NHKは7日午後、SF映画『2001年宇宙の旅』の8K試写会を開催した。同作は12月1日の新4K・8K衛星放送開始日にオンエアされることが決定しているが、その作品が8Kでどれだけのクォリティを獲得しているかを一足先にマスコミ関係者に披露したわけだ。
そもそもなぜ、8K放送開始初日に『2001年〜』を選んだのかというと、8Kで放送する映画作品と考えたときに、最初に浮かんだのが本作だったからそうだ。確かにそれくらい印象的で、8Kで観る価値のある作品だということは間違いない。
放送用の8Kマスターには何が使われた?
では放送用の8Kマスターにはどんな物が使われたのだろうか。
NHKの担当者によると、ワーナーが保存している70mmオリジナルネガ(!)を8K解像度でスキャンしたという。そのきっかけはNHKがワーナーに8Kスキャンを提案したことで、それを受けてワーナーが北米のポストプロダクションで作業を進めるという経緯だったそうだ。
その際には、キューブリック監督の意図や狙いを大切にしようという思いから、当時の指示書に従って確認用プリント(インターポジ)を作成し、スタッフはフィルム上映の色とデジタルデータを見比べながらカラーコレクション作業を進めていったという(それぞれの部屋が離れていたので、移動はたいへんだったようだ)。
8Kマスター作成には1年ほどかかっており、NHKに納品されたのは今年の6月頃だったという。ちなみにそのマスターは、映像が8K/24p/SDR(色域はRec.709)、音声は5.1chと2.0chの2種類のフォーマットで、放送はこれを8K/60pに変換する。
試写会ではP2カード(放送用メモリーカード)に収めた8Kマスターを再生しており、8K/60p/SDR+5.1chという仕様だった。実際の放送とは、HEVCの圧縮過程を経ていない点が異なっているわけだ。
上映システムは、プロジェクターがJVCの8Kパネルを搭載した業務用機で、300インチスクリーンに投写している。今回は70mmフィルムからのスキャンなので、アスペクト比は2.2:1となる。そこから換算すると画面サイズは286インチ前後だったようだ。
映像は、70mmフィルムに近い仕上がり
さて、読者諸氏が気になるであろう『8K完全版2001年宇宙の旅』のインプレッションはどうだったのか。
本作については、LDやDVD、ブルーレイといったパッケージはもちろん、午前十時の映画祭でのデジタル上映、先日の70mmアンレストア・フィルム版、IMAX版と観てきたが、今日の8K版は70mmフィルム上映に近い印象だった。
なんといってもシュートなどの強調感がなく、輪郭がきわめて素直。だから大画面でもキツさがなく、自然な映像が再現されている。もちろん情報量も豊富で、ディスカバリー号のディテイルやアリエス1B月シャトルが着陸する際の月面基地の様子(合成されたウィンドウ内の人物など)は、ここまで描き込まれていたのかと驚くほどだ。
色再現については黒が若干浮き気味で、フィルムの濃密な色と比べると物足りない印象もあったが、APL(画面平均輝度)の高い場面ではキレのいいクリアーな再現になる。ここについては、液晶テレビで視聴したら、もっとコントラスト感に溢れた映像を楽しめることだろう。その意味でも12月1日のオンエアに期待だ。
なお『8K完全版2001年〜』は12月1日の13:10〜と、2019年1月3日午後の放送が決定している。また今回のマスターはBS 8Kのみで使われるとかで、4KにダウンコンバートしてBS 4Kでオンエアするといった展開は、今のところ予定されていない(個人的にはとても残念……)
最後に、今回のレストアの様子を紹介する『8Kでよみがえる究極の映像体験! 映画「2001年宇宙の旅」』がNHK総合でオンエアされる。放送時間は11月23日の午前4:30〜4:59なので、録画予約をお忘れなく。