組んだ。具体的には次の通り。PL300I(L/R)、PL200I(LS/RS)、PL100I(LSB/RSB)、PLC350I(C)、PLW215I(LFE)。HIVI視聴室のリファレンススピーカーだ

 では手始めにUHDブルーレイ『リメンバー・ミー』のチャプター7、日本のお盆にあたる〝死者の日〟に、主人公、ミゲル少年が音楽コンテストで自分の演奏を披露するために、ギターを探して街中を駆け回るシーンを再生してみよう。音源はドルビートゥルーHD。

 年に一度のお祭りで賑わう街は、歓声、歌声で溢れ、その背後には、空高く打ち上げられる花火の音が拡がる。セリフ、効果音、音楽と、さまざまな音源が複雑に入り交じるが、持ち前の分解能の高さは健在だった。

 細かな音の描写が明瞭で、空間が広い。小振幅、大振幅を問わず、音源をていねいかつ冷静に描きだしながら、お祭りで賑わう街全体を雄大なスケールで立体的に描き出す。

 とりわけヒューン、ドーンと響く花火の効果音は、その方向、高さ、距離感まで感じさせるほどの分解能の高さで、コントラストも実に鮮やかだ。ほどよく締まり、絶妙なタイミングで身体中に浸透する低音は、まさにスペース・オプティマイゼーションの恩恵。しかも花火の低音だけが突出することなく、細かく作り込まれた他の効果音とも無理なく馴染んでいるのがいい。

 続いてUHDブルーレイ『アリー/スター誕生』で、アリゾナでのコンサートに主人公の2人がバイクで向かうシーンから始まるチャプター8から再生スタート。音源はドルビートゥルーHD。吹き上がりのいいバイクのエンジン音といい、躍動感に富んだバスドラの響きといい、ストレスのない音の出方からサラウンドシステムとしての潜在能力の高さを感じさせる。

 ドライブインに立ち寄る2人。静かな空間で何気ない会話が続くが、その背後には人の動き、車の走行音がかすかに聴こえ、小音量の音楽が拡がる。ドライブインの生々しい空気感をダイレクトに描き出す再現性で、希望に満ちた2人の関係性を自然に際立たせる。そして屋外に出たときの風の音。強風とはいえないが、巨大な発電用の風車を動かすほどの力感を伴なった風。そのトルクフルな感じも、その押し出しの強い風音から伝わってくる。

 そしてアリゾナでのステージ。ドスンと重みのあるバスドラ、キーンと場内を突き刺すように拡がるリードギターをバックに、ブラッドリー・クーパー演じるジャクソンがステージに上がり、「Alibi」、「Maybe It's Time」を歌う。

 叫びにも似た歓声が場内から沸き上がり、その演奏にオーバーラップして、ライヴの盛り上がりを実感させる。あくまでもジャクソンの歌声が中心で、客席からの歓声は邪魔にはならないが、その場の熱気、興奮を感じ取るには、充分すぎるほどの情報量だった。

 続いてすでにアキュレイトDSMを核として、ステレオ再生を楽しんでいる方が、そのクォリティと機能性を維持しつつ、サラウンド再生へと発展させるシステムの提案といこう。変更点はDSMに「サラウンド拡張ユニット」(アキュレイト・イグザクトボックス6)を追加。ここで得られたアナログプリ出力を4chパワーアンプ、マジック4100へと送り出して、サラウンドスピーカーを駆動し、6.0chシステムを構築するというもの。ステレオパワーアンプ(アキュレイト2200)とJBLのスピーカーシステム、K2S9900については、フロントL/Rチャンネル用として、継続使用する。

画像: システム②は、DSMを核にしてステレオ再生を組まれている方が、サラウンドシステムにステップアップするケースをシミュレーションしたパターン。具体的には、AKURATE DSMとステレオパワーアンプ(AKURATE 2200)、さらにJBLのK2S9900による2chシステムをベースにして、サラウンド拡張ユニットとしてAKURATE EXAKTBOX6とサラウンドスピーカーおよびパワーアンプを追加してのサウランド展開となる。EAXKTによるサラウンド再生は、最小構成で4.0ch、最大構成で7.1chまでにフレキシブルに対応している

システム②は、DSMを核にしてステレオ再生を組まれている方が、サラウンドシステムにステップアップするケースをシミュレーションしたパターン。具体的には、AKURATE DSMとステレオパワーアンプ(AKURATE 2200)、さらにJBLのK2S9900による2chシステムをベースにして、サラウンド拡張ユニットとしてAKURATE EXAKTBOX6とサラウンドスピーカーおよびパワーアンプを追加してのサウランド展開となる。EAXKTによるサラウンド再生は、最小構成で4.0ch、最大構成で7.1chまでにフレキシブルに対応している

