ネットワークオーディオ再生の必需品であるLAN接続ストレージ、いわゆるNAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)。リンがDSシリーズを世に問うて以来、オーディオファンはPC向けに作られたNASをオーディオ用に「転用」してきた。

その状況を打破したのが、バッファロー。「オーディオ用」として考えつくされたNASを2014年にDELAシリーズとしてリリースしたのである。ここではDELAユーザーである山本浩司さんにその画期的内容を詳説してもらう。(DigiFi編集部)

その1はこちら

画像: N1AH20(左)、N1AH40BK(右)

N1AH20(左)、N1AH40BK(右)

[DigiFi 21号レビュー]DELA オーディオ専用NAS N1Aシリーズ

 N1A / N1Zがユーザーに熱く支持されたことに力を得たのだろう、バッファローは昨年の秋、N1Aのブラック仕様(HA-N1AH40BK、以下N1A-BK)を登場させた。

 従来のシルバー仕上げのN1AのHDDは1Tバイト(東芝製)×2だったが、N1A-BKは2Tバイト(シーゲイト製)×2と容量が2倍になったのが最大のトピックだが、果たして両モデル間に音質差は存在するのだろうか。

 N1A ユーザーでもあるぼくにとってもその比較は興味深い。そこで両モデルを本誌試聴室に用意してもらい、リンのネットワークオーディオプレーヤーのMAJIK DS/2とのコンビネーションでその音を聴き比べた後、N1A-BKの使いこなしのポイントを探ることにした(プリメインアンプはアキュフェーズE-260、スピーカーはパイオニアS-1EX)。

画像: ネットワークオーディオプレーヤー、リン MAJIK DS/2(¥350,000、税別)

ネットワークオーディオプレーヤー、リン MAJIK DS/2(¥350,000、税別)

画像: プリメインアンプ、アキュフェーズ E-260(¥290,000、税別)

プリメインアンプ、アキュフェーズ E-260(¥290,000、税別)

リファレンス機器
ネットワークプレーヤー:リン「MAJIK DS/2」
SACD/CDプレーヤー:デノン「DCD-SX1」
プリメインアンプ:アキュフェーズ「E-260」
スピーカーシステム:パイオニア「S-1EX」
LANケーブル:エイム「SHIELDIO NA1」

“オーディオ専用NAS”の存在意義は大きい

 さて音質比較の結論を先に述べると、その差は微妙。N1A-BKのほうがわずかにローレベルの表現力が優れ、音場空間の広がりがスムーズという印象がないではないが、それはシンプルなマイキングで録られた超優秀録音ハイレゾファイルを超真剣に聴いたときに、そんな気もするという程度の違いだ。

 また、ネットワークオーディオ・ユーザーに利用者の多い汎用NAS のQNAP製TS119とN1A-BKを同一音源で聴き比べてみたが、この比較は明らかにN1A-BKの音の方が好ましかった。

 はっぴいえんどの『風街ろまん』の96kHz/24ビット音源で比較してみたが、N1A-BKのほうが音場がさっと広がり、ヴォーカルのニュアンスが豊かに、ベースが生々しく眼前に迫ってくるイメージが得られた。情報量が増えたと言い換えてもいいだろう。やはりオーディオ専用NASの存在意義は大きいと改めて実感した。

画像: “オーディオ専用NAS”の存在意義は大きい

接続法はユーザーの使い勝手で選ぶのがよし

 では、次にN1A-BKの使いこなしのポイントをいくつか探ってみよう。

 まず音楽ファイルを収める際に、USBポート経由とLAN経由で音質の違いがあるかどうか。前者はUSBメモリーを用いて、後者はPCを用いてのコピーだ。LAN経由のほうがわずかにS/Nがよい気がしないではないが、この手法の違いによる音質差は無視してもよいレベルというのがぼくの結論。

 また、MAJIK DS/2とN1A-BKを1対1で接続する「直結接続モード」とMAJIK DS/2もN1A-BK同様ハブ(またはルーター)につなぐ「通常接続モード」の比較も行なったが、ここでも有意な音質差は認められなかった。ここはユーザーそれぞれで使い勝手のよい接続法を選べばいいだろう。

 次に調べたのが、RAID(複数のHDDの構成方法)による音質差があるかどうか。N1Aは先述の通り初期設定では音楽ファイルをふたつのHDDに同時に保存することでバックアップが取れる「ミラーリング」設定になっている。

 これをふたつのHDDに音楽ファイルを分散して保存していく「ストライピング」設定に変更して音質が変化するかどうかを試してみようというわけである(1基目のHDDから音楽ファイルを順番に書いていく『スパニング』設定も可能)。

画像: 出荷時の内部ドライブは、データ保護の観点から内蔵するふたつのストレージに同データを保存する「ミラーリング」に設定されている

出荷時の内部ドライブは、データ保護の観点から内蔵するふたつのストレージに同データを保存する「ミラーリング」に設定されている

実効容量を2倍に増やす賢い利用法

 ミラーリングではN1Aの場合1Tバイト、N1A-BKは2Tバイトの音楽ファイルの収納が可能だが、ストライピング&スパニング設定ならばその容量を2倍に増やせるわけだ。ただし、これらの設定にする場合は、必ずデータのバックアップしておくことが肝要だ。

 N1Aをミラーリング設定のまま、N1A-BKをストライピング設定に変更し(これもフロントパネルのディスプレイを見ながらボタン操作で簡単に行なえる)、いくつかのハイレゾファイルで聴き比べたが、ここでもRAIDによる音質差はほぼ存在しないことがわかった。

 そう考えると、ストライピング、またはスパニングに変更して音楽ファイルの実効容量を2倍に増やすのが賢い利用法だろう。

その3へ続く

画像: 【接続A】 DELAは、LANポートを2系統備えており、通常のLAN接続のほかに(接続A)、ネットワークプレーヤーを直結することもできる(接続B)。直結とし、短いLANケーブルを使うことで、オーディオ信号を最短距離でつなげるので音質的に有利になるケースが考えられる。

【接続A】
DELAは、LANポートを2系統備えており、通常のLAN接続のほかに(接続A)、ネットワークプレーヤーを直結することもできる(接続B)。直結とし、短いLANケーブルを使うことで、オーディオ信号を最短距離でつなげるので音質的に有利になるケースが考えられる。

画像: 【接続B】 設定は特に不要で物理的にLANケーブルを2系統接続するだけ。なお、ダイレクト接続というモードもあるが、これは「ネットワークプレーヤー側で操作が可能な機器をつなぐときの設定」でプレーヤーからの操作以外を受け付けなくなるので注意が必要。

【接続B】
設定は特に不要で物理的にLANケーブルを2系統接続するだけ。なお、ダイレクト接続というモードもあるが、これは「ネットワークプレーヤー側で操作が可能な機器をつなぐときの設定」でプレーヤーからの操作以外を受け付けなくなるので注意が必要。

画像: 【接続C】 2014年末の機能追加で、USB DAC接続を実現した。DELA内部の音源をUSB DACに直接送り込むことができ、ひじょうに便利だ。また、DELA経由で外部の操作端末で音源選択や再生操作が可能となり、USB DACをあたかもネットワークプレーヤー的な動作で使える。USB DACをPCレスで活用できる画期的提案だ

【接続C】
2014年末の機能追加で、USB DAC接続を実現した。DELA内部の音源をUSB DACに直接送り込むことができ、ひじょうに便利だ。また、DELA経由で外部の操作端末で音源選択や再生操作が可能となり、USB DACをあたかもネットワークプレーヤー的な動作で使える。USB DACをPCレスで活用できる画期的提案だ

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