画像: 映画館の新リファレンス「ドルビーシネマ」が博多にオープン

ドルビーシネマの3要件
「ドルビービジョン」「ドルビーアトモス」「シアターデザイン」

11月23日、日本初上陸となる「ドルビーシネマ」がT・ジョイ博多にオープン。早速、体験することができたので、リポートをお届けしよう。

ドルビーシネマとは、「ドルビービジョン」「ドルビーアトモス」「シアターデザイン」という三つの要素を全て満たしたドルビーお墨付きの映画館(スクリーン)のこと。

まず、「ドルビービジョン」とはドルビーが提唱する独自のHDR(ハイ・ダイナミックレンジ)規格だ。Ultra HD Blu-rayに採用されているHDR10と大きく異なるのは、フレームごとにメタデータが埋め込まれている点。実際に再生する機器の実力に合わせ、メタデータを参照しつつ最適化した映像を出力する。これは家庭用のドルビービジョンにおいても同様だ。

画像: HDR映像を投写するプロジェクターは、クリスティと共同開発したレーザー光源モデル(2台)。これにより、100万:1という強靭なコントラストを実現した

HDR映像を投写するプロジェクターは、クリスティと共同開発したレーザー光源モデル(2台)。これにより、100万:1という強靭なコントラストを実現した

「ドルビーアトモス」はオブジェクトベースのオーディオを採用した音声企画で、スピーカーの配置に合わせてリアルタイムで「レンダリング」(演算して音声を出力)する。割り当てられたスピーカーから常に同じ音が出るというチャンネルベースのオーディオとは違い、現実のスピーカー配置に応じてこちらも最適化されるということだ。

画像: ドルビーシネマにおけるドルビーアトモススピーカー配置のイメージ。実際にはスピーカーは露出しておらず、居心地を重視した空間となっている

ドルビーシネマにおけるドルビーアトモススピーカー配置のイメージ。実際にはスピーカーは露出しておらず、居心地を重視した空間となっている

最後のシアターデザインについては、快適な映画館体験ができるよう、設計がされているということ。ドルビーシネマのスクリーン入場口にはAVP(Audio Visual Path)と呼ばれるプロジェクターでの映像を投写したアプローチが用意される。その他、スペースのゆとりを持って設計された客席など、期待が高まるエントランス、デザインや快適さを融合したものであるという。

画像: T・ジョイ博多のAVP。天井に仕込まれた超短焦点プロジェクターで、上映作品に合わせた映像を壁に投写。客席までのアプローチを演出する

T・ジョイ博多のAVP。天井に仕込まれた超短焦点プロジェクターで、上映作品に合わせた映像を壁に投写。客席までのアプローチを演出する

画像: AVPの仕様にもドルビーの規定があるが、T・ジョイ博多はその規定の中でも長めの距離を確保しているという

AVPの仕様にもドルビーの規定があるが、T・ジョイ博多はその規定の中でも長めの距離を確保しているという

さて、T・ジョイ博多はJR博多駅に直結しているシネマコンプレックスであり、地の利があると言える。しかし、ドルビーシネマ初上陸がなぜ博多になったのだろう。発表会では、インバウンド需要などを見込んだものであること、JR博多駅の開発にあたり、アジアでもここだけにしかないものを提供したいから……という理由が挙げられた。

確かに、ドルビーシネマ自体がレアな存在である現在であれば、海外観光客の誘致も見込めそうだ。しかしながら、ドルビーシネマは「MOVIXさいたま」での導入もすでに告知されている。博多が“日本初”になったのは偶然と見るのが自然だろう。

画像: 座席数は348。空間的に広めにつくられていて、ゆったりと映画を楽しめる

座席数は348。空間的に広めにつくられていて、ゆったりと映画を楽しめる

これからの規範になり得る、黒らしい黒

ともあれ、肝心の映像・音声のクォリティはどうか。色域の広さ、黒の黒らしさ、白の白らしさ、そこからくる映像のシャープさを訴求しているわけだが、結論を言えば一般の映画館とは別次元の高品質だと言っていい。

映画館の映像はプロジェクターで光を投写する以上、どうしても黒の再現が難しい。光を出しつつ、光(反射)のない状態=黒を同一平面上で表現しようというのだから、そもそも無理のない話。

映画マニアには「映画の黒は浮いているものだ」、つまり映画における黒はグレーがかっていて当然。むしろそれが映画なのだ、という方もいるほどなのだ。

しかし、このドルビーシネマ(あるいはIMAXレーザー)はその状況を根本から変えるかもしれない。それほど、黒が黒として再現されることによるコントラスト表現が強靭だ。

家庭においては、Ultra HD Blu-rayの再生はたいへん難しい状況にある。というのは、HDR映像の規範(リファレンス)が存在しなかったから。こう再生できていれば正解、という規範は古来映画館にあったのだが、HDR再生おいては前述の通り黒の再現などの都合でそうはいかなかった。

有機ELテレビの登場もあり、HDR映像再生において一般ユーザーはリファレンス不在の試行錯誤を繰り返していた。そこにようやく登場したのがドルビーシネマ。迷えるユーザーたちのリファレンスたり得る存在がようやく登場した。家庭でのHDR再生を検討している方は、一度は観るべきだろう。

凄まじいまでの音圧はとても真似できないが、大音量でも崩れない定位は家庭でのサラウンド再生でも参考にすべきもの。また、最大輝度は108nitだという限られた中で表現されるHDR映像の表現も一見の価値ありだ。

画像: 11月27日現在は、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』を上映中。 © 2018 WBEI Publishing Rights © J.K.R.

11月27日現在は、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』を上映中。
© 2018 WBEI Publishing Rights © J.K.R.

ドルビーシネマは、どの座席でも同一の体験ということを謳っているものの、さすがにそれには限度がある。そこには留意すべきだろう。実際に最前列で映画を観ると、4K投写での限界、画素が見えてしまうのが気になるし、スクリーンの音孔との関係性もあってか、特に白部分での映像のS/Nも気になってくる。音声でも、さすがにサラウンド感は希薄になりがちだ。従来の映画館と同じく、前か後ろに寄りすぎない、いい席を事前予約することをオススメしたい。

繰り返しになるが、T・ジョイ博多は駅直結という好立地。博多旅行ついでにドルビーシネマに足を運ぶのもよし、関東の方は埼玉での導入を待ってそちらに行くのもよし。映画マニアは注目すべきスポットが誕生したことは間違いない。

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