ネットワークオーディオ再生の必需品であるLAN接続ストレージ、いわゆるNAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)。リンがDSシリーズを世に問うて以来、オーディオファンはPC向けに作られたNASをオーディオ用に「転用」してきた。
その状況を打破したのが、バッファロー。「オーディオ用」として考えつくされたNASを2014年にDELAシリーズとしてリリースしたのである。ここではDELAユーザーである山本浩司さんにその画期的内容を詳説してもらう。(DigiFi編集部)
[DigiFi 21号レビュー]DELA オーディオ専用NAS N1Aシリーズ
2007年秋にリンからネットワークオーディオプレーヤーのKLIMAX DSが登場した。
NASとの連携でリッピングしたCDコレクションを一元管理できる便利さと傘下のLINN Recordsから配信され始めたハイレゾファイルの音のよさに感激、オーディオの未来はここにあると確信し、ぼくは2008年初夏にKLIMAX DSを自室に導入した。
輸入元スタッフの助けを得てなんとかリスニングルームにネットワーク環境を構築、DSで音楽を楽しみ始めた。
しかし難敵はNAS。言われるがまま大手メーカーのバッファロー製汎用NASを購入して音楽ファイルを収めていったわけだが、これがまったく思い通りに動いてくれなかったのだ。
音楽ファイルを新規に収めるとスキャンに膨大な時間がかかる、操作用タブレットから収録した楽曲がいつまで経っても見えない、動作音やチカチカ光るLEDが気になる......等々。これまで慣れ親しんできたオーディオの流儀と相反するNASの振る舞いにため息をつく日々だった。
それでもなんとかDSを投げ出さなかったのは、輸入元の的確かつ親切なサポートがあったから。しかし、NASがこんな困ったヤツだとネットワークオーディオが保守的なオーディオマニアに受け入れられるのは相当難しいだろうナと感じていた。
横置きの「オーディオ専用NAS」が登場
そんなユーザーの声がNAS開発メーカーたるバッファローにもずいぶん寄せられたのだろう。同社は「オーディオショップで売ってもらえること」を念頭に新規NASの開発に着手、2013年春にLS421Dを発売した。オーディオ用に必要な動作設定やバックアップ用のミラーリング設定をあらかじめ済ませて販売された最初のNASである。
容量2Tバイト×2のHDDは静音性の高いものを選び、加えて小型筐体に相応しい大口径の静音ファンが採用されていた。ファイルのコピーが快適な高速CPUが用いられたのも見逃せない。
機能面でも刮目すべき点がいくつかあった。その最大のポイントがDSD配信機能の採用。本機には評価の高かったサーバーソフトTwonky Media(トンキーメディア)の最新版Ver.7がプリインストールされていたが、バッファローは製造元のパケット・ビデオに掛け合って、このVer.7にDSD 配信機能を入れさせ、スフォルツァートなどのDSD再生を謳って登場したネットワークオーディオプレーヤーとの連携を果たしたのである。
そして2014年春、バッファローからこの記事の主役となるDELAシリーズ/N1Aが発売されることになる。
LS421Dの見た目は従来のNASと大きく変わることはなかったが、「オーディオ専用NAS」を謳ったDELAは、同社製NASで初めて横置き専用のオーディオコンポーネント・スタイルで発売された。
洗練された仕様に感動
ちなみにDELAシリーズにはN1Aの他にN1Zという上位機もラインナップされている。実勢価格17万円のN1Aは1TバイトのHDD×2(ミラーリング設定)を内蔵したフルコンポ・サイズの一般的な鋼板折り曲げ筐体。
いっぽうの実勢価格74万円のN1Zは、リンKLIMAX DS 同様のコンパクトサイズの贅沢なアルミ筐体が採用されている。ストレージは500Gバイト×2のSSDだ。
DELA開発に当たって設計陣が掲げたテーマがもうひとつある。それが「オーディオ用NASとして10年間使えること」。
さまざまな信号処理をこなさなければならない汎用NASは、HDDの容量をいくら多くしても、ウラでオーディオ用途とは関係ない動作が要求されるため、扱える音源はせいぜい5000曲程度となるようだ。
いっぽうDELAは、オーディオ用に特化していることに合せてメモリーに通常のNASの4倍程度の容量を持たせることで、10万曲以上の音楽ファイルを快適に扱うことができるように設計されている。
信号処理基板はN1A、N1Zともに共通。独自の2LANポート設計でプレーヤー直結が可能になり、プレーヤーをルーターやハブにわざわざつなぐ必要がなくなった。
また、動作状況や設定が一目でわかる有機ELディスプレイがフロントパネルに付けられたのも、従来のNASにはなかった画期的な出来事。このディスプレイを見ながら右横のボタンを押すことで、PCレスですべての動作設定ができるのである。
使用しないときは他のオーディオ機器同様、ワンボタンで電源オフが可能になったこともそれまでのNASの常識ではあり得なかった点。この洗練された仕様に感動したぼくは、一も二もなく本機を購入した。
「ミュージック・ライブラリー」という呼び名がしっくり
また本機にはUSB3.0ポートが3つ設けられおり、HDDの拡張やデータバックなどに活用できるが、もうひとつ、このUSB3.0ポートの採用には重大な意義が秘められていた。それがUSB DAC接続機能である。この機能は2014年12月のファームウェアのアップデートによって実現された。
ユーザー手持ちのUSB DACをN1A / N1ZのUSBポートにつないで、スマホやタブレットにインストールした汎用の操作アプリ(リンのキンスキーアプリなど)を使えば、もうそれだけでさまざまな音楽ファイルが再生可能となる(LAN環境は必要)。
つまりDELAがPCの代りにファイルトランスポートとなり、USB DACとの連携でデジタルメディアレンダラーとして機能するようになったわけである。バッファローによると、現在30ブランド以上のUSB DACとの動作確認が取れているという。
こうなると、N1A / N1ZをNAS (=Network Attached Storage)と呼ぶのはもうふさわしくないだろう。この機能が追加されてから、バッファローは本製品群を「DELAミュージック・ライブラリー」と呼び始めているが、確かにこの呼称のほうがよほどしっくりくる感じがする。
「DELA N1」シリーズ製品紹介
N1A(HA-N1AH20) 受注生産
¥172,800(直販税込価格、送料込)
HDD 1Tバイト×2
N1A(HA-N1AH40BK) 受注生産
¥216,000(直販税込価格、送料込)
HDD 2Tバイト×2
N1Z(HA-N1ZS10) 受注生産
¥734,400(直販税込価格、送料込)
SSD 512Gバイト×2
Digital Music Server
DELA N1A
●型式:DLNA対応ネットワークサーバー
●接続端子:LAN端子2系統、USB3.0端子3系統、USB2.0端子1系統
●対応ファイル形式(※はLAN接続時のみ対応):DSF、DFF、FLAC,WAV、ALAC、AIFF、AAC、MP3、WMA、OGG、LPCM
●対応サンプリングレート/量子化ビット数:~384kHz/32ビット(PCM)、~11.2MHz/1ビット(DSD、LAN接続時)、~5.6MHz/1ビット(DSD、USB接続時)
●寸法/質量:W436×H70×D352mm/7kg