画像: AKURATE DSMのアナログバランス出力(フロントL/R用)をAKURATE 2200に接続。AKURATE DSMからは、さらにEXAKTリンクケーブルで、サラウンド用の信号をAKURATE EXAKTBOX6へ送る

AKURATE DSMのアナログバランス出力(フロントL/R用)をAKURATE 2200に接続。AKURATE DSMからは、さらにEXAKTリンクケーブルで、サラウンド用の信号をAKURATE EXAKTBOX6へ送る

画像: ヘッドユニットAKURATE DSMとサラウンド拡張ユニットAKURATE EXAKTBOX6とは、EXAKTリンクケーブル1本でつなぐ。AKURATE EXAKTBOX6からは、サラウンド用パワーアンプへつなぎ、サラウンドスピーカーを駆動する流れだ

ヘッドユニットAKURATE DSMとサラウンド拡張ユニットAKURATE EXAKTBOX6とは、EXAKTリンクケーブル1本でつなぐ。AKURATE EXAKTBOX6からは、サラウンド用パワーアンプへつなぎ、サラウンドスピーカーを駆動する流れだ

 このシステムの場合、6ch分のDACシステムはすべてリンの最高峰「カタリスト」グレードとなり、パワーアンプの選択の自由度が高まる。またサブウーファーは使わないが、そのハンディを38cmウーファー搭載のフロントスピーカー、JBLのK2S9900がいかにおぎなえるかも注目ポイントだ。

画像: システム②ではJBLとモニターオーディオの混成ブランドによる6.0chサラウンドシステムを組んだ。具体的には次の通り。JBL K2S9900(L/R)、モニターオーディオPL200II(LS/RS)、PL100II(LSB/RSB)。センター、サブウーファーは使っていないが素晴らしいサラウンドを奏でてくれた

システム②ではJBLとモニターオーディオの混成ブランドによる6.0chサラウンドシステムを組んだ。具体的には次の通り。JBL K2S9900(L/R)、モニターオーディオPL200II(LS/RS)、PL100II(LSB/RSB)。センター、サブウーファーは使っていないが素晴らしいサラウンドを奏でてくれた

 まずUHDブルーレイ『リメンバー・ミー』のチャプター7の再生。歌声、話し声、犬の鳴き声、ギターの音色と、複雑に重なりあう音源を一定の明瞭度を保ちつつ描き出す。メインスピーカーが変わり、ファントムセンターとなったことで、ミゲルの口がひと回り大きく感じられるが、声の明瞭度、ニュアンスは良好。同時にスクリーン下から聴こえる違和感が払拭され、映像から沸き上がるように聴こえる様子が好ましい。

 そして街の喧騒から浮かび上がるように打ち上げられる花火の発射音、遠くで響く爆発音だが、これは①のシステムとはやや印象が違う。花火が上がる方向、高さの表現は遜色ないが、低音の音圧感はやや控えめ。体全体を揺さぶり、浸透するのではなく、スカッと抜けがよく、開放的に鳴り響く印象だった。サブウーファーを使わないことが少なからず影響していることは間違いないが、自然な一体感が得られるのも事実。空間としてのリアリティはより生々しくなったようにも感じられた。

 『アリー/スター誕生』はチャプター10。アリーのピアノソロで始まる「Always Remember Us This Way」の演奏を中心に視聴した。なんとなくしっくりいかない彼との関係、せつない思いを歌詞に込めた曲だが、ここはレディー・ガガの歌唱力の見せどころだ。

 ピアノの響きも太く、力強いが、アリーの声はそれと対等、いやピアノの存在を希薄にしてしまうほどの浸透力で、深々と観客席に伝わっていく。

 囁くように歌う声には、かすかなエコーが加わり、空間としての広さを演出しているが、その描写も実にていねいで立体的にフワッと浸透する。そして熱狂的な歓声の中、熱唱する彼女の歌声がステージ中央から客席へと拡がっていく様子も実になめらかで、一体感のあるライヴ空間として描き出された。

 スピーカーはJBLとモニターオーディオの混成システムとなったが、あたかも同一スピーカー、同一シリーズによるサラウンドシステムが奏でているようなつながりのよさで、混成システムの違和感はまったくと言っていいほどない。このクォリティ感、まとまりのよさは、まさにイグザクトシステムの賜物。特にDACのグレードがカタリストで統一されたことによって、基本的な情報量、S/N感に余裕が生まれたことが大きい。高度な技術とノウハウを駆使してリンが完成させた新世代のサラウンドシステム。その潜在能力の高さは計り知れない。

 

視聴したソフト
●UHDブルーレイ:『リメンバー・ミー』、『アリー/スター誕生』、『ダークナイト』ほか
その他の視聴機器
●UHDブルーレイプレーヤー:パイオニアUDP-LX800
●プロジェクター:JVC DLA-V9R
●スクリーン:スチュワート スタジオテックG130(123インチ/シネスコ)

 

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