今回のヲトアニメ:『GODZILLA 怪獣惑星』

『GODZILLA 怪獣惑星 Blu-ray スタンダード・エディション』
¥6,800(税別)
・BD-ROM(東宝、TBR28169D)
・2017年日本・2018年発売・本編88分
・カラー(16:9)
・DTS HD Master Audio 5.1ch
(C)2017 TOHO CO.,LTD.

画像: 今回のヲトアニメ:『GODZILLA 怪獣惑星』

 怪獣映画の代表格と言える『ゴジラ』は、国内の最近作である『シン・ゴジラ』を筆頭とした実写映画だけでなく、海外版『GODZILLA』など幅広く展開している。そして、今回取り上げるアニメ版『GODZILLA 怪獣惑星』が2017年に公開。全3部作のうち、第2章の『GODZILLA 決戦機動増殖都市』まで上映済みだ(ソフトは11月7日発売)。

 ゴジラという巨大な怪獣による破壊、そしてそれが暗喩するものは、実写で生々しく描写すべき。筆者も見るまではそう思っていたが、本作はアニメ版らしい大胆な設定を盛り込むことで、思った以上に楽しめた。

 2030年に突如として現れたゴジラと怪獣たちは世界中を蹂躙。そこに、エクシフ、ビルサルドといった宇宙人までも襲来してくる。人類と宇宙人はゴジラ撃退のために共闘するが敗北。移民船アラトラム号によって地球以外の星へ移民することになる。

 イントロの時点で、今や実写ではあまりにも荒唐無稽なためか見かけることがなくなった宇宙人が登場しているし、世界中が蹂躙されるシーンでは、ゴジラだけでなく数多くの怪獣たちも登場。ビルサルドが対ゴジラ兵器として開発したものの、起動失敗に終わった「メカゴジラ」まで触れられている。「ゴジラ」のあらゆる要素を取り込みながら、実写とはまた違った「ゴジラ」を生みだそうとする意欲を感じる。

 物語は、移住先であったくじら座タウ星eが人類の移住には適さないことが判明したところから始まる。移民船の食料は枯渇しかけ、さまざまなストレスによって移民たちの状況は限界に達しようとしていた。年老いた者は入植の強行を志願するが、一方で地球帰還派が主流を占めたことで、乗組員たちは地球への帰還を決断する。しかし、11.9光年もの長距離の亜空間航行の影響で、再び戻ってきた地球では約2万年もの時間が経っていた……。

ゴジラの放つ熱線が、アニメ版の心意気を感じさせる

 さっそく聴きどころの紹介にいこう。まずは回想シーンで描かれる地球脱出時の場面(CH.5:7分59秒)。次々と宇宙へと脱出する船が飛び立つなか、主人公サルオ・サカキたちも脱出船へと向かう。そこにゴジラが現れる。誰もが知るといっても過言ではない、あの独特の咆吼はそのままだ。飛び立とうとする船のひとつにゴジラの熱線が放たれ、爆破炎上していく。ゴジラに敗北した人類のトラウマ的なシーンだ。

 これまでのゴジラが放つ熱線は放射能火炎とも形容されるものだが、アニメ版ではそれらとはまるで異なり、架空兵器であるビーム砲の音に近い感触となっている。その音も燃え上がるような火炎放射ではなく、「ドンッ」という重みのある鳴り方だ。ある意味でシンプルな音だが、低音の響きが厚く、射線上にあるすべての物を貫き、焼き尽くしていく描写と相まって、とてつもない威力を感じさせる。

 映画館ではこの音をきっちりと再現できることがベンチマークとなるし、ホームシアターシステムでも低音をしっかりと鳴らしきれるかどうかで、作品の持つスケールの大きさが左右されてしまう。低音の出ないシステムだと、かなり残念な音になってしまう。

 この音にこそ、作り手がアニメ版で目指しているものが集約されていると思う。2万年後の環境が激変した地球でのゴジラとの戦闘。かなり荒唐無稽な内容と思いがちだが、ゴジラに核兵器を含む通常兵器が一切効果のない理由、それに対応した作戦行動など、荒唐無稽であるように見えて、かなり理詰めで構築された戦闘が展開していく。

 無敵のゴジラを倒すための対策や作戦はゴジラ映画の見どころでもあるが、このあたりはしっかりと構築されていている。スーパー兵器が登場するのは第2章以降のお楽しみだ。それだけに、効果音は体感的でリアルな音で構成されていて、戦闘の生々しさを強く訴えてくる。

 アニメ版ということで、色モノ扱いされがちなのは承知の上。何でもアリのアニメ版と思わせながら、肝心なところではこれまでの実写作品を超える意気込みで作っている。そこに作り手の心意気を感じた。いつも言っていることだが、要するに音質の実力の高いシステムで見ると、作品の良さがさらによく伝わる。

 続いては、作戦を展開中の部隊を小型の怪獣が襲いかかる場面(CH.18:43分13秒)。どうやら小型ながらもゴジラの亜種のようだ。地球の環境は生物だけでなく植物さえもゴジラの影響を受けており、金属のように硬く、立ちこめる霧は電波障害をもたらしている。

 小型のゴジラ亜種は無数の群れが飛翔して襲ってくる。それに立ち向かうのが、パワードスーツや多脚戦車、飛行可能なホバーバイク。空から襲ってくる小型のゴジラ亜種もサラウンドで移動感もリアルだし、小型の銃撃の音もカン高い音が印象的。レールガンと思しき戦車の砲撃はもう少し重みのある音だが、決して大迫力とは言い難い。どちらかというとアタックの鋭いスピード感のある音だ。ゴジラの熱線の大迫力と比べると非力さを感じる軽い音だが、それは当然で、ゴジラの障壁には効果がない。爆撃のようなある程度ゴジラに影響を与えられる威力の兵器だと、低音たっぷりの力強い音になる。この効果音の使い分けはなかなか憎い演出で、それが分かるシステムで聴いていると、戦闘の展開がよりリアルに感じられるようになる。

