コルグでは、先日発表された同社D/A & A/Dコンバーターの新製品「Nu-I」(¥425,000、税別、10月下旬発売)の製品説明会を開催した。

 Nu-Iは、DSD 11.2MHzや最大384kHz/24bitのリニアPCMに対応したD/Aコンバーターで、同時にアナログ入力やフォノ入力(MM/MC)入力も備えており、そこから入力したアナログ音声をDSD 11.2MHzとして録音するA/Dコンバーター機能も備えている。

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画像: ▲フロントパネル左側、スリット状のLED右横に「Nutube HDFC」のオン・オフスイッチを搭載する

▲フロントパネル左側、スリット状のLED右横に「Nutube HDFC」のオン・オフスイッチを搭載する

 今回のNu-Iは、同社としては昔オーディオに親しんでいた50〜60歳代をメインターゲットに、ユーザーからの希望を反映して製品仕様を仕上げていったそうだ。

 最新DACとしてDSD 11.2MHzに対応するのは当然として、きちんとした電源(USBバスパワーではない)の搭載や、バランスヘッドホン端子など、基本的なスペックはしっかり押さえている。

 そこに楽器メーカーであるコルグの持ち味として“音を楽しむ”提案を盛り込んでいる。それが「Nutube」による音の味付けと、「S.O.N.I.C.リマスタリング・テクノロジー」の搭載だ。説明会ではこのふたつの機能について、詳しく紹介された。

画像: ▲「Nutube HDFC」のイコライジングカーブ

▲「Nutube HDFC」のイコライジングカーブ

 Nutubeはコルグとノリタケ伊勢電子(株)が共同開発した新世代真空管だ。Nu-Iはこれを2機搭載しており、入力信号に対して3種類のニュアンスを付加した音として再生できる。これは「Nutube HDFC」と呼ばれる機能で、フロントパネルにオン・オフスイッチと効果の切り替えノブが準備されている。

 どのような効果を加えているかについて詳しい説明はなかったが、オフの音が情報をきわめてストレートに再生しているのに対し、この機能をオンにすると人の声のニュアンスがやや優しくなり、ふわりとした空気感がただよってくるようにも感じられた(ノブの数値を上げると効果も強くなる)。

 なお「Nutube HDFC」はA/D変換後や外部入力のアナログ音声信号に対して付加されるもので、背面の「LINE」出力でのみ効果を確認できる。同じく背面の「USB-DAC DIRECT」出力はボリュウムも通らない、完全なプリアウトなので注意されたし。

画像: ▲ドライバーソフトから「S.O.N.I.C.」の調整項目を呼び出したところ

▲ドライバーソフトから「S.O.N.I.C.」の調整項目を呼び出したところ

 続いて「S.O.N.I.C.リマスタリング・テクノロジー」についても詳細な説明が行なわれた。こちらはDSDマスタリングの第一人者、オノ セイゲン氏がプロデュースしたNu-I専用オーディオドライバーで、YouTubeなどのソースをDSDアップサンプリング処理する際に、曲やジャンルに応じて補正をかけるものだ。

 具体的にはPCで楽曲を再生している時に「S.O.N.I.C」のコントロールパネルを呼び出し、効果のオン・オフやイコライザーの調整&保存、さらにプリセットパラメーターの呼び出しなどができる。

 プリセットはあらかじめ数十種類が準備されており、100番台は比較的録音状態のいいソースに、200番台はYouTubeなどに対して強めに効果を効かせたもの、300番台は有名な曲ごとの調整値となっている。これらはオノ・セイゲン氏が調整したものだという。

 ジャズの女性ライブのYouTubeでその効果を確認させてもらったところ、「S.O.N.I.C.」をオンにすると中低域の押し出しがよくなり、ヴォーカルのきらびやかさもアップして、音量もアップしたように感じられた。最近はYouTubeでも4K画質の作品が出てきているが、そういった高画質ソースと組み合わせて音を聴いてみたいと思ったほどだ。

 なお「S.O.N.I.C.」の調整値はPCにファイルとして保存可能で、数にも制限はない。将来はユーザーどうして調整値を交換して好みのトーンを聴き比べるといった楽しみ方もできそうだ。

画像: ▲Nu-Iの信号処理の流れ

▲Nu-Iの信号処理の流れ

 もうひとつNu-Iで面白そうなのが、付属ソフトの「Audiogate4.5」に搭載された「DSDフォノイコライザー」機能だろう。これはアナログレコード再生時にPCソフト側で様々なイコライザーカーブを選べるというもの。一般的な「RIAA」カーブ以外に「NAB」や「AES」といった数種類が準備されている。

 さらに今回は弊社管球王国等でも活躍している新忠篤氏が監修したSPレコード用のカーブも3種類搭載された。「Eu78」は戦前のヨーロッパ録音や日本録音(コロンビア)、「Am78」は戦前のアメリカ録音や日本録音(ビクター)の、「Postwar78」は戦後の録音をターゲットにしている。

 今回はSP盤から録音したファイルを使って比較試聴をしてみたが、「RIAA」では全体的にだぶついていたヴォーカルが、「Postwar78」を選ぶと音場の抜けが格段によくなり、声の芯もでてきていた。この3種類があればほとんどのSP盤が楽しめるそうなので、SPレコードファンは一度この違いを聴いてみて欲しい。

 Nu-Iはこの他にも、先述したようなDSD 11.2MHzでの録音機能を活かしたレコードコレクションのアーカイブマシンとしても便利に使えることだろう。そのあたりはStereoSound ONLINEでも検証していく予定なので、お楽しみに。

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