 通常兵器が有効な小型種だったこともあり、何とか退けたものの、被害は甚大。地球からの退去という選択さえ出てくる始末だ。しかし、ゴジラは決して人間たちを見逃しはしない。

直面した困難に対して、戦いを挑む意志を描く作品

 一度は全面的な撤退も考えたものの、何人かの決死の行動によって、ゴジラがまとう障壁を無効化できることが確認できた。勝機を得たことで、部隊はゴジラとの決戦を選択する。ここ(CH23:59分01秒)からの場面で、主人公であるサルオ・サカキが部隊を鼓舞するが、そこには作品の意図も表れている。ここでのゴジラは、文明の進化した人間たちにとっての越えるべき障害そのものとして描かれていることが分かる。一度は直面した困難から目を逸らして逃げたことで、失ってしまった誇りと地球を取り戻そうとする意志を主張したことが肝心だ。

 ハルオ・サカキを演じる宮野真守は全編を通して熱演しているが、ここでの演説の魂の入り方には感動さえ覚える。目の前にある困難に対してどう立ち向かうか。諦めればすべてを失い、未来はなくなる。これは、人生においても直面する重要な葛藤だ。

 本作は映画だから、命を捨てる覚悟の戦いに挑むことになる。実際の人生で命がけの覚悟をする場面は果たして訪れるだろうか? よほどのことがない限りそれはないだろう。が、それに近い覚悟で目の前の困難に立ち向かわなければならない機会は、案外多い。最悪ではないが、バラ色の未来を期待できるかというとそんな気分はまったくない。現代の空気は、息詰まった感が満点の本作の冒頭に不思議なくらい合致している。

 そういう時に心を奮い立たせる力がこの映画にはある。本作はさまざまな困難に負けそうになっていたり、困難な現状を打ち破れずに鬱屈した気分にあるときにこそ、見るべき映画だ。

映画のラストの咆吼こそが、「ゴジラ」そのものだ

 映画としては、最後の戦いだ(CH.25:1時間9分58秒)。帰還のための宇宙船を使った爆撃でゴジラを誘導し、最後の作戦が展開される。最後には、なんと勝つ。ゴジラの撃滅に成功してしまう。だが、生物としてのゴジラが一体しかいないという根拠はない。そういういつものエピローグを思わせたところで、それまでの咆吼とはケタ違いの迫力の咆吼が室内に響き渡る。サラウンド装置の全チャンネルが一斉にフルボリュームで音を出しているかのような迫力だ。最後の戦いのスピーディーな展開も大きな見どころだが、最後の最後の展開こそ、一番の見どころであり、視聴者の心を試すもの。

 この咆吼に絶望するか、それとも勇気を奮い起こして立ち向かうかは視聴者がそれぞれ自由に判断しよう。

UHD Blu-rayで見るか、NETFLIXで見るか、
どちらもベストの環境で楽しめる東芝『55BM620X』

 本作はBDでの発売のほかNETFLIXでも配信されている。NETFLIXでは、映像はフルHD+HDRであり、ゴジラの熱線をはじめとして高輝度の光の演出のHDRによる再現は、見応えも充分。音声はドルビーデジタルプラス5.1chで、ストリーミング配信の転送レートの制限もあって、BD版の方がクォリティは上回る。今回は音の良さを重視してBD版を見ているが、NETFLIX版も一見の価値ありだ。

 NETFLIXに限らないが、多くの動画配信サービスでは4KコンテンツやHDRコンテンツを積極的に展開しており、BDでは発売されていない海外ドラマなども数多い。薄型テレビもこれらの動画配信サービスに対応しているので、全部とは言わないまでも、気に入った作品が楽しめるサービスがあればぜひ試してみてほしい。

 今回は視聴も含めて、東芝の『55BM620X』を使用している。いち早く新4K放送対応チューナーを内蔵していることも特徴だが、前面配置のスピーカーと背面のサブウーファーを組み合わせた2.1ch構成の「重低音バズーカオーディオシステム」搭載が大きなポイント。さすがに5.1chの作品はサラウンド感や前後の音の移動感などが物足りなくなるが、力強い低音域の迫力があり、テレビ放送のアニメなどならばかなり満足度の高い音が楽しめる。

画像: UHD Blu-rayで見るか、NETFLIXで見るか、 どちらもベストの環境で楽しめる東芝『55BM620X』

 そして、「NETFLIX」視聴では、ドルビーアトモス・レディとなっていることも見逃せない。AVアンプなどのドルビーアトモス対応の機器を接続すれば、「NETFLIX」の対応コンテンツをドルビーアトモス音声で楽しめるのだ。ドルビーアトモス対応作品のラインアップは実はけっこう多く、最新の海外ドラマなどを含めてより迫力のある音で楽しめる。

 「NETFLIX」でドルビーアトモス・レディとなっている製品(薄型テレビ、BDプレーヤーなど)はあまり数が多くなく、現在では対応が難しいのだ。こういった点でも、『55BM620X』はしっかり対応済みで、将来性の点でもかなり優秀なテレビなのだ(今春発売のBM620Xシリーズ、M520Xシリーズ、X920シリーズはすべてドルルビーアトモス・レディ)。画質の良さはもちろんのこと、音質も本格的。しかもゲームなども低遅延で楽しめるなど、放送をはじめとする多彩なコンテンツを楽しみたい人には最適なモデルだ。

This article is a sponsored article by
